一樹
三人目登場。すごくすごく書きにくかったです。たぶん私と一樹くんは合いません←
俺、橘 一樹にはかわいいかわいい幼なじみ兼許婚の女の子がいる。
その子の名前は倉持 ゆりか。俺より4つ年下。
許婚がいるといえば、周囲の人間には驚かれるが、皆が想像しているような堅苦しいものではない。
お互いの両親の仲が良く、かつ家柄がつり合っていたため勝手に親が決めただけのことだ。
もしなんらかの不都合があれば解消してもよいとも言われている。
だが俺は、そんなことする気はさらさらない。
そして、ゆりかも解消したいなんて言ったことはない。
少なくとも、俺は聞いたことはない。
これは、結婚が嫌じゃない程度に、彼女に想われていると期待してもいいんだろうか。
親が勝手に決めたといっても、その前から俺はゆりかが好きだった。
初めて会ったときを思い出す。
俺は8歳、ゆりかは4歳だった。
橘財閥といえば、日本でかなり大きな権限と財力を持ち、さらに現会長でもある俺の祖父の代で世界に名を轟かすまでに成長した。
その分、副会長である父の、第一子かつ長男の俺にかかる期待は大きかった。
だから、俺は努力した。
勉強も社交術も運動も。この家にふさわしい完璧な男になりたかった。
俺が良い結果を出すたびに、両親は喜んでくれた。それが嬉しかった。
だが、期待が大きくなればなるほど、心の負担になった。
怖かった。
期待通りじゃなくなることが。皆に嫌われることが。失望されることが。
努力すればするほど、プレッシャーは大きくなり、もうどうしていいかわからなかった。
楽になることは、きっと許されないんだろうと思っていた。
そんなときに、ゆりかに出会ったんだ。
13年前彼女は親に連れられて、我が家に遊びに来ていた。
おとなしい印象の、かわいらしい女の子。
俺と、俺の2人の妹の二葉と早苗と4人で遊んだ。
俺は、4歳の幼児相手にも気を抜かなかった。
倉持家といえば、橘には少し劣るが、日本有数の名家だ。
失礼な態度をとって、機嫌を損ねるわけにはいかない。
俺は、当時のゆりかの子供らしいわがままを受け止め、妹たちの相手もしつつ、3人が楽しく過ごせる時間を提供した。
自分でもよくやったと今でも思う。
もちろん、ゆりかにも喜んでもらえたと思っていた。
別れ際に、帰りたくないとぐずられるんじゃないかと、無駄な心配までしていた。
「かんぺきすぎてきもちわるい。にんげんじゃないみたい」
お別れの時間にそう言われた。4歳の幼児に。さっきまで仲良く遊んでいた女の子に。
俺は驚いて、言葉が出なかった。
目の前の女の子がそんなことを言った、ということよりも、その言葉の内容に。
そして、俺の目を無表情に見つめ、続けた。
「あたしは、かんぺきじゃないほうが、すき」
俺の苦労も知らないでそう吐き捨てた幼女は、俺に興味を失ったかのように向こうを向き彼女の両親の元へと走り去っていった。
俺はしばらくどうしていいのかわからず、突っ立っていた。
幼くて、どこまでも無責任な言葉を何度も思い返す。
彼女は俺に何かを伝えたかったわけではなく、ただ自分の言いたいことを言っただけなのだろう。
そのことが、何よりも彼女の本音だということを示していた。
そして、その幼稚な言葉に救われた。
救われたんだ。
その日から彼女は、俺の特別な人。
刷り込みに近い好意だけれど、それでも構わない。
彼女のために、より良い男になりたいと思った。
現在俺は21歳の大学生で、ゆりかは17歳の高校生。
横に並んでも違和感はない、と思う。
ああ、願わくは、あの特別な人が俺のことを好きになってくれますように。そのためには、どんな努力も惜しまないから。
あと何回愛を囁けば、ゆりかに届くだろうか。
ゆりかが幸せになるのなら、俺は何もいらない。
幸せにするから、そのためのちからも、手に入れたから。
俺の隣で幸せになってください。
一樹は天才肌なのに努力家の好青年設定です。うまく文章にだせないのがもどかしいです。
これにてプロローグは終わりです。