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Chapter:27 「祟りがあるぞおおおおおおお!!」

 村の北側、五月は村から少しだけ外れたところにあった岩によいしょと座ると、足を伸ばした。

 空が大きい。

「……………………」

 彼は空を見上げて、少しだけ、ため息をついた。

「持ってきちゃった」

 ポケットの中に、昨日、宿の従業員からもらったものが入っていた。

 それは、小ビン。

 五月は空に透かして小ビンを見た。空の澄んだ青さに、小ビンの深いブルーが、重なり合って溶けた。

 そろそろ聞き込みに行ったほうがいいかもしれない。五月はそう思って、岩から降りようとした。

 その時。

「祟りがあるぞおおおおおおお!!」

「きゃ――――!?」

 向こうから、信じられない猛スピードで、老婆が走って来た。

「なななななななな何!?」

「その岩に登ったなあああ!?」

「…………はいっ」

 怖い。

「その岩に登った者は神隠しに遭うという話を、お主は知らぬのかああ」

「知りませんっ。あの、それって、女の人でも神隠しに遭うの?」

「いやあ、女は遭わぬよ。お主は女か?」

「えっ? ……お、女です」

「そうか。……ならば神隠しには遭わぬわ。しかし……お主の友人に、仮に男がいたとしたら、神隠しに遭うのはそ奴かもしれぬぞ……」

「!」

 老婆はそれだけ言うと、まるで煙に巻かれたかのように、かき消えた。

 五月はふ――っと、息をついた。

 その瞬間、腕から声がした。

『五月サン?』

「わひゃああ」

『……どうしたんです? そろそろお昼ですよ、元の場所に集まりましょう』

「うん、そうだね」

 五月が元の場所に行った時、すでに博希と出流はその場で待っていた。

「どこかでお昼ご飯でも食べましょう」

 近くにあった食堂に入る。出流がブレスの翻訳機能を使って、メニュー表を読み解いた。

 五月はサラダのようなもの、博希はピザとスパゲッティのようなもの、出流はピザのようなものを平らげて、聞き込みの情報は宿で合わせることにした。ここではせっかく集めた情報が筒抜けで、誰が聞いているとも限らない。

「博希サンから集めた情報をどうぞ」

 博希・五月・出流の順に、さっき集めた情報を発表する。全員が話し終わった後、出流が紙にそれぞれの情報をまとめながら言った。

「五月サンの情報が一番凄いですねえ」

「そのばあちゃんはどう考えても怪しいぞ」

「ヒロくんもそう思う?」

「五月サンの会った老婆が、誰がその岩に登っていたかをチェックする……そして、その人物、もしくは人物に関係ある男を、神隠しと称してさらう……方程式にはなりませんけど、答えは出ますよ」

 ぱしん、と音を立てて、紙を鉛筆で叩く出流。

「それにしても」

 出流が腕を組んだ。

「村の人たちは、それが執政官の仕業だと――噂でも解っているのに――」

 どうして。噂ほど、ある意味正確で、人々にある種の信憑性を持ってひろまるものはない。どうして。

「だよなあ。それで、いつか【伝説の勇士】が来るって思ってるんだろ」

「それまで男たちが連れて行かれるのを、黙っていた――」

「この村の人は、一体今まで何やってたんだろうねえ。男の人がまとめて神隠しにあったわけでもないでしょ?」

「…………」

 無邪気なようで核心をズバッと突いた五月の言葉に、出流は一瞬、絶句した。

「そう、ですねえ……」

「それより、五月はそのばあちゃんに、『自分は女だ』って言ったんだろ? じゃあ、神隠しに遭うのは俺たちだよな」

「あ……」

 出流はハッとした。そうだ。幸福にも五月が女だと勘違いされている以上、五月がさらわれるということはあり得ない。だとするなら、さらわれるのは出流か博希ということになる。

「どうする。オトリか? また」

「オトリどころか、向こうからさらいにくるんでしょうしねえ」

 出流は苦笑した。

「ただ、いずれにしても、執政官様のお屋敷は一度見ておいたほうがいいでしょうね」

 執政官が悪だろうとなんだろうと、丁寧に様づけする。出流の強烈な皮肉であった。

「そうだな。中まで解ってりゃ動きやすいけど、そこまではさすがにな……せめて外観だけでもはっきり見ておくほうがいいよな」

 出流が腕を組み直して、うん、とうなずいて言った。

「夜になったら、執政官様のお屋敷を見物に行きましょう」

 五月が眠たそうな目をして、出流の肩をとんとんと叩いた。

「じゃ、ぼく、寝てていい? 夜に備えておきたいの」

「ああ、そうしたほうがいいな」

「おやすみー」

 五月は布団に入って、すぐにすうすうと眠り始めた。

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