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第一話 終わりの世界の未来の話

ご無沙汰してます黒羽くらさです!

評価、レビュー、ブックマーク、感想いつでもお待ちしています!

 高層ビルと一軒家が適度なバランスで共存する住宅街。


 その中を、二人の人間が歩いていた。


 先を歩むのは、黒髪の少年。

 彼の右手につけられている古めいたアナログ時計が指し示す時刻は十時前。

 すでに夜になった世界で、空を見上げながら歩いていた。

 月はまだ出ていないが、それだけで十分な明るさ。


「ねえ、これからどうする?」


 後ろをついて行っていた少女が問いかける。

 肩までのびた真っ白な髪が、歩くたびに揺れている。

 天球できらめいている星の光を反射して、仄かに輝いていた。


「これからって、言うと?」


 少女の声を聴いて、黒髪の少年は振り返った。

 少年の紅色の瞳が、少女を捉える。

 まっすぐに。


「これからは、これから。――どこを目指す、とか。何をする、とか」


 蒼い瞳を虚空で彷徨わせながら、少女は返答。

 手もわたわた動かし、少年に訴えかける。


「ざっくりとしたこれからだな」


 少女から視線を外し、進行方向を見る少年。

 遠く、少年の視力ではぼんやりとしか見えない場所を眺める。

 ――ビルが広がっているだけ。


「いいじゃんか、たまにはそういうのも」


 あはは、と笑う。

 にんまり笑顔の少女の隣、少年はこめかみを押さえた。


「たまには、だったらなぁ」


 溜息と共に、一言。

 少女が頬を膨らませる。

 そして、むーっと鳴いた。


「まるで私がずっとちゃらんぽらんみたいな言い方を」


 少年は肩を竦める。

 無言のまま、横目で少女を見やる。


 この状態で、数十秒が経った。


 歩く音だけが、響く。


「…………せめてなんか言ってほしかったな」


 沈黙に耐えきれなかった少女が、言った。

 少年は肩を竦める。


「ちゃらんぽらんじゃなかったら、何だろうなって」


 少女が肘で少年を小突く。

 頬を膨らませたまま、言った。


「天然、とかさ。あるじゃん、他の言い方がさ」

「どっちも自分じゃ言わないぞ、それ」


 えへへ、と少女は笑う。

 その笑顔につられ、少年も微笑みをこぼした。

 

 ――そして、その笑みのまま、続ける。

「うん。でもさ、ほんとに。何を目的にこれから生きるか、とか決めたいなって」


 指先をくるくる回しながら、少女。

 三回転した辺りで動きを止め、少女の方を指さした。

 ピシっと、音が鳴るぐらい。

 勢いを持って、少年の方を指す。


「と、言うと?」


 少年は伸ばされた手を横目で見やる。

 目に見えて慌てふためく少女。

 理由は、返答に迷ったからか、ジト目で見つめられたからか。


「いや、黙り込むなよ」

「ごめんって、ちょっと考えてた」


 ここで一息。

 少女は、空を見上げる。


 ――満点の星空。

 数えきれないほどの小さな星たち。

 天の川は堂々と黒色の中を奔り、その存在を主張している。

 月も、街灯も、光を求める人間もいないこの世界、


「何も分からないまま、ただひたすらに彷徨い続けるよりは、ね」

「何もないからこそ、何かを見つけたほうが良いってこと、か」

「そそ。だいぶ意欲が変わるんじゃないかなって」

「すぐには、見つけられそうにないけどな」

「……あはは、確かに」


 それは、真っ暗だった。



 二人は、彼方まで広がる壊れた世界を眺めながら、嘆息した。


「なんともまあ、見事な壊れ方で」

「時の流れって、怖いもんだよね」


 彼らの視線の先、遥か遠くに見えるのは、倒れたタワー。

 特徴的な形は、それがまだランドマークとして存在していたころがあった、ということが伝わってくる。

 だが、今は無残な姿。

 中央ちょっと上でぼっきりと折れている。

 その周辺の建物も軒並み倒れたり、崩れたり。


 かろうじて残ってる建物があるのは、当時の最新技術によって作られた建物だろうか。

 かつてから地震の比較的多かったこの地域では、ほかの場所に比べ建物の耐久性に重きを置いて建築をしていた。

 だから、比較的この地域の被害はマシ。


「八百年、ね」

「まあ、長いよね」

「自分でも、そんな長い間眠っていたっていうのが信じれないよ」

「ん。私も」


 世界のシステムが崩壊を迎えてからはや数百年。

 人類が手を出さなかった文明の跡は、これほどまでに軽く壊れて見せた。



 八百年前。

 人類の少子化が進み、全世界の総人口は百万を切った。

 それでも、科学技術はずっと進歩し続けており、人間の生活は豊かに、安全になっていっていた。

 全盛期の一万分の一になってしまった人間の代わりとしてさらに需要が増したのがロボットだった。

 彼らは従順で、強力で、人類の補佐にはぴったりだった。

 ――それが、便利過ぎたともいえる。

 人間が減った数だけロボットが増え、ロボットが増えた分だけまた人間が減る。

 そんな風に、人口の減少は加速していった。


 そうやって、人間がロボットに依存を続けた生活を続けていた時。

 事故は起きた。


 世界で初めて作られた、ロボットが一から作ったロボットの一号だった。

 初期不良のせいで、動力機関が爆発。

 規模はそれほど大きくなく、建物などへの損害は無かった。

 が、人間の被害はあった。

 爆風によって、近くを歩いていた女子高生が弾き飛ばされ、壁に激突。

 病院で治療が施されたが、脳死して、植物状態になってしまった。


 その時から、なんとなく、人間はロボットを避けるようになった。

 今まで募っていた不信感が表に出た形。

 もちろん、ロボットのいるままの生活を望んだものも一定数居たが、それでも少数派。


 食品生産プラントが存在していて、かつロボットの消えた街に、人間は移住し、しばらくたってから滅びた。

 これが、人類の歴史に刻まれた最後。

 そのあと、どう衰退の道をたどったのかは分からない。

が、役目を終えたロボットも次々と機能を停止していき、動物も滅び、消えた。

 最終的に、ただ死んだ街が広がっているだけとなった。





 はずだった。



 都市の郊外。

 ひっそりと佇んでいた金属のシェルターの中。

 二つの機械があった。


 コールドスリープ。


 人体を低温保存し、未来へと保存することを可能にした、オーバーテクノロジー(八百年前の技術)の遺産。

 少年と少女は、その中で眠り、八百年のときを過ごし。

 今に至る。


 西暦 三千五百五十三年十一月七日。


 彼らが目覚めてから、ちょうど三か月。



「まあ、この生活にも、だいぶ慣れてきたよな」

「そだね、これはもう上級者を名乗ってもいいよ」

「上から目線だな」

「私はマスターですから」

「嘘つけ、過ごした時間一緒だろうに」

「質の違いですよ、少年君」

「なんか腹立つな」


 と、そこで突然少女が前に駆けて行った。

 三歩分、少年より前に出た。


「二人で、終わりのない未来を描いてみない?」


 ドヤ顔で、得意そうに。

 少女は振り返って、笑った。


「中学二年生レベルの発言だな」


 その後小声で、嫌いじゃないけど、と付け足した。

 が、少女には聞こえない。


「あー! またそうやって馬鹿にして!」


 終末世壊に、笑い声が響いた。


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