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1-04

 とりあえず制服姿のまま国王の前に連れていかれ。

 なんかオドオドしている国王に「よく来た」だか何だかいわれ。

 神竜の子が来てくれたのは嬉しいだかなんだかいわれ。

 女王様はなんだか感激で泣いちゃって。

 その隣に座っていた賢そうなお姫様にも感謝の言葉を述べられ。

 あ、これ、どんどん逃げられなくなってない?なんて思っていると!


 国を挙げて歓迎したいが、とりあえず諸々の準備をするのでっていわれ。

 狭いところで申し訳ないが部屋を用意している、と連れて行かれたところがここ。

 この部屋。


 絶対にこれ、家じゃん。

 家賃で換算すると100万円くらいでしょ?

 としかいえないくらい、豪華絢爛な部屋だった。

 これが、私の部屋……

 別世界だし、狭いという観念が違うのかもしれない。

 だってベッドには天蓋までついてるんだよ!?

 なんかテーブルにはアフターヌーンティーセットが置いてあるし!


 そんな私に用意されていたものは、天蓋付きベッドやケーキや紅茶だけではなかった。

 もちろん、なんだか巨大なクローゼットとかでもない。

 5人の青少年がそこにいたのだ。


 絨毯の上に寝転がっている、少年みたいな人。

 ピシッとした姿勢で起立している真面目そうな人。

 日当たりの良いところに椅子を置いて居眠りしている色黒の人。

 余裕綽々に紅茶を飲みつつ、我が物顔でソファに座っている長髪の人。

 ローテーブルに足をあげ、タバコのようなものを吸っているドレッドヘアの人。


「こちらの方々が、貴女を口説くために集められた殿方です」


 リュカが依然としてニコニコとしたまま告げる。

 ほんとこいつバカじゃないの……

 いう?普通。

 口説くためとかさ!いう?

 そういうこというから私、完全に彼らに心を閉ざしかけてますけど!?

 なんでこうやっていらないことばっかりいうんだ、この人……絶対に何か企んでるじゃん!こわ!


「どの方々も見目麗しいでしょう?国中から厳選された殿方ですよ」

「……まぁ、綺麗な方達ですね」


 ざっと見たところ、全員年齢もそこまで離れてなさそうだった。

 なんか随分と年下の子がいるような気がするけど。

 それはとりあえずよかった。

 もしもおじさんが部屋にいたらどうしようかと。

 モラルに反するからね!


 それにしても、だ。

 リュカは胡散臭いが、こと彼らに関してはリュカの意見は正しい。

 だって確かに彼らは見目麗しいから。

 というかキラキラしてる。しすぎてる!

 顔面が整いすぎてるじゃん……

 もはやその美しさから発せられてるキラキラした輝きを集めて、電気会社に売れよ……!


 ていうかいう機会がなくていってないけど。

 私ーーー……


(顔面が良い人、苦手なんだよなーーーー)


 私をいじめてたあの子が可愛かったのもある。

 あの子は芸能人みたいに可愛くて、キラキラしてた。

 歩いていたら誰もが振り返るだろうってくらい。


 あの子だけじゃない。

 有名私立だったから芸能人の子どももいたし、芸能人もたくさんいた。

 みんな綺麗で、格好良くて、爽やかでキラキラしてて……

 けれど。


(誰も私を助けてはくれなかったんだよね)


 見た目がちょっと変わってるってことでイジメられた、見た目がちょっと素敵な人達に。

 誰も助けてなんてくれなかった。

 いじめっ子だとしたって、可愛いっていうのは正義。

 みんなチヤホヤして、案に私へのイジメを肯定していた……本当は違うのかもしれないけどね!

 でも10年以上そういう環境にいた結果、私は見目麗しい人が苦手になっちゃったのだ。


 人は外見で判断する。

 したくないと思っていても、私だってそう。


(こんな……こんな綺麗な人達に口説かれるとか、地獄かよ!)


 逆ハーレム?何それ?

 新しい地獄の名前?血の池地獄的なアレ?

