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Chapter:34 「観光じゃないことは確実でしょうよ」

 翌朝、博希も五月も出流も、やや時差ボケに近い感覚で、遅めに目を覚ました。

 例の【お迎え】もしている場合ではなく、それぞれがそれぞれに学校まで走る。

 そこで出流は、コスポルーダで出せていたような【力】が、消えていることに気がついた。とん、と、地面を蹴ってみても、前のように跳べない。

「これが……消えたせいですかねえ」

 朝になっても結局、エンブレムは復活しなかった。じゃあ、どうしたら、スイフルセントが出てきたとき、戦うことができるのだろう。

「厄介な」

 三人は学校で合流した。目で『おはよう』と言い合って、教室に急ぐ。

 当然、沙織は失踪したままだった。警察が動いたどうかもわからない状態ではあったが、やはり沙織がいなくなったのも、自分たちが異世界に行ったのも、幻なんかではなかった、と、博希はポケットに入れたままの沙織の生徒手帳を触って思った。



 昼休み、もう、すっかり夏空が広がりつつある屋上で、いつものように三人は昼食をとっていた。

「エンブレム、どーだ?」

「復活しませんねぇ。僕は今朝試してみたのですが――」

 そう前置きして、コスポルーダで出せていた【力】が消えた、と、出流は言った。

「エンブレムが出ているときに限って、高速で走れたり、塀の上に飛び乗れたりしてたんですよね」

「ああ、じゃあ、あれって勇士の力ってことかあ……」

「それがいまは使えないんだね。不便だね」

 五月がタコさんウインナーにフォークを刺して言った。

 博希は生姜の漬物をぼおりぼおりと噛む。

「テレビも見たけど、今のとこ何か起こってる感じはないんだよなあ」

「スイフルセントはこの世界になにしに来るんだろうね」

「観光じゃないことは確実でしょうよ」

 レドルアビデはコスポルーダを征服した。

 ということは、次はアイルッシュだとでも思っているのだろうか。

「アイルッシュを征服するつもりなら、相当長期戦になると思いますが」

 だが、向こうには【魔法】がある。

 それでこの世界を征服する――――コスポルーダにとどまらず、ここを狙う、その理由は? それはまだ誰にもわからないことだった。

 弁当の中身が空っぽになった。三人は出流の時計で、昼休みがあと五十分ほどあることを確認すると、誰言うともなしに、空を見ながら寝転んだ。

「あー、眠てぇ」

「午後の授業、さぼっちゃう?」

「ご冗談を。アド先生にぶたれますよ」

 太陽の光が気持ちいい。自分も少し眠たくなったが、チャイムの音さえあれば目も覚めるだろう、と、出流は思った。そして、ひょいと二人を見たら――すでに二人は夢の中だった。

 出流はくすっ、と笑って、自分もごろん、と横になった。

「おやすみなさい」

 真っ白な雲が、時折青空にアクセントを与えていた。

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