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元彼の夢

 7月の初めから連載小説「小さな世界の作り方」を書き始めました。

 この小説は半分くらいが実話で、主人公のモデルはもちろん自分です。

 27歳の時、仕事を辞めて、結婚を考えていた彼(第二話「顔」に出てくる彼です)にも振られて本当にどうしようもない時にようやく見つけた職場の話で、その職場にいる時からずっと書きたいと思っていた話です。

 「書きたい」と思いながら、“病理学講座”という、一般の人にあまりなじみのない職場や仕事のことをわかりやすく書く自信もなく、加えて、その振られた彼のことをまだ冷静に思い出して書けない自分がいて、「まだだ、まだだ」とずっと考えていました。

 でも今の旦那と出会って、結婚して、「もうそろそろ書けるかな」と思ったので、「毎週金曜日に更新する」という締め切りを自分で設け、思いきって書いてみることにしました。

 そうして小説の連載を始めて二週間くらい経った頃、その元彼の夢を見ました。

 彼と別れた直後には、彼の夢を何度も見ていました。夢の中で私はいつも遠くから彼を見ていて話しかけられなかったり、船に乗るのに同じ船に乗れなくて別れてしまったりと、何度も何度も別れるのです。彼から声をかけられたことも一度もなく、「じゃ」と笑顔で去って行くというそんな夢ばかりで、目が覚めて「夢の中でくらいハッピーエンドになったっていいのに…」といつも思っていました。

 そのうちだんだんと夢も見なくなり、それから10年以上も、彼が夢に登場することはありませんでした。

 その彼が、今回小説を書き始めたことで私が思い出したからでしょうか、久しぶりに夢に出て来ました。でも、今度の夢は以前とは違っていました。

 

 夢の中で、私は今の社宅に住んでいて、晩ご飯を作り終わってゴミを出すために玄関のドアを開けました。するとそこに自転車を押した彼が通りかかって、ばったり会ってしまったのです。

「あ、久しぶり」

と彼は言いました。そして、

「今からご飯食べに行くけど、一緒に行かない?」

と私は夢の中で、初めて彼から話しかけられたのです。でも私は

「もうご飯作ったし、もうすぐ旦那が帰って来るから」

と答えました。すると彼が「えっ?」と驚いたので、私は「そうか、この人は私が結婚したことを知らないんだ」と思い、

「あ、結婚して、今は○○といいます」

と今の名字を名乗りました。すると彼はまた驚いて、「あ、そう」と言って去って行く、という夢でした。

 とまあ、ここまでならよくあることで、単に私が小説を書き始めて彼のことをもう一度思い出して考えるようになり、そして書いているうちに私の中で何かが変わって、その結果、初めて彼から話しかけられたということなのかなあと思っていました。

 ところが。ここからが私の人生の不思議なところです。神さまのシナリオには、まださらに続きがありました。


 お盆で帰省していた夜、携帯が鳴りました。見ると、大学時代の同じクラスの男の子からの電話でした。その人は製薬会社に就職していて、私が病理学講座で働いていた頃に同じ医学部内を営業で回っていて、たまに学内で会ったりしていました。それでも私が結婚して辞めて以来、メールアドレスも知らないし、年賀状でくらいしかやりとりはしていなかったので、電話で話すのももう2年ぶりくらいになります。

「うわーすごい久しぶり!元気?」

と電話に出ると、今大学時代の同級生と3人で飲んでる、と彼は言いました。で、彼が「替わるね」と言って次に出てきたのがやっぱり同じクラスだった男の子。

「俺のこと覚えとう?」

と言うので、

「覚えとうよ。○○○○やろ?」

とその人のフルネームを答えると、

「な~んで覚えとん」

と嬉しそう。この酔っ払いめ、と思っていると、また違う人が出てきました。そして突然こう聞かれました。

「今、幸せですか?」

誰だかわからないけど、

「うん!すごく幸せ!」

と私が答えると、その人が、なんと元彼でした!

 そして彼はその後、まるで私のこのエッセイや小説を読んだのかな?と思うくらい「ごめんなさいごめんなさい」と何度も謝っていました。そして「ありがとう」って。

 別れた時に電話で話して以来だったので、彼と話すのはもう14年ぶりくらいになります。

 別れた時は、もうたぶん二度と会うことも話すこともないだろうと思っていたのに、こんな形で電話で話せるなんて。本当に不思議です。

 仮に彼が私のエッセイや小説を読んだのだとしても、インターネット上にこういうサイトができて、私がそれに登録してエッセイを書き始めた、というところから、この電話につながっていたのかなと思うと、やっぱり私だけの力ではなく、神さまというか、何か違うものの仕業としか思えないのです。神さまの書くシナリオには、いろんなところに伏線が張ってあるんですね。やっぱりすごいな、と。

 そんなことがあり、今までずっと持っていた彼に対する感情も消え、なんだかすっきり。人生に何のわだかまりもなくなってしまったら、私はもう書く必要がないんじゃないかなと思ったりして。“文豪”と言われている人たちは、何かしら自分に問題や悩みを抱えていて、どちらかというとあまり幸せではない人が多いような気がするし、その悩みの中から、素晴らしい作品が生まれるのかな、とも思うので。

 まあとりあえず、今の連載小説を少しずつ書いて完成させようと思います。そして全部書き終わったら、また何かが変わるかもしれない。そんなふうに思っています。



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