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「お初にお目にかかります!自分はドラゴニア王国騎士団第一部隊の副団長、マーナガルムです!ハティと呼ばれています!18歳です!」


 こげ茶の髪に茶色の目をしたハティは、ビシッと敬礼をした。

 首元までのボタンをきっちりと締め、折り目のついた服をピシ!と着こなしている。

 軍服なんだろうか?

 深緑のベストには鱗の柄が入っていた。

 ドラゴニアだからドラゴンをイメージしてる感じ?


神竜(シロ)の子様の伝説は存じております!お側にいれて大変光栄です!自分が命に代えても守ってみせます!」


 1つにまとめた髪がなんだか尻尾みたいに見えた。

 きりりとした眉やはっきりとした目鼻立ちは麗しい。

 けれどその目がキラキラとしているせいか、男らしいというだけじゃなくて、ちょっと可愛くも思う。

 今まで出会ったことのないタイプだ。

 命をかけて守るようなことがあるという前提なのが怖いけど……


「あーー……ハティさん」

「ハティとお呼びください!」

「じゃあ私もヨナカと呼んでください。あと敬語もいらないです、私の方が年下なので……」

「かしこまりました!ヨナカ様!」


 全然わかってねぇなこいつ。

 まぁいいや、と思っていると何処からか強烈に視線を感じた。

 辺りを見回すと……いた。

 日当たりのいいところで居眠りをしていた男がこちらを見ている。

 目力が怖いよ〜〜〜〜日本に戻りたい〜〜〜〜!


「あの……彼は?」

「シン様です。ドラゴニア王国南に位置する山岳地帯に住む少数民族トスガ族の次期族長です」


 なるほど、通りで雰囲気が違うと思った。

 褐色肌に無造作なダークレッドの髪。

 耳についた大きめのピアスや服装。

 騎士だというハティや、国王らしいスーくんとは違ってワイルドな雰囲気を醸してる。


(あと、顔がいい)


 ザ!イケメン!

 鼻は高く、口は大きい。

 外人さんのモデルって感じ。

 座っているから正確な身長はわからないけど、明らかに足が長い。

 もはや私の腰くらいまで足じゃない?

 多分あの人、ハリウッド映画に出てる。

 ヒーロー物の映画でスーパーヒーローやってる。

 なんなら私、見たからね!


 と、私が記憶を捏造しているとイケメンが立ち上がった。

 気だるげに私の元まで近づいてくる。

 身長高!

 2メートルくらいあるんじゃないの!?


「…………」

「え、っと」


 無言。

 無表情。

 ノーリアクション。


 顔がいいものだから怖い。

 空のように澄んだ水色の瞳で、シン様とやらはじーーーっと私の顔を見つめる。

 こうやって顔を見られるの、苦手なんだよね。

 私は思わず視線を逸らした。


「……俺に構わないでくれ」


 ポツリとシン様はひくーーーい声でそれだけ告げると、また日当たりのいい椅子に戻っていく。

 そしてそれ以降、二度と私の方を向くことはなかった。

 な、なんなの?

 嫌われた?いいけど!!


「ヨナカちゃんは気にしないでいいんだよ♡」


 頭に疑問符を浮かべていると、真横からそう声をかけられる。

 あまつさえ耳元に息を吹きかけられたので、私はビクッとして後ずさりした。


「ふふ、ビックリさせちゃった?ごめんね♡」


 私のすぐ近くにいた男の人が、艶っぽく微笑む。

 ていうか距離近。

 パーソナルスペースバグってんの?

 ソファに座り、我が物顔でリラックスしてた人だ。


「ええーーーっと……」

「ジョエル・クロード。ジョエルって呼んでね、ヨナカちゃん♡」


 ジョエルさんはそういうと、笑顔と共にウィンクを繰り出す。

 流れるようにウィンク〜〜〜!

 絶対に遊び人だよ、この人〜〜〜!

 あと顔が抜群に綺麗〜〜〜〜!

 そりゃあこんなお顔を持っていたら遊ぶわ!


 灰色の髪に垂れ目がちな桃色の瞳。

 男性だし、綺麗な顔なんだけど何処か艶っぽい。

 もしも彼が女性なら、間違いなく魔性の女だろう。

 決して女性的な容姿ではないはずなのに、異様な色気に満ちている。


「ヨナカちゃん」


 ジョエルさんがそっと、私の手を握る。

 私は驚きのあまり固まった。


「会えることを楽しみにしてたんだ、俺」

「そ、そうなんですか」

「美しい黒髪だね♡」

「ありがとうございます」

「黒髪だとは思わなかったけど」

「ヨナカ様の黒髪は染めてるだけで、実際は金髪ですよ」


 何で知ってんの!?

