二つ名を得る
「……はっ?!ここは…?」
気がつくと俺はベッドの上に寝かせられていた。よく見るとどうやらここは俺が泊まってる部屋のようだ。
(えーと…確かギルドで報告しに行って…終わって出口に向かおうとして…そうだ!)
ようやく気を失う前までのことを思い出した俺はベッドから飛び起きようとした時、後頭部に激痛が走る。
「いっってぇぇ!!えっ?!ヤバっ!めっちゃでけぇたんコブできとる!」
俺は、コブをさすりながらベッドから出る。どうやら現在の時刻は夕飯時らしく、下から喧騒が聞こえてくる。俺がギルドに帰って来たのは夕方の直前ぐらいだったはずなので、およそ2、3時間寝ていたようだ。後頭部の激痛を堪え、フラつく足取りで一階へ降りて食堂へ向かう。食堂に入るとより喧騒が激しくなり、コブにヅキヅキ響く。痛みにイラつきながら席につき、注文をするためウェイトレスっぽい女の子に話しかける。
「すいません。俺にも夕食お願いします。適当でいいんで」
「は~い。あっ!あなたはフィオナさんに引きづられてた人!気がつかれたんですね!」
「えぇ、まぁ…(引きづられてた?ギルドから宿までをか?)」
嫌な予感がしつつ、女の子に返事をすると、回りからいくつか声がかけられる。
「おぉ!おまえが噂の『貧弱剣士』か!」
「聞いてるぜ?ギルドで女冒険者に気絶させられたってな!」
「俺は街中で引きづられてる姿を見たぞ!」
口々に貧弱だなんだと言ってくる。王都に着いて僅か2日で不名誉なあだ名がついてしまった。俺が心の涙をながしていると女の子が気遣わしげに話しかけてくる。
「あはは…ま、まぁ、まだ王都に来たばかりなのですし、これから頑張って下さい!」
「あはは、お気遣いありがとうございます」
「あ、敬語じゃなくていいですよ?マサルさんとは同じくらいの年齢みたいですし」
「そう…か…じゃあよろしくな。えーと…」
「私はリンダ。こちらこそよろしく!」
俺がリンダと握手してると厨房の方から女将さんの声が聞こえてきた。
どうやら、彼女がダースさんの娘さんのようだ。
「リンダ!サボってないで仕事しな!」
「は~い。じゃあマサルまた。あっ!後、フィオナさんはもうすぐ降りてくると思うので、お礼は言った方がいいですよ?一応運んだのはフィオナさんですし」
「(気絶させたのもそのフィオナさんだけどな)わかった。ありがとう」
そう言ってリンダは仕事に戻って行った。
「さて、どうしようか」
俺はそういうと自分の部屋に戻っていった。