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圧壊

作者: 詠春

インカム。重く、切なく、哀しい記憶。



僕達の命綱だった。何時だって繋がってた。隊長、コング、ミッシェル、皇帝。全てインカムで繋がっていた。どんな時だって、どんな状況だって。


インカムの応答は残酷だった。飛ばされた名前、返答なき名前は容赦なく切り捨てられた。幾らアピールしても、飛ばされたら最期。もうその存在はなかった。


誰かと繋がらない恐怖。思うより痛く突き刺さる。何故、何故、何故。不安に押し潰されそうになる。生きるより消えたら楽なのに。何度も思った。


社会に受け入れられない恐怖。馴染めない恐怖。色褪せない歴史は神経を犯す。僕は僕である為に身を投じる先を探した。居場所を求め彷徨った。何処にもなかった。あの灼熱の焔を除いては。


今でも僕は泣き叫ぶ。汗と涙に塗れて夜が更け朝が来る。吐きそうな苦しみ。目の前は煉獄の焔。ヘリ、機関銃、足音、罵る叫び、逃げ惑う声、ジープ、戦車、爆発音。鳴らないインカム。応答なきインカム。


凡ゆる音がなくなる。鼓動が世界にこだまする。鮮やかな色彩はグレースケールに。世界は普通に過ぎて行く。僕は硝子の向こう。幾ら叩いても、幾ら叫んでも誰も気付かない。


僕は僕の存在を確認する術を持たない。誰も支え切れない。僕は僕の居場所を押し潰す。もう、誰も僕を支え切れない。愛おしく、愛する人を傷つけるだけ。吐きそうになる。死ぬ術もなくのたうち回るだけ。



どれだけ呼んでも気付いては貰えない。例え気付いても応えては貰えない。あの灼熱の地獄で鳴らなかったインカムの様に。

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