警備会社の社長はカナコ
杉原長官が心配していた通り、急速な人口の増加に伴い街の治安は悪化している。
現存する長官の兵だけでは都市の治安を守れない。そうなると自然に地回りや、ならず者、ギャング、いわゆる組織された暴力団が現れ始めた。
この暴力団が、行政に代わって街の治安を担う。大悪が小悪を抑えている状態が発生する。
しかし、暴力団は、酒の密造から始まり、麻薬、人身売買等犯罪を行う。また暴力団同士の抗争により住民や観光客に被害が出ている。早急に対策が必要だ。
「リン太さん、前に話していた。警備会社の創設をお願いします」
「分かりました。最初は色々と暴力団と衝突があると思います。法の範囲で行動しますが、何人か死人がでます。憲兵の仕事が増えますがよろしくお願いします」
長官の依頼を受け、リン太は早速行動し、警備員はオーガを10人雇った。今はその内2人を伴って近くの暴力団事務所に乗り込んだ。
「ここは今から、リン警備会社の縄張りだから、この町から出て行ってくれ」
リン太は簡単に要件を告げる。
事務所に居たのは人族で構成された暴力団カナ組の幹部たちだった。リン太が連れているオーガのガラの良くない人相から、よその暴力団がかちこみに来たと思ったようだ。
のそりとソフャから立ち上がり、剣を抜いたかと思えばいきなり切りかかる。
隣のオーガにその剣を受けさせ、リン太は火炎魔法で暴力団員の脳幹を焼く。リン太の得意とする魔法だ。以前これでオークを一瞬で数人殺したことがある。今回も同じだ。切りかかってきた男は、突然前のめりで倒れ動かなくなる。
未だ、ソファに座ったままの組員は何が起きたが理解できていない。通常なら、今倒れた男が圧倒的剣さばきで、始末していたのだろう。
「「野郎、何しやがった。」」
部屋に居た10人余りの暴力団員たちは、一斉に剣を抜き放った。そして全員が前のめりに倒れる。
息をしている者はいない。
「リン太さん、全員殺して良かったのですか。こいつらの中で使えそうなのを残して警備員にする予定は止めたのですか」
「ああそうだったな。でもいきなり剣を抜いて殺しにかかる奴は警備員には向かないだろ。それと、これが正当防衛と言うやつだ。覚えておけ。これからお前たちがよく使う法律だ」
「「へい」」
リン太は、この暴力団事務所の玄関に掲げられている「カナ組」と書かれている看板を見て、ここを警備会社の事務所にすることにした。看板もそのまま使うつもりだ。
リン太たちは、ゴーラ&リン㈱魔塔都市支部に戻ってきた。
「カナコ、悪いが、この魔塔都市に残ってくれないか」
リン太の妻たちは、ここ一週間、魔塔都市の観光を満喫し、今は帰り支度をしている。そこにリン太は声を掛けた。
「いいけど、私だけ傍に置きたいの?それは、私を正妻にすると言う事ね」
「いやそれは・・」
リン太が言いよどんでいると。
「認めないわ、正妻は私よ」
ミサコが吼える。
「いいえ、私が正妻よ」
里美も参戦する。
「私は、・・」
ニナだけが、オロオロしている。ニナが一番可愛いかも。
「4人とも正妻だ。前にも言っただろ。今回の件はカナコに任せたい仕事があるからだ」
リン太が威厳を示そうと、カッコよく言い放った。が、あっけなくそれは否定された。
「「「リン太は黙っていて、これは私たちが決めることよ」」」
「えっ、そうなの?」
話は違う方向にずれて行く。こうなっては、暫く元に戻る事はない。妻たちの話し合い?を少し離れた所でリン太は様子を見ることにした。
静かになったので、妻たちの所に近づいて行くと、カナコから話しかけて来た。
「それで、私に何をさせたいの?」
正妻の件は決着がつかなかったようだ。
「杉原長官からの要請で警備会社を作って、この都市の治安を守る事に成ったんだ。それでその社長にカナコになってもらいたい」
「どうして私なのよ。あっ言わなくても分るわ、私が有能だからね」
警備会社に使う事務所の看板が、「カナ組」と書かれていたからカナコにしたなどとは言えない。
「勿論、カナコが有能なのは間違いない。それで既に警備会社名もカナ組と決めて看板もある」
「カナ組ねえ。暴力団の下部組織の様な名前ね。でもいいわ、やってあげる」
「そうか、助かる。今からその従業員のオーガを紹介するよ。おい入ってこい」
「「「「へい」」」
ドアからぞろぞろと憲兵に似た服装をしたオーガたちが部屋に入ってくる。
「今から、お前たちの社長のカナコだ。俺の妻の一人だ」
「「「へい、よろしくお願いしやす」」」
「私が、カナコだ。お前たちには期待している」
カナコは一瞬で、カナ組の組長になった。まるでヤクザの親分だ。
オーガたちは事務所に帰した。カナコにはこの都市の治安について説明し、その改善案について話し合った。
「大体分かった。今蔓延っている暴力団を吸収しつつ、使えないヤクザは、正当防衛で処分して、使えそうなのを採用する。吸収した暴力団の縄張りの店と契約して、みかじめ料をいただく。それでいいのね」
「いや、みかじめ料ではなく、警備料金だ」
「同じでしょ」
「同じだ。でもみかじめ料は違法で、警備料金は合法だ。契約に基づく報酬だからな」
「合法だと何が違うのよ」
「棒叩きの刑にならずにすむ」
「それは、大きな違いね。分ったわ」
杉原長官は、魔塔都市条例で警備法を制定した。
1 警備業を営む者は都市庁から許可を取らなければならない。
2 警備業を営む者は警備員を登録しなければならない。
3 警備業を営む者は警備員を教育しなければならない。
この法律により、カナ組は縄張りを広げて行くことになる。
かがわマラソンは無事終了しました。また物書きに復帰です。