 横から口を挟んできたリュカの顔を、私は思わずまじまじと眺めてしまった。

 にっこり。

 リュカが微笑む、あの怪しげな笑顔。

 誤魔化されているような気がしたが、怖いから深く尋ねないでおこう……


「金髪なんだ!さすが神竜(シロ)の子だね♡」

「いや、あの……」

「ねぇ、ヨナカちゃん……」


 手を引かれ、私はジョエルさんに抱きしめられる形になった。

 身体がますます強張る。


「俺を選んで?一緒に良いことしよ♡」


 甘い声。

 混ざった吐息。

 耳元で囁かれるそれに、私は寒気を覚えた。


「やだ!!」


 思いっきりジョエルさんを突き飛ばす。

 こっわ!

 というか……!


「顔がいいからって何してもいいって思わないでください!」


 セクハラだからな!!

 顔がいいから許されると思うなよ!

 思いっきり突き飛ばしたはずなのに平然としたままのジョエルさんは、笑顔のままだった。

 余裕綽々って顔。


「恥ずかしがり屋さんなんだ、いいねぇ」

「照れてるわけじゃないから!」


 見ると、ハティの顔色が変わっている。

 白い手袋をつけた手が、彼の腰に下げた細い剣にかかっていたので私は苦笑いを浮かべた。


「そういうこと、やめてください」

「もっと仲良くなってからのお楽しみだね♡」

「ぶん殴るぞ……」

「大歓迎♡」


 顔のいい変態だ……

 ちゅ、と私の手にキスをして、ジョエルさんは視線をハティに向けた。

 剣を抜こうとしていたハティは眉を寄せる。

 なんだか2人の間に火花が散っているように見えた。

 けれど今がチャンス。

 その隙をついて、私はさりげなくジョエルさんから離れた。


「怖い」

「まぁ貴女を口説くために集められてますからね。正しい行動です」


 リュカがさらりといった。

 正しい行動?

 確かに「口説くため」や「私を好きにさせるため」ならばアピールすることは正しいのかもしれない。

 てことは……


「あの人もアピールのためにやってんの?」


 私が指差した先にいるのは、テーブルに足を置いてタバコのようなものを吸っている男性。

 黒のドレッドヘアに青色の瞳。

 ピアスや指輪をじゃらじゃらと付け、煙を天井に向かって吐き出している。


「求愛行動ですね!」

「適当に言ってるよね?絶対に適当に言ってるよね?」

「生まれてこの方、適当なことを言ったことはありません」

「もう絶対に適当じゃん」


 笑顔のままでいうから怖いんだよ。

 リュカに呆れていると、ドン!と大きな音がした。

 びっくりしつつ振り返ると、ドレッドヘアの男がこちらを睨んでいる。


 こっわ。

 ガチで怖いんだけど。

 眉毛が細く短く、白目が多い。

 いわゆる三白眼ってやつな上、なんていうか……爬虫類っぽい顔をしているせいか。

 今までの人とは違う怖さを感じる。


「挨拶しろよ、神竜(シロ)の子様」


 様付けされている割には命令口調。

 さっきのドン!という音は、テーブルの上に置いてある足を入れ替えた時にわざと立てた音らしい。

 じろりと睨まれ、私は引きつったまま名前を告げる。


「俺様はデレク。20歳。金はある。呼びたきゃデレクって呼べ」

「デレクさん……」

「デレクだっていってんだろうが!」


 あれれーー?いってましたー?

 何が彼の琴線にふれたのかわからないが、思いっきりテーブルの足を蹴り飛ばされたので私はただちに「デレク」と告げた。

 ああああ10年以上イジメられていたことを思い出す〜〜〜!


「テメーも吸うか?」

「いや、大丈夫です」


 タバコのようなもの……

 多分いわゆる水タバコってものだろう、それを示されたが丁重にお断りした。

 未成年ですし、私。

 とにかくこの人は格好いいけれど、大きくて怖い人だってことはよくわかった。


「以上の5名がヨナカ様の婿候補です!皆様のお部屋はお隣や前にございますので、これからたくさん仲良くしてくださいね!」


 気まずい空気を打ち消すかのように、リュカが明るい声をあげた。

 スーくんが元気よく「はーーい!」と挙手する。

 それに続くようにハティが「はい」と声をあげ、敬礼をした。

 シン様は素早く立ち上がり、無言のまま部屋から出て行く。

 ジョエルさんも続いたが、出て行く前に私の肩を叩いて「よろしくね♡」と囁いていった。

 デレクが吐き出す煙が部屋を満たすーーー……



 うん、なるほど!

 早急に帰るか世界を滅ぼしたい!



 その夜、1人になった部屋で私はこっそりと泣いたのだった。


男性陣全員登場です!

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