四つ葉のクローバー
小さい頃から動物や植物、昆虫が大好きで、自然の中で遊ぶのが好きでした。
家の前が公園で、近所に住む子供たちがたくさんいて、みんなで草むらで虫をとったり、木に登ったりして遊んでいました。
ある時四つ葉のクローバーをみんなで探しました。なかなか見つかりません。ほとんど3枚の葉っぱの中に、本当に4枚のなんてあるの?という感じです。でもあるらしい。と探して、その日はやっと1つだけ見つかりました。
私は不思議に思って、その頃私たちの中で一番年上で、みんなのお姉ちゃん的存在の小学校6年生の子に尋ねました。その時私は小学校1年生。6年生のその子はとても大人で、何でも知っているように見えました。
「どうして3枚の葉っぱが4枚になるの?」
その子はしばらく考えて、こう言いました。
「まだ3枚のが小さい時に、みんなが踏んで葉っぱが分かれて、それが4枚になって大きくなったんよ」
みんな「なるほど」と思いました。
「じゃあ、いっぱい四つ葉になるように、みんなで踏もう」
その日はぎゅっぎゅっとそこらへんのクローバーをみんなで踏みしめて帰りました。
それから何度か四つ葉を探しましたが、やっぱりなかなか見つかりません。他の子たちはだんだん飽きて探さなくなっていましたが、私はそれから小学校高学年になっても探し続け、見つけると押し花にして、私の四つ葉コレクションは200枚を超えました。
その頃には、あの時の6年生のお姉ちゃんの答えに疑問を持つようになっていました。
「みんなが踏んで4枚になったのに、葉っぱの形がきれいな丸い形なのはおかしい」と。もっと違う答えがあるんじゃないか?そう思い、「どうして3枚が4枚になるのか」という疑問はずっと私の中にありました。
そうやって探し続けて、私は大学の生物学科に入り、遺伝子の勉強をするようになりました。
長年クローバーを探し続けた私には、もう一瞬でその草むらに四つ葉があるかどうかわかるようになり、早い時には立っていても2秒くらいで見つけられるようになっていました。そしてある時、ふと気づいたのです。
クローバーは年中生えている多年草ですが、一年のうちのある時だけ、やたら四つ葉が見つかる時期がある、と。それは5月。そしてその葉の特徴も、クローバーの葉っぱにいわゆる絵に描かれたような、白い線が入っている種類のものが多いのです。
これはどういうことなんだろう。大学の遺伝子の勉強と、四つ葉のクローバーが結びつきました。
クローバーの中には、葉っぱを3枚にする遺伝子と、4枚にする遺伝子がある。普段は3枚にする遺伝子が働いて出てくるけど、春先、5月頃には4枚にする遺伝子が多く働くんじゃないか。
遺伝子を働かせる要因は、冬から春にかけての気温の上昇か、紫外線の強さか、またはその両方か。
これは植物学的にちゃんと実験をして、データをとれば、論文が書けるんじゃないか、と。
これを思いついた時には、私はもう大学を卒業していたし、こんな論文書いてもあんまり実用的じゃないし、「幸せの四つ葉のクローバー」の夢を壊すのもなあ、と思ったのですが。
でも、「幸せ」を見つけるにはコツがある、ということです。それは何にでもあてはまると思います。
とりあえず四つ葉のクローバーは、5月に、葉っぱに白い線の入った種類のクローバーの草むらで探してみてください。きっとすぐ見つかります。私の長年の研究の成果です。