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お陰様でくーぴーたん  作者: 稲村正輝
第1章 「黎明」
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第45話 「扉があると蹴りたくなる」

これら二冊のエロ本を没収されるということは、俺にとっては多大なる損失であった。俺は複雑な心境で母親とエロ本二冊を天秤にかけていた。母親がいなければ、俺という人間はこの世にすら生まれてこなかったわけなのだが、それはエロ本二冊にも同じことが言えるであろう。俺にとって母親という存在価値がそれらエロ本にも同等にあったということを、母親は推測できなかったのだろうか。俺は母親を恨んだ。いつも俺が寂しい気持ちであった時、そこにはいつもそれらエロ本二冊がそばにいてくれた。

「もう一人で頑張らなくていいんだよ、泣いてもいいんだよ」

そう言って俺をいつも慰めてくれた。俺の青春時代で数少ない感動を与えてくれたのは、紛れもなくこの二冊のエロ本だったわけだ。


「ちっくしょーーーーーー!!!!うわあああああ!!!」

俺は両手でつくった握りこぶしを床にガンガン殴りつけながら、わめき散らした。


「殺してやる…」


俺は母親のいる二階をキッと睨みつけながら、わなわな震える右手で日本刀を掴んだ。そして、ゆっくり、ゆっくりと階段をミシミシいわせながら一段ずつ上り、とうとう母親の寛いでいる部屋の前まで来た。俺は静かに、しかし力強く深呼吸を数回した後、ドアを強めにノックし、

「おい、いるのか」

と聞いてみた。すると、部屋の中からは、

「只今、文藝春秋を拝読しております。もうしばらく時間を置いた後にお越しくださいませ」

という声が聞こえた。俺は、その言葉にカッとなり、勢いよくドアを開け、

「頼むけん、こらえてつかあさい!」

と言って頭上高く構えた日本刀を、母親の脳天めがけて振り下ろした。しかし、母親がヘルメットをしていたため、日本刀は真ん中辺りからぽっきりと折れ、その破片は虚しく床に散乱した。しかも、この日本刀が非常に割れやすいプラスチックで出来ていることを、この時初めて知った。

母親はヘルメットをすっぽり取ると、俺の方を向きながら、

「コンドームは日本製のものを使用してください。特にオカモトあたりが有名でございます。外国製のコンドームについては、運がお悪ければ、穴が開いているかもしれないからです。その穴は非常に小さな穴ではありますが、それがかえって人間の目には見えない罠となっているのでございます」

と言い放った。俺は、

「ママ、何故コンドームはゴムって言うの?」

と聞いてみた。すると、

「貴殿はドムドムというハンバーガーショップをご存知ですか?あすこのハンバーガーはなかなかの美味で、これすなわち、私はドムドムハンバーガーが私が思うお気に入りの中のひとつです。ドムドムハンバーガーはとても美味しいです。ドムドムハンバーガーに私が求めていることのほとんどがそこにあります」

と優しく教えてくれた。


自室に戻った俺は、くちゃき・阿南・小田かおりの三人をどのようにして入学させようかと悩んでいた。

「とりあえず、親父をダシにと思ったが…、親父は逃走中だ。あの糞親父め」

俺は親父抜きで学長と戦わなければならないと考えた。どこまで学長を言いくるめられるかはわからない。しかし、俺は戦わなければならいないのだ。俺はタイマンで学長と戦うことを決意したのである。そうとなれば、早いところ手を打つ必要がある。

「今日だ。今日が良い。今日学校まで行き、学長に俺の要求を呑ませるのだ」

しかしながら、今はちょうど盆明けの時期だ。わざわざ学校まで行って学長がいなければ洒落にならん。俺は家に置いてあった電話帳から大学の電話番号を調べ、電話で学長が学校にいるか聞いてみたところ、学長は学校に来ているそうだ。

「よし、これで舞台はととのった。後は俺が学校に行くのみだ」

しかし、そう容易なことではない。俺は前回の苦難を思い出し、流石に今回ばかりは徒歩では行けないと考えた。バスを利用するという手段もあるが、どのバスに乗れば良いのか調べるのが面倒であるし、バスを待つのはもっと面倒である。しかも、盆時である今、どういったダイヤでバスが運行しているかわからない。そんなお困りのあなたにはやはり自転車以外ないだろう。

「自転車か、久しぶりだな。よし、今日はサイクリングとしゃれ込もうじゃないか」

俺は白いターバンをはずし、外行き用の服に着替え、玄関を出た。

「うん、いい天気だ」

空は青一色と言っていいほどの快晴で、時折流れる暖かい風が実に心地良い。


いざ出発、といった時に俺は、

「あ、そうか!」

と、ふいに重大なことに気づいた。整形外科が閉まっていた日は確か盆の真っ最中であったのだ。

「そうか、盆休みだったからか!!」

俺はそう言いながら後ろを振り返ってみたのだが、そこには誰もいなかった。

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