お礼は求めるものじゃない
「さあ、諦めて私についてきなさい」
名まえの知らない人がそんなことを言ってくる。俺は、早くクエストなるものを受けてお金を稼ぎたいというのに......
「嫌だ。なぜ俺が名前の知らない人についていかないといけないんだ」
「名前の知らない人って何よ。名前は、さっき教えたでしょう?......じゃあ、もう一度言えば付いてきてくれるの?」
「いや、そんなことはないぞ」
面倒くさい。
「どうしてついてきてくれないのよ。お礼をしようという気持ちはあなたにないの?」
「俺は早くクエスト?に行きたいの。それに、お礼は求めるものじゃないと思うんだ」
昔、お母さんに言われたことがある。
「お礼はね、求められなかったら返さなくていいの。とりあえず『ありがとう』と言えばそれで終わり。けど、もし求められたらこう言いなさい。『お礼は求めるものじゃない』ってね」
子どものころは、へ~としか思っていなかったが、なるほど。お礼というものは面倒くさいらしい。ありがとう、お母さん。あなたの教えはしっかりと生きています。
「本来そうかもしれないわね。けどね、私はお礼をして欲しいの。クエストについてきて欲しいの」
お母さん。あなたの教えは、どうやらこの人には役立たないようです......
「って、そうよ。あなたクエストに行きたいのよね。なら一石二鳥じゃない!始めてだったら危ないし......もちろん報酬は半分払うわ。どう?」
確かにいい案かもしれない。クエストを一人で受けるのは危ないかもしれない......周りにいる人が武器を持っていることから何かと戦うようだし......
「わかったよ」
このままだと、本当にずっと逃げられないような気がするし......
「本当っ?ありがとう。実は私、クエストを受けたのはいいんだけど......魔物と戦うなんて初めてだから不安だったのよ」
「え?」
「「「おい」」」
後ろの人たちが思わず声を上げる。そして、ぼそぼそと聞こえる会話。
「おい、あいつ初心者だったのかよ......」
「あぁ、驚きだぜ。あんなに自信満々だったからてっきり......」
「まったくだ」
俺もそう思ってたよ。初心者二人で何ができるんだよ!
......ところで魔物って何だろう。まあ、戦う相手のことなんてどうでもいいんだけどね
しかし、すごくだまされた気分だ。やっぱり一人で行こうかな......小さいし、こいつ。
「あっ、今小さいと思ったでしょ」
「どうしてそう思った?」
心を読まれた!?いや、そんなことは......
「女の勘よ」
女の勘スゲー。感激だよ。
「ごめんって」
「別にいいわよ。慣れているし。それよりもあなたも小さいじゃない」
「はぁ?失礼な......」
自分の姿を確認し、周りにいる人と見比べる......
「本当だ」
意識をしたことはなかったが、どうやら俺はチビだったらしい。きっと、食べるものがなくて成長しなかったんだな......
「そうでしょう。だから、もう私のことは小さいとか思わないでね」
「分かったよ」
「さて、それじゃあ行くよ。えっと......」
「ん?」
急に黙ってどうしたのだろうか?俺を逃がしてくれるのか?
「あなた名前は?」
「名前?」
そんなものあったかな?お母さんがいなくなってからは、クソガキとしか呼ばれてないからな......
「ん~、ガキかな?」
「どうして、自信がないのよ?」
「いや、覚えてないから」
「まあ、いいわ。ガキ、行きましょうか」
なぜだか知らんが、こいつに仕切られるのは腹が立ったが仕方がない。道を知らないしな。
そして、クエストに向かう途中に
「あなたは、何が得意なの?あっ、私は近接戦闘が得意かな」
ミオに剣を鞘から少し出しながら聞かれる。質問の意味はよく分からないがとりあえず答える。
「俺は、盗みが得意かな」
少し前までは、食べ物を手に入れるためにいろんなところから盗んだからな。
そして、ミオはどこかで戦ったことがあるのかもしれない。近接戦闘が得意と言っているし。
「質問が悪かったかもしれないね」
「そうだな」
「......武器は何を持っているの?」
「持ってない」
「え?待って。もしかして、魔物と戦ったことないの?」
「無いね」
そもそも魔物を見たことがないよ。
「嘘、そんな人いるの?」
「いるね」
ここにいるね。
「ま、まあいいわ。適当に戦ってちょうだい」
「分かった。適当にだな」
そうして俺たちは魔物がいる場所に少しずつ近づいていくのだった。
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