ヤクザ抗争
身体が痛い。足、腰、何故か腕も。体が動かない。なので妄想モードに入りました。この物語以外にも短編小説を2つ書きました。後日投稿しようと考えています。取敢えずこの物語をUPします。
カナ組の事務所から5ブロック離れた所に、別のヤクザの事務所がある。
「カナ組の所、カチコミがあったようです。組長や幹部はみんな死んだらしい」
「誰がやった」
「それが、知らねえやつらで。今もカナ組を乗っ取って居座っていやす」
「なら、カナ組のシマは、そいつらが盗るつもりだな。端からそれが目的だったのだろう」
「兄貴、もしかしてチャンスじゃないですか。カナ組の奴らだってタダで死んでないはずだ。乗っ取った奴らも相当被害が出ているはず」
「なるほど、今やれば、カナ組のシマは俺たちの物だな。若い者集めな、俺は親分に話してくる」
一方、リン太とカナコたちは、カナ組の事務所で社員の募集を行っていた。旧カナ組の構成員たちを集めて、警備員として働くつもりがあるか確認しているのだ。
「お前たちの親分と若頭たち幹部は、昨日、俺が殺した。話し合いに来たのに、俺をなめて襲い掛かって来たからだ。だから、大人しく話を聞くお前たちまで、殺そうとは思っていない。だが、お前たちの様なチンピラがこの町で生きて行きたければ、冒険者になるか、警備員になるかだ」
リン太は事務所に集められた元カナ組の構成員たちを前に演説をする。
構成員の中には、チンピラと呼ばれて、面白くない顔をしている者もいる。リン太はそいつらに一瞥をくれてやると話を続ける。
「それで警備員として、ここで働きたい奴は、ここに残れ、いやな奴は出ていけ」
「あのう、警備員とは何ですか」
チンピラの中から、頭の悪そうな人族の男が聞いてくる。
「簡単に言えば、店の用心棒だ。制服を着て店頭に立つ。店に迷惑な輩が来たら、それを排除する。お前たち得意だろ」
「分かりやした。俺はここに残って働きやす。元カナ組の親分たちを裏切るようで、気が進まねえが、死んだ者に義理を立ててもしかたがねえ」
10人いたチンピラは全て新カナ組に入社した。死んだ親分たちには人望がなかったようだ。
チンピラたちの入社が決まったこのタイミングで、事務所のドアが開けられた。
「カナ組さん、ちょっといいかい」
全員がドアに振り向くと、そこには抜身の段平を持った男が立っていた。そしてその後ろから、ぞろぞろと同じような男たちが入ってくる。
「何だてめえらは」
先ほどの頭の悪そうなチンピラ、今は新入社員が吼える。
「お初にお目にかかります。私どもはザル組の者です。それでは死んでくだせえ」
男は、先ほど吠えた入社したばかりのチンピラに切りかかる。
「ぎゃ~!やられた・・・えっ」
切りかかった男は、何かに躓いたのか、前のめりに倒れる。そして後から入ってきた者たちも同様に倒れた。
リン太の炎魔法は相手の脳を中から焼くので即死だ。あっけない。詠唱も予備動作もないため、何が起きたのか理解するのに毎回少しの間がある。
リン太は周りの者が理解に追いつくのを待たずに新入社員に指示をだす。
「お前たち、倒れた者をどかしてやれ。後が閊えている」
「「へい」」
新入社員は何が起こったのか解らないが、指示通りに死体を部屋の隅に片づける。
ドアの前を綺麗に片づけたが、後からは誰も入ってこない。
「あれ、おかしいな、外には相当の気配があるのに?お前、外に出て見てこい」
リン太に指名された男は、ドアを開け首だけ出して外を覗くが、直ぐに首を引っ込めて報告する。
「囲まれています。10人程です」
「分かった。俺たちも外に出るぞ。死んでいるそいつらも運び出せ」
リン太が最初に出て行き、ザル組と対峙する。その後から社員たち死体を運びながら出て来る。ザル組の前に死体が積み重ねられていく。
カナ組が14人、ザル組が10人、ザル組の死体が5体。
「若頭、こりゃ分が悪いぜ。入って行った奴らはみんな殺されている」
「・・・」
ザル組の陣営は積み重ねられている死体を見て動けなくなっている。
「お前たち、出入りに来たのだろ。ビビッて掛かってこれないのなら、この死体を持って帰れ。後日こちらから挨拶に行くから待っていろ」
リン太たちは、一言言い放ち、死体を置いたまま事務所に戻った。社員たちもその後に続く。直ぐに外ではザル組が死体を片づけている。
暫くすると通りには、出入りなど無かったように静けさが戻った。
出入りがあって3日後、カナコ組長以外は、全員制服を着ている。新カナ組は、カナコ組長、オークの幹部3人、一般社員10人で取敢えず形にはなった。
「今から、お前たちには営業に行ってもらう。旧カナ組の縄張り内でみかじめ料を貰っていた所に挨拶して、この契約書にサインしてもらえ。警備の契約だ」
カナコ組長はオーク3人に契約書の束を渡す。
「へい組長、行ってきやす」
事務所に残ったのは、リン太とカナコの二人だけだ。
