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Chapter:30 「め・ん・ど・くせぇぇええぇえ――――!!」

 博希と五月は執政官の屋敷前まで来ていた。

「とりあえず、もう一度塀に上ろうぜ。今の時間だったらそう見つかることもないだろ」

 五月は小さくうなずいた。地面を蹴って、二人は屋敷をうかがう。

「イーくん、どこにいるんだろう。もしかしてもう放し飼いにされちゃってるのかしら」

「それならなんか通信が入ってもいいだろう? それがないってことは……」

「マズい?」

「だいぶマズいと俺は思う」

 博希が顔をしかめて言った。先日の五月のときのように、拘束されている可能性が高い。

「いい具合にまだ夜明け前だ。このまま忍び込もう!」

「ええっ!? だって中もよくわからないのに?」

「ここでこうしてたって仕方ねぇっ!」

 博希は屋敷内へ飛び込んだ。

「ちょ――――ッ、ヒロくんッ」

 一人残されてもどうしようもない。五月もしぶしぶ、塀から飛び降りるのだった。

 そんなときに、通信機から声が聞こえた。聞いたことのない女性の声で、出流がここにいるという言葉――――

「おいもうバレてるぞ!!」

「なんでなんで!? イーくん鎧装着したのかな!?」

 いや、たぶんしてない、博希はそう言った。通信機が他人に――この場合は執政官に――使われているということは、博希の予想は最悪な形で当たったということである。

「ここって言ってたけどどこなんだよ!」

「広すぎるよねえこのお屋敷」

「くっそ、一部屋一部屋捜すわけにもいかねぇし!」

「庭で騒いでいるのは誰だっ!!」

 大声が響き渡る。丸聞こえだったらしい。夜明け前だっつーのにもう起きてんのか早えェな、と博希は舌打ちした。またごまかすか? しかし彼の動きは考えるより早かった。

「ああもうめ・ん・ど・くせぇぇええぇえ――――!! 行くぞ五月ッ!! レジェンドプロテクター・チェンジ!! それとスタンバイ・マイウェポン!」

「ええええええっ!? ヒロくんっ!?」

「おら、邪魔すんな――――!! 出流はどこだ――――ッ!!」

 博希は武器をぶんぶん振るい、飛びかかってくる用心棒をなぎ倒しながら進む。

「五月、お前も鎧装着しろっ」

 うん、と五月はうなずいたが、「ヨロイヨ、……」と言いかけて、あとは声にならなかった。

「……どうした?」

 五月はうつむいて、「ごめんなさい」としか言えない。このままでは足手まといになる、そのことはわかっているのだが、どうしても、口も身体も動かなかった。

 博希は襲ってくる用心棒を一人、また一人と昏倒させながら、いまの五月は俺が守るしかねぇか、という気持ちになっていた。五月が鎧装着できない理由は知らないが、なんとかなるだろう――いや、なんとかするしかない。

「わかった。五月、俺から離れるなよ」

 難儀はするだろうが、やむをえまい。すこしスピードは遅くなりつつも、博希は用心棒に向かっていくのだった。



 博希の大騒ぎぶりは出流のもとにもすぐ届いた。

「お仲間はずいぶんにぎやかな方ね」

 執政官がくすくす笑いながら言う。そちらこそずいぶんと余裕がおありですね、と出流は思ったが、流れる冷や汗を彼は見逃さなかった。博希の行動までは予想がつかないものらしい、総統スイフルセントとやらからどれだけの情報をもらっているかは知らないが――そう考えると、出流に少し余裕が生まれた。

 出流は唇の端を少し上げる。

「何がおかしいの?」

「おかしいですねえ。あなたが敗北する未来しか、いまの僕には見えませんから」

 ぎっ――歯ぎしりする音が、出流にははっきり聞こえた。彼は握りこぶしに力を込める。今なら。今なら、この鎖は破れる。

「お黙りなさい! 今のあなたに何ができるというの?」

「できますとも。一応、【伝説】の名を冠した者ですからね! ――ふっ!」

 出流は気合いとともに、自らを縛り付けていた鎖を破った。ジャリジャリと音がして、細かく砕けた鎖が落ちる。

「ば……馬鹿な!」

「勇猛邁進――鎧冑変化!」

 素早く鎧装着した出流に、控えていた用心棒が襲いかかった。

「あなたが僕を【勇士】と呼んだのでしょうに。いまさら何を驚きますか」

 用心棒の動きをひらりとかわすと、出流は弓矢を出す。まずは用心棒を狙って矢を放った。

「ぐあっ」

「くっ……皆のもの! であえ、であえっ!」

 執政官が逃げながら叫んだ。出流はその後を追って、矢を放つ。

「逃がしません!」

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