表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/197

Chapter:31 「アイルッシュに帰れっ!!」

 出流の矢は正確に執政官をとらえた。

「ああっ」

 執政官の着ている服を複数の矢で壁に縫い付けて、彼女を動けなくしてしまうと、出流はようやく通信機に手を触れた。

「博希サン! 五月サン! どこにいますか!」

『出流! 無事かっ』

「無事です! 執政官の動きは封じました。今、屋敷を二分している渡り廊下のところにいます!」

 通信機の向こうからは、どたどたという足音と、用心棒のものらしい怒号が聞こえる。

『すぐ行く!』

 出流のもとにも、右から左から用心棒が現れる。彼は矢を大量に放ち、応戦した。

「変態百出!」

 バタバタと折り重なるように用心棒たちが倒れていく。その向こうから、博希たちが走ってくるのが見えた。

「博希サン、五月サン!」

「出流っ!」

 用心棒たちを踏みそうになりながら、博希がどたどたとやってくる。その後ろには五月がいたが、鎧装着はしていなかった。

「五月サン……?」

 怯えるように博希の後ろにつくその様子に、出流はいぶかしげな顔をした。なぜ、と彼は一瞬思ったが、その思考を遮るように、「執政官はっ」と博希が聞いたので、「このかたです」と指し示す。

「美少年は屋敷のあっちに放し飼いにしてんのか?」

「……そうだと言ったら、どうするのかしら?」

「全員逃がすだけですよ。――ところで、」

 出流は弓を引きながら聞いた。

「美少年以外の男のかたはどうしたのです」

 執政官は身動きのとれない状態で、それでも強がった。

「ほほほ……あなた方には絶対に救えないところにいてよ」

 カッチ――――ン。

 博希がじかに言ったのか、出流の耳だけに幻聴の如く聞こえたのか、それは定かではないけれど、そんな音が響いたような感じがした。

 数十分後、執政官と用心棒、数えたところ百人あまりは、すべて顔や身体に落書きされて、屋敷の中に転がることとなった。

 千人にのぼる美少年たちも助け出されて、村には一応の平和が戻った。



 村をあとにしながら、博希は少し、歯噛みしていた。

「俺たちには救えねえところって、どこだろうな」

 美少年は村に戻ったが、それ以外の男性たちが村に戻ることはなかった。村人から一応の感謝はされたものの、博希たちのモヤモヤは晴れなかった。

「あの言い方からして、総統スイフルセントが一枚かんでいるのは間違いないでしょうけれど」

「まっすぐ、スイフルセントの城に殴りこんでみるか?」

 博希のその問いに、五月は答えず、二人から目をそらした。

「五月サン……?」

 出流は五月を見る。身体が少し、震えていた。

 総統と対峙したくないのだ、と彼が察するのに、時間はそうかからなかった。そして彼は、五月が戦いに際して消極的な理由を冷静に理解した。

「……いえ……ひとまず、村へ行きましょう。同じような村はまだあるはずですしね」

 今度は、五月もうなずいた。

 こそっ。

 五月はポケットの中に手を入れる。小ビンが入っている。彼はポケットの中の小ビンをきゅっと握りしめると、博希と出流の後を追って歩き出した。

 その時だった。

『聞こえるか、博希!? 五月!? 出流!? 私だ、スカフィードだっ』

 通信機から、スカフィードの声が聞こえてきた。

「おう、どうしたんだスカフィード?」

『悠長なことを言っている場合ではない!』

「どうしたんですか?」

 通信機の向こうのスカフィードは、相当に焦っているふうをみせていた。

『今すぐ、アイルッシュに帰れっ!!』

「なっ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