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神宿りの剣士  作者: 陽山純樹


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第五十五話 幻魔同士の戦い

 大剣に宿った魔力を見据えた瞬間、そこに『黒竜剣』の力が乗っていることに気付いた。

 いきなり本気……!? 内心で驚きながら俺はじっとロベルドを見据える。


 そこへ仕掛けたのはガドナ。魔力を収束させるロベルドへ真正面から挑んでいく……何か手があるのか?

 疑問を浮かべているとガドナとロベルドの剣がぶつかり合う……だがロベルドの技は剣を合わせていても使用することができる。このままゼロ距離で撃つこともできるため、ガドナは対処しようがないはずだが――


「その大技は通用しない」


 ガドナが初めて口を開いた――同時、俺は察する。彼の握る剣。そこから魔力が生じ、ロベルドの剣に込められた剣の魔力を……相殺している!?


「さすがに簡単には撃たせてもらえないか」


 ロベルドはそう応じると大きくガドナを弾き飛ばした。相手は流れに身を任せ後退。隙が生じ向かってもよさそうだったが、ロベルドは動かなかった。

 いや、無理はできないという判断か。横ではマシェルとフェリアがにらみ合うような形。場合によっては横槍を入れられる可能性も否定できない。


 ガドナは剣を軽く振ると、再度構えた。一方のロベルドは先ほどのように『黒竜剣』を使うことなくじっと相手を見据える。

 彼の能力……おそらく自分の魔力で相手の魔力を相殺できる、という効力があるのだろう。そんな特殊な魔力は他の技術に転用することは難しいだろうし、そこまで質を変えると魔法など他のことに回せなくなるはずだが……それでもなお彼はこの技術を選択した。


 実際、その効力は脅威でロベルドの『黒竜剣』発動そのものを防いでしまった……対処方はおそらく二つ。一つは魔力切れを待つこと。ガドナはあくまで魔力を用いてロベルドの魔力を消し飛ばした。つまり魔力そのものが尽きればもう対処はできなくなる。

 当然それは消耗戦を意味するわけだが……俺は魔力精査を用いてガドナの魔力を捕捉。


 ロベルドにその手段がとれるのかどうか……観察した結果、目の前の幻魔は相当な実力者であることを改めて理解する。魔力の総量から言えば、ロベルドに及ばないまでもかなりの力を所持している。

 元々、ガドナについてはロベルドと魔力量については開きがあったはず。邪神の力を加算してこれなのでこの考えは正解のはずだ。その欠点をイザルデが埋めて、フェリアの屋敷へ赴かせた……なるほど、特性を考慮すれば俺が戦う場合もしんどかったかもしれない。


 さて、消耗戦についてだが……魔力を相殺する技術がどれほど魔力を喰うのかわからないが、そう大量というわけではないだろう。となればロベルドに持久戦を仕掛けた場合でも、十分勝ち目はありそうだ。

 ただフェリア達の戦いについても考慮すれば、悠長に戦い続けるわけにもいかないだろう。ならば、もう一つの手段……大技ではなく、純粋に剣術で勝負をする。


 ロベルドは――二つ目を選択した。大剣をガドナへ放ち、相手はそれを回避する。

 なおも追撃するロベルド。横一閃でガドナも今度は避けきれず自身の剣でまずは受け止めた。


 金属同士が噛み合う音が響き、結果鍔迫り合いとなる。大剣を握るロベルドの方が優位ではあるようだが……ガドナはそう判断したか大剣を受け流し距離を置く。


「真っ向勝負は受けてくれないか」

「当然だろう」


 ガドナが答える。その表情は、どこかロベルドと戦えて良かったと思ったのか、笑みが浮かんでいた。


「純粋な剣術、魔力量……そのどれをとっても俺に勝ち目はない」

「ほう、ガドナからそうしたネガティブな言葉が出るとは」

「当然のことを言ったまでだ。もっとも――能力が上回っているからといって、勝敗が決まったわけではない」


 どこか楽しげに語るガドナ……マシェルは寡黙な幻魔だと語っていたが、剣術のことになると流暢になるらしい。

 ここで双方の動きが止まる。ロベルドが足を前に出そうとすると、ガドナはその歩幅分だけ後退する。


 膠着状態か……ロベルドはどこまでも押し込もうとしているが、ガドナはそうしたロベルドのフィールドで戦いたくはないといった感じか。切り札そのものを封じられ、さらにガドナの特性からロベルドとしても打てる手はさほどないとは思うが……果たしてどうするのか。


 一方、フェリアとマシェルについてはいまだ動きを止め、対峙する。このままロベルドとの戦いを待つわけではないだろうが、双方とも何かしているわけでは……いや、体の内でほんの少しずつではあるが、魔力を集めている。

 それは、他者にバレないように……どういう手段で攻撃をするのか悟られないようにしている動き。


「――この力を得て、気付いたことがあるの」


 マシェルは両手に闇を発し、語り出す。


「私は魔法というものに取り憑かれて、魔女なんて呼ばれるくらいにのめり込んだ。けれど、限界があった……魔法を調べれば調べるほど、私に使えない魔法が目の前に現れた」

「魔法を極めるなんて言っていた以上、それはたまらなく不愉快だったのだろうな」


 フェリアが告げると、マシェルは「そうね」と頷いた。


「幻魔である私でさえ、魔力量が足りず使えないものなんてザラにあったわ。研究は十分して、間違いなく理論上は再現も完璧……けれど、使うことができない」

「その問題を解決したのが、イザルデということか?」

「ええ、そうよ。彼は私に力をくれた。その力によって、私は望む物が手に入ったのよ」


 闇が、膨れあがる。直後、その闇がフェリアへ向け一挙に押し寄せる――!!

 避けきれるのかと最初不安になったが、フェリアは自身の剣に魔力を込め、地面へ向け一閃した。すると地面が突如膨張し、爆発。それに伴って剣の魔力によって放たれた衝撃波がマシェルの魔法とぶつかり合い、拮抗する。


「さすがね、フェリア!」


 こちらもガドナと同様面白そうに叫ぶ。闇はフェリアの斬撃により見事相殺される。


「けれど今のは序の口よ。これから力が高まっていく……応じることができるかしら?」

「ああ、やってみせよう」


 明瞭な宣言。するとマシェルは再度両手に闇を生み出す……それに応じるようにフェリアも魔力を高めていく。

 同時に俺は悟る。両者が共に最強の攻撃を放とうとしている――先に決着がつくのは、フェリア達だろうと。


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