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神宿りの剣士  作者: 陽山純樹


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第四十五話 全てが終わったら

 翌日から、俺とリュハはフェリアの屋敷を出て目的地へと向かうべく旅を再開する。山野無の中に存在する女神の遺跡へ向かうわけだが……山を入る前にしっかりと準備をしなければならない。

 砂漠の遺跡もそうだが、基本的にそこに遺跡があるとわかっていない限り到達するのは難しい……だからこそ今まで人の手が入らなかったわけだが。


「武器を、手に入れるんだよね?」


 道中、隣を歩くリュハが問う。俺は首肯し、


「そうだ。邪神に対抗する以外にも純粋に強力だ」


 ロベルドやフェリアの言うとおり、これを手に入れることがイザルデ撃破の近道になるのは確実だろう……イザルデが動きを止めたって話は不気味ではあるが、それならそれでこちらは決戦に備えて準備を進めるまでだ。

 そういうわけで俺とリュハはフェリアの領地を再び脱する……本来の目的を果たす旅なわけだが、フェリア達が気掛かりであるというのもまた確かだった。






 旅の行程自体は順調に消化し、山脈へと向かうために町へ立ち寄る。ここで準備をするわけだが、ひとまず装備については問題はない。

 そもそも俺もリュハも山岳装備というのは必要なく、魔法を使って体を保護すればいい。よって探索に必要な物資を購入し、準備を終えたわけだが……。


「リュハ、早速明日山に入るけど、大丈夫か?」

「うん」


 素直に頷くリュハ。疲労などもなさそうで、問題なく進むことができるだろう。

 さて、俺達はようやく本来の目的の一つを成すわけだが……これまで以上に気合いを入れなければならない。なぜなら間違いなく遺跡内には武器を守る守護者がいるため。


 そいつ自体の能力もかなり高いし……まあそいつがイザルデより強いかというと、微妙なところだけど……邪神を封じるためには乗り越えなければならな障害であることは間違いないな。

 ここはなるようにしかならなかい……そう思いながら俺はリュハと夕食をとる。ひとまず邪神についてはおとなしく、今のところ何もない。


 今から向かうのは女神にまつわる遺跡だし、むしろ邪神にとっては有害なのかもしれない……邪神の影響が少なくなるのは良いけど、邪神に反応して守護者が動いたりすると面倒なんだよな。実際そうなるのかは不明だが、注意はしないと。

 頭の中で算段を立てながら俺はリュハのことを見据える。町中で目を引くような容姿をしているのだが、俺がいるためか声を掛けようとするような輩は出てこない……まあ独特な雰囲気を持っているからな。その辺りを忌避しているのかも。こっちとしては余計なトラブルがなくていい。


「……セレス」


 食事中、ふいにリュハが名を呼んだ。


「セレスとしては……武器を手に入れて幻魔を倒して……その後、私の中に存在する邪神を滅する、ってことだよね?」

「流れとしてはそうなるな。どうした?」

「……ううん、確認したかっただけ」


 話はそれきり。何事かと問い掛けようとしたが、彼女は黙々と食事を進める。

 彼女は何を訊きたかったのか……そう思った直後、全てが終わった後のことだと察した。


 戦いが終わったらどうするのか……邪神を滅した後どうするのか。俺達がこの戦いでどうなってしまうのか不明瞭なので未来を完全に予測することは難しいわけだが、決着がつくのはそう遠くない。だからリュハはそれを気にしていた。

 邪神が体から消えてしまえば、リュハとしても普通に暮らしていける……しかし身寄りのない彼女からすれば、この世界でどうすればいいのかわからないだろう。


 打算的な考えだが、そうした不安自体邪神に付け入る隙となる……ここは話し合っておくか。


「……戦いが終わってからの話だけど」


 リュハの肩がピクッとなる。やっぱりこの話題か。


「邪神を滅してから、どうするか……リュハは何か考えとかある?」


 首を振る。その瞳の奥に私のことはどうするのかと考えている節がある。


「あー、そうか。実を言うと俺も特に考えていないんだよ」


 そもそもセレスという人生は邪神を滅するために捧げているからな。その目的を果たしたら、後には何も残らない。


「でもまあ、一つ浮かんでいるとするならきちんと育ての親に親孝行するのと……本当の母親を見つけることかな」

「お母さん?」

「以前説明したからわかっていると思うけど、それは女神なわけで……生きているのか死んでいるのか俺の頭の中では明示していなかったんだよな。まあそれでも絶対というわけじゃない。だからまずは故郷に戻ることになると思う」


 騎士になるとか、特にそういう願望もない……前世のケインではあれだけ必死になっていた自分だったが、その熱はもうない。

 強さに憧れて、今はその強さを手に入れたわけで、騎士に対する魅力についてはあまり感じなくなっているからな。


「そっか……」


 リュハは相づちを打って、黙々と食べ進める。そこで、


「当然リュハも来るだろ?」

「んぐっ」


 変な声がした。見れば噛まずにものを飲み込んでしまったのか、胸辺りを叩いている。


「おいおい、大丈夫か?」

「う、うん……」


 水を飲むリュハ。その様子はどこか慌てた子供のようだった。


「セ、セレス……来るって?」

「村だよ。俺の両親……義理だけど、二人にも紹介したいし、身を置くとしたらそこ以外にないし」


 リュハは黙って俺のことを見据える。行っても良いの? という質問がしたい雰囲気を発しているのだが……怖くて訊けないらしい。


「……一つ疑問なんだが、邪神を滅してはい終わりってほっぽり出すとか思ったのか?」

「私は、その……」

「とりあえず俺はそうするつもりだけど、リュハは来るか?」


 その問い掛けに、リュハは小さく頷いた。

 まあ、なんというか……どこかで俺がリュハのことをどう想っているかなどはきちんと伝えるべきだとは思うが、現段階では邪神も聞いているからな。今のような関係であった方がいい。とはいえ、


「リュハは身寄りがないわけだから、いずれどうするかは選択しなきゃいけないけど……もし俺の故郷に行きたいというのなら、一緒に行こう」

「……うん」


 ほのかな笑み。さすがに全面的に納得という感じではないみたいだが、とりあえず暗い雰囲気は消えたので良かっただろう。


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