「じゃ、俺たち二人でザル組に挨拶しに行こうか」
「二人だけで危なくない?」
「大丈夫だろ、相手はこの前の奴らだ。襲ってきても俺の魔法とカナコの爪で、簡単だと思うよ」
カナコの爪は魔法で強化されて鉄製の剣程度はスパスパ切れる。料理に使うとまな板まで切れてしまうので使用は要注意だ。
リン太とカナコはぶらぶら歩いて5ブロック先のザル組事務所を訪ねた。
しかし、そこは襲撃を受けた直後だった。
事務所のドアが破られ、怪我をした構成員が何人も転がっていた。
「あれ、ザル組さんは、カチコミあったようだ。ヤクザの世界は弱肉強食だな。この前うちに来て、戦力の大半を失った事が知られたのだろう」
「世知辛いね。明日は我が身かもしれないね」
カナコが同情しているような顔をする。しかし同情など全くしていないだろう。
「怖い事言うなよ。とりあえず中に入ろう」
リン太とカナコは壊滅状態のザル組の事務所に入る。
「ごめんください。カナ組の者です」
「・・・・・」
中には、この前若頭と呼ばれていた男が初老の男の手当てをしていた。リン太を見ても何も言わない。
「あなたがカナ組の親分さんですか、何をしに来なさった。見ての通り、出入りにあってこの様だ。何とか追い返したが、・・それで悪いが帰ってくれ」
ザル組の親分は怪我の痛みを堪えながら話す。
「それは、丁度良かった。ザル組さん、うちに就職しないかい。今カナ組は業務拡張中なんだ」
リン太がしゃあしゃあと話す。
「何が丁度良かっただ。お前のせいで、俺たちがこんな目に」
若頭がいきり立つが、それを組長が止める。
「よさねえか。元はと言えば、わしらがカナ組さんに手を出した」
「くっ」
「まあ、ゆっくり考えてくれ。だが今日からザル組のシマはカナ組が貰うから、そのつもりでいてくれ」
「・・・」
ザル組の事務所を出てリン太たちはザル組を襲ったヤクザの事務所に向かう。目的はザル組にしたのと同じ、シマの横取りと警備員の勧誘だ。
「ねえリン太、ヤクザたちドミノ倒しの様に崩れて行くね。今から行くとこも瀕死の状態でしょ。これってリン太の狙い通りなの?」
「そんな訳ないだろ。でも折角の棚から牡丹餅だから、有り難く頂こう」
「そうね。今がチャンスだものね。魔塔都市の治安のために、警備会社を大きく育てなきゃ」
警備会社カナ組の出現により、ヤクザ社会は大きく力のバランスが変わった。
半分は、カナ組の傘下に入った。残り半分は、チンチロ組と言う賭博をしのぎにしていた組がまとめあげた。
カナ組とチンチロ組の関係は、シノギが被らないので、特に悪い関係ではない。
人身売買、麻薬取引、暗殺等をシノギにしていた組はその規模を縮小し闇に潜った。表で看板を掲げて商売することはなくなったのだ。
表立って悪さをする者がいなくなり、杉原長官が懸念していた状況はなくなったと言える。
「リン太、最近暇になって来たのだけど大丈夫?警備員たちは店頭でボケーと立っているだけで一日が終わっている。店主たちも警備員はもういらないと思っているよ。警備契約の解除を申し出てきたらどうするの?」
「そうしたら希望通り契約解除してやればいいよ。俺たちの仕事はサービス業だからな。お客が要らないものを無理やり売ったりしない」
「そんな事をしていたら、警備員の給料を払えなくなるよ」
「カナコは心配性だな。大丈夫だろ、物騒になったらまた契約してくれるさ」
「そうかなー」
暫くするとカナコの心配していた通り、契約解除の申し出が増えて来た。
しかし、契約を解除した店には、みかじめ料を寄こせと、業務妨害する輩が現れる。
「リン太が何かした?契約解除した店主たちが、また契約してくれと来ているよ」
「ザル組の若頭覚えているだろ。奴は結局ここには入らなかった。一度俺たちを殺しに来たからな。それで小さいながらも独立して組を作った。そこに契約解除した店の名前を教えてやったのさ」
「そんな事をしていいの?顧客に対する裏切りじゃないの?」
「契約解除したのだから、顧客ではないよ」
「それで、その元顧客と再契約すればいいの?」
「それはだめだろ。新ザル組に対する裏切りになる。そいつらは自力で店を守るつもりで契約解除したのだから、自分たちで何とかするしかない。」
「そうなるとカナ組の収入は減ったままね」
「いや新ザル組に通報したのは一つだけだ。それ以外とは再契約してやればいいよ。再契約は3割増しの料金にしておこう、そうでないと残った顧客に示しがつかない」
「そうなると増収になるね」
「社員たちにボーナスが出せればいいな」
「私も新しい服が欲しいと思っていたところなの」
次回はマリーさんに登場して頂く予定です。主人公の一人なのに最近出番がなくて。私自身「これは不味いのでは」と考えていました。頑張って軌道修正?
行き当たりばったりなので、それは難しです。頑張ります。