 私がそうやって頭を抱えているとはつゆ知らず、見目麗しい人達が私に視線を向けてくる。

 ひぃ!視線まで綺麗!

 いや視線が綺麗っていうのはおかしいな?

 何いってんだ、私。


「リュカ」


 ててて。

 そんな効果音が聞こえてきそうなくらい軽快に、1人が私とリュカの前にやって来る。

 絨毯の上で寝転がっていた少年だ。

 読んでいたらしい本を抱え、にこにこと笑っている。


 ああ!

 この半日くらい、リュカの怪しげな笑顔を見ていたものだから少年の笑顔が眩しい!

 でもこの子もここにいるってことは、私を口説くためっていうか婿候補ってことなんじゃない?


 私はまじまじと少年を眺める。

 小学生……いや、中学生くらい?

 え?犯罪なのでは……?

 わけのわかんない神竜の子とかにされた上、こんな逆ハーレム(になるかも)地獄に放り込まれ、犯罪者にまでなりたくない!


「この子がシロの子ちゃん?」

「さようです。藤原 二十四時(ヨナカ)様です」

「ヨナカちゃん!」


 私の嘆きなんて気に留めず、少年は私に手を差し出す。


「初めまして!僕はフォース!スーくんって呼んでいいよ!よろしくね、ヨナカちゃん!」


 にこーーー!

 そういって、フォースくん……スーくん?が笑う。

 目がくらまんばかりの笑顔だった。

 いや、なんなら目がくらんだ!

 え?見えてる?私の目、正常?

 だって……こんな……一見すると美少女のような、くりくりまなこの少年が目の前にいるなんて……おかしくない……?


 柔らかそうなグリーンの髪に、水色の瞳。

 真っ白い肌に広めの二重。

 くるみ型の瞳に小さな鼻と口……

 身長は160センチちょっとくらい?

 日本人平均身長の私より小さく感じるが、顔が小さいからそう感じるのかもしれない。

 男の子?ウソでしょ?女の子では?


「ねぇ!ヨナカちゃん!よろしくしよ!」


 呆然とスーくんの見目の麗しさに気を取られていると、美少年が至近距離まで迫ってきた。

 うわ!可愛いっ!

 差し伸べられていた手を私が握らなかったことに拗ねているらしく、頰をぷくっと膨らましている。

 なに?可愛さでぶん殴ろうとしてる?


「よ、よろしくお願いします……」


 とりあえずこのままその可愛い顔を向けられていると死んでしまいそうなので、私は彼の手を握った。

 意外に手は男らしく骨っぽい。


「フォース様はドラゴニア王国の北に位置する、ドラルク王国の国王陛下です」

「お、王様!?王様がここにいていいの!?」

「あ、大丈夫〜!僕、全然役に立たないから!」


 そういう問題!?

 握った手をぶんぶんと振り回しながら、スーくんはにこにこと言い放った。


「あ、でも……まだ幼いから、そういう政治的なものは大臣とかがやってくれるって感じ……?」

「ヨナカ様。フォース様は22歳です」

「完全に大人じゃねぇか!ここにいる場合かよ!!」

「あはは〜!」

「笑ってる場合なの!?」


 初っ端から合法ショタの国王陛下だよ……

 意識が遠のいていくことを感じる。

 目眩を覚えた私の肩を、誰かが後ろから支えてくれた。


「あ!も、申し訳ございません!肩に触れてしまって……大丈夫ですか!?」

「大丈夫です、ありがとうございます……」


 あ、こんなに広い部屋なのに謎に直立してた人だ。

 美少女のような美少年スーくんとはまた違い、若手俳優みたいな爽やか系って感じ。

 私がじっと見つめていると、彼は日焼けした肌をそっと染めた。

 ははーんなるほど、純情爽やか系ってことね?


「38歳くらいってことですか?」

「見た目と年齢にギャップがある方ばかりを狙って集めたわけじゃありませんよ」


 スーパー冷静にリュカがいった。



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