恥をかく少年
「あぁん?んだてめぇ?」
「ここはてめぇみてぇな貧弱なガキのくる所じゃねぇぞ?!」
どうやらこの筋肉ダルマ二人は俺が冒険者だと知らないようだ。女の子の方も怪訝そうな表情をしている。俺はそんな3人の反応に精神的にダメージをくらいながら思考を巡らす。
(出鼻こそ挫かれたがここで女の子を助けてなんとしても関係を築きたい!あわよくばフラグよ建て!)
そんな打算的な事を考えながら言葉を返す。
「いやぁ、その、彼女困ってるじゃないですか?」
「はぁ?おまえどこをどう見たらそう見えんだよ?」
「とんだ言いがかりだな。俺たちは彼女と話してるだけだ」
(どう見たって嫌がってるだろ)
そう思って彼女の方に向くと目が合った。さっきまで怪訝そうだった表情は「なんで助けるの?」みたいな感じに変わって、首をかしげてる。不覚にも可愛いと思ってしまったことは割愛する。
(そういえば、この子のステータスってどんくらいなんだろう?騎士っぽいからそこそこ強いのかな?)
マサルは『心眼』で覗いてみた。
名前 : フィオナ
Lv15
HP370 /370
MP 130/130
攻撃力 : 180
防御力 : 100
素早さ : 170
命中 : 200
知力: 150
回避 : 160
幸運: 50
(………は?)
なんと絡んでる男たちよりも圧倒的に強かった。
(おいおい……俺より少し低いくらい。こいつらより全然強いじゃねぇか……)
「おいてめぇ!無視してんじゃねぇよ!」
「………はっ!えっ⁉︎……なんでしたっけ?」
彼女のステータスに絶句していた俺は筋肉ダルマの怒声で再起動した。
「ふざけやがって!こいつやっちまおうぜアニキ!」
「あぁ!」
二人は俺に向かって殴りかかってくる。
「えっ⁉︎ちょっ、まっ!」
突然殴りかかってきたことに反応できない俺は焦る。
そして痛みを受ける覚悟を決めようとした時
「やめなさい」
絡まれていた女の子は口を開いて一言そう言った。
「げはっ!」
「ぐふぉ」
次の瞬間、マッチョ2人が床に叩きつけられた。
「え?」
俺はとっさの事に追いつけずアホみたいに口を開いてかろうじてそう呟く。
そして、大の男を叩きつけた本人は俺の方を振り向くと
「大丈夫だった?」
と俺に尋ねる。
「あっ‥だ、大丈夫‥‥です」
「そう、ならよかった。一応、助けてくれようとしたみたいだし、お礼を言っとく。ありがとう」
彼女は俺にお礼を言った。
「いえ‥‥ほんと大したことしてないんで‥‥マジで‥‥はい」
「それでも助けようとしてくれたから。私はフィオナ、あなたの名前は?」
今度は俺の名前を聞いてくる。
しかし俺の内心は
(えっ、名前聞かれてんのか?てかどうなってんの⁉︎この子ヤバい!マジヤバい!)
なにもできなかった恥ずかしさと目の前の状況についていけずパニクりまくっていた。
(どうする⁉︎どうすれば‥‥。よし、逃げよう)
血迷ったのか俺は逃亡を選択する。
「‥‥」
「‥‥」
二人とも黙る。
「アディオス!」
俺はそう叫ぶと入り口へむかって走る。
(こういうときは三十六計逃げるがなんたら、だ!よし、出口!)
このままギルドを出るといったときだった。
「なんで、逃げるの?」
そう耳元で声が囁かれた。
そして
「ぐぇっ!」
襟首を掴まれた。
そしてその反動で足が地を離れ、彼女が襟首を掴んでいた手を離してしまったので、俺は後頭部から地面に激突した。俺の顔を申し訳なさそうに見つめる彼女の顔を見ながら、俺は意識を失った‥‥