希望と期待
こうやって街を眺めていると、色々な景色が見えてくる。
通りすがりの女性に愛を解くキリスト気取りのペテン師。
刹那のロマンスを求める男と、それを売る女。
冷静にそんな分析が出来るのは、もしかしたら僕が今、夜の淵にこの身を囚われているせいなのかもしれない。
ビルの灯りとネオンサインで着飾った街は、見た目には綺麗に映る。
でも今目の前で見ている様々なやり取りは、純粋で綺麗なものとは決して言えない。
この街の夜空を見上げて思った事。
ここに本当の夜空はない。
この街と同じで。
歩道橋の上からは、流れていくまがいものの車の川を見ていた。
どれだけそうしていただろうか?
気が付くと、そこには灯りと言う化粧を落とした街があった。
1,2時間後にはまた動き出すであろうこの街も、刹那の惰眠を貪るかの如く静かに感じた。
歩き出そうと少しだけ目線を上げた紫に染まる空の先に、小さく弱々しい星を見つけた。
「本当の空はここにちゃんとあったんだ。」
本当の事が見えなくなっていたのは、僕の心が気付かないうちに薄汚れてしまっていたせいなのかもしれない。
幻みたいな、でも確かに本当を見つけた。
あの星みたいに小さく弱々しいけど、今日、この街で希望を見つけた気がする。
それを胸に。
僕はまた、明日を探しだす。