フィオナという少女
久々です
「う‥‥‥朝か?」
窓から差す光で俺は目を覚ました。
あの後部屋に戻ると依頼を受けた疲れか、変な二つ名による精神的ダメージのせいかわからないがすぐにベッドに横たわると寝てしまったようだ。
「そうか‥‥部屋に戻って寝ちまったのか‥‥そういえば今日、師匠の所に戻る日か‥‥」
依頼を一つ達成するという課題を達成したので師匠の所に帰らなければいけないのを思い出す。
しかし、やはりまだ眠い。
「まぁ‥‥あと少しだけ寝るか」
「‥‥うん、おやすみ」
「ああ‥‥おやすみ」
そして再び夢の世界へーー
「ん?」
ふと疑問を感じる。そしてこの部屋には俺しかいないはずなので返事が返ってくるわけがないことに気づく。
「っておい!今の誰だよ⁉︎」
俺は布団から飛び出ると部屋を確認する。
「‥‥もう‥‥起きたの?」
「‥‥‥」
そして、俺の視界に入ったのはーー
「君は‥‥昨日の‥‥?」
「うん‥‥おはよう‥‥」
青の髪を腰まで伸ばした少女、フィオナさんだった。
俺は突然の事態に頭が追いつかない。
「おっ‥‥」
「‥‥おはよう?」
「ああ、おはようって違うわ!ここ、俺の部屋!」
「‥‥知ってる」
とりあえず自分の部屋だと主張するが悪びれた様子もなく頷かれるとこちらも返事に困る。
「‥‥じゃあなんでここにいるんですか?」
「‥‥扉が開いてたから?」
そう言われて扉に目をやると確かに空いている。しかしなぜ疑問系。
「それ、理由になってないですよ」
「‥‥細かい事は気にしない」
(案外、大雑把な人なのか?)
フィオナさんの言葉にそんなことを思う。まぁ、堅い感じよりはいいのだが。
「まぁ、部屋に居たのはいいとして、なにか用があったんじゃないんですか?」
「‥‥そう。用があるんだった」
俺が尋ねると思い出したようにいう。大丈夫かこの人?
「で、その用って?」
「‥‥一つは、昨日のことについて謝りにきた」
フィオナさんは気まずそうな顔をして言った。
「昨日?ああ、ギルドでの事ですか。あれは逃げた俺も悪いですし。お互い様ということで」
「‥‥そういってもらえると私も助かる」
フィオナさんの表情は相変わらず変化が乏しいが、俺が気にしてないことを伝えるとホッとしたように感じた。
「で、一つ目ってことは他にもなにかあるんですか?」
「うん。もう一つはお願いをきいてほしい」
フィオナさんはかしこまって言う。
どうやら真面目な話らしい。
「まぁ、できる範囲でなら」
「‥‥多分、大丈夫‥‥貴方次第だけど」
「そのお願いって?」
俺が聞くと静寂が流れる。
言えないくらいヤバい内容なの⁉︎
なんてビビってると遂にフィオナさんが口を開く。
「‥‥私と決闘してほしい」
「は?」
時が止まった。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
そして再び沈黙。
「ちょっ、え、俺と決闘⁉︎なんでそんなことを⁉︎なんかしましたっけ俺⁉︎」
突然の出来事に頭が混乱する。俺の決闘のイメージと言えば気に入らない相手とかにやるのが定番。それを突然言われたのだから混乱しないほうがおかしい。
「‥‥とりあえず落ち着いて?‥‥決闘ではなくてどちらかというと‥‥手合わせ」
言われた通り落ち着くことにする。
よし。大丈夫だ、問題ない。
「手合わせですか?それなら構わないですけど、でもなんで突然?」
改めて俺から聞き直す。
「‥‥理由はあれ」
フィオナさんは俺の刀に指を差してそう言った。
「俺の刀ですか?」
「‥‥そう。‥‥そのカタナはクエリア流剣術の継承者に与えらるカタナ。そしてそれを持ってるあなたはクエリア流の弟子。‥‥合ってる?」
「ええ、合ってますよ。俺は一応クエリア流の継承者です。といってもまだ基礎習得くらいですけど大丈夫ですか?」
俺はフィオナさんに見習いだと伝える。や、だって強いとか思わせといて負けたら恥ずかしいじゃん?
「‥‥大丈夫。‥‥‥クエリア流剣術は剣の道を進む上で知らなければならないもの。‥‥基礎でも学ぶべきことは多い」
フィオナさんは真面目に返してくる。
それにしてもこうして聞くとクエリア流剣術は凄まじいものなんだと改めて実感する。
「剣の道ってことは君もなにか剣術を?」
「‥‥うん。アゼラム流剣術っていう私の家に伝わる剣術。‥‥知らない?」
フィオナさんに聞かれるが残念ながらわからない。そこら辺は師匠も教えてくれなかったし。
「俺の住んでたところは田舎だったんで、すいません」
とりあえず謝る。
「‥‥気にしないで。私の剣術がまだまだということだから。‥‥で、いつにする?」
「手合わせなんですが、師匠の試験でここにきてるので今日、帰らないといけないんですぐにでもいいですか?」
俺が今日、帰らないといけないことを伝える。
「‥‥わかった。‥‥なら正門の前の広場でどう?」
「わかりました」
フィオナさんに聞かれて同意する。
帰らなければいけないのは本当なのですぐにしてもらえるのなら助かる。
「‥‥そういえばまだ自己紹介してなかった」
「そういえばそうですね」
お互い自己紹介してなかったことに今更気付く。まぁ、俺は心眼で見たから知ってるんだが。
とりあえず俺から自己紹介する。
「俺の名前はマサル。一応、クエリア流剣術二の型継承者ヴェルトスの弟子です」
「‥‥私はフィオナ・アゼラム。アゼラム流の門下生。‥‥あと別に敬語じゃなくていい」
フォン?貴族かなんかなのか?
ま、それはおいおい聞くとするか。
「よろしくフィオナ」
「‥‥よろしくマサル」
俺たちはお互いに握手を交わす。
「‥‥じゃあ、私は外で待ってる」
「わかった。用意したらすぐ行く」
こうしてフィオナとの手合わせが決まった。
さて、準備するとするか