第四章 休息
明日に備え、早めに帰るとしよう。飛行船に乗り、王族の皆様の質問に答えられるように、いろいろなことを頭にインプットする。マジでどんな質問が飛んでくるかわからない。例えばって?予算?人員?そもそもの存在意義だろうか……。必要性を聞かれるとさすがに返せないのでその質問だけはやめていただきたい。一番来てほしい質問は何だろうか。人員に関することがやっぱり一番だろうか。まあ、どんな質問が来ても、どんなに答えられない質問でも回答をしなければいけないのが現実だが……。
さて、俺のプレゼンに共感してくれた王族の方は何人いるかな?10人?いや5人もいればAAXAの開設はできるだろう。
まず一人目は、この国の統治者アポロン11世。
「まず最初に、お前が10年以内に達成したい目標は何じゃ?」
「ええ、そうですね。10年以内に達成したいのは、小惑星探査機の打ち上げと、王族の方のうちの一人が宇宙に行かれるような態勢を整えそれを実行することでしょうか。」
「ちなみに、宇宙に行ける最低条件は何じゃ?」
「訓練と医学的な検査の合格ですね。」
とその後は、宇宙に関する他愛もない会話を僕たちは続けていて、いつの間にか時間が来てしまっていたみたいだ。
次に来たのは、例の王女だ。
「自己紹介が遅れました。私は、アポロン王国の第三王女ルナと申します。よろしくお願いします。」
「ええ、こちらこそお願いします。」
「質問よりかは要望になってしまうのですが、よろしいでしょうか。」
「ええ、何なりとお申し付けください。」
「その……。AAXAでしたっけ?その組織に王族を一人は入れてほしいんです。」
「わかりました。王族の方が付かれるなら、それ相応の高位のポジション開けておきますね。今のところトップの座があいているので、そこがいいかと思われます。」
「ありがとうございます。だれを派遣するかは王室内で決めておきますね。」
ということで王室から一人が派遣されAAXAの人員が2人から3人になることが決定した。そしてあの感じ、派遣されるのはルナ王女だろう。となると、ルナ王女にはAAXAの長と事務部の部長を兼任してもらおう。
三人目は……。残念ながらいなかった。しかし、国王陛下と、王位継承順位一桁代の王族が賛成してくれたなら何とか設立はできるだろう。予算の面は別問題だが……。国王陛下が賛成してくれたんだ、予算も潤沢になるに違いない。そう思うながら、俺は帰路に就く。
いやー、疲れた。JAXAの面接当日くらい疲れたぞ。本当に。今日は早めに寝よう。ブラウンさんと一緒にシェアハウスに戻る。家ではうるちゃんが、歓迎パーティーの準備をしてくれていた。こういう扱いを受けられるのは本当にうれしい。にしても腹が、減った……。今日の晩飯はなんだろうな~。大漆――いや、うるちゃんに聞いてみる。今日の晩飯のメニューは、フライドチキン、フライドポテト等らしい。某おじさんがいるファストフード店みたいなメニューだな、おい。にしてもAAXA設立の日が楽しみだ。今回のプレゼンが成功していれば、結構な予算と、100人くらいの人材はもらえるだろう。結果は数日後に来るらしいので楽しみにしておこう。
さて、今は俺の歓迎パーティーに全力をつぎ込もう。こんな扱いを受けるのはいつぶりだろうか。大学卒業兼JAXA入構のお祝い会以来ではないだろうか。そう物思いにふけながらも、うるちゃんが作ってくれた、ごはんを口の中に入れる。フライドチキンはどちらかというとザンギに近い味わいで、本当においしい。うるちゃん、料理もできたのか、医師免許も持っていて料理もこなす――それがうるちゃんなのだ。本当に尊敬する。あれ、なんでフライドチキンがザンギに近いんだっけ……?そうだ、俺たちもともと北海道にいたからだ。うるちゃんは、本州の旧帝に、俺は筑波にいたから、長らく北海道の味を味わっていないから余計においしく感じるのか?まあ、故郷を思い出せただけ、いいのかもしれない。もう北海道には戻ることができないのだから。たぶん数か月後の今頃、「戻りたいよー」と嘆いているころだろう。そんな時はうるちゃんにザンギやらジンギスカンやらを作ってもらおう。
明日は、アポロン一の技術者に会いに行かなければならない。くれぐれも失礼のないようにしなければ……。
この世界に立って2日たったが特にこれといった点はない。しいて言うなら魔法が存在するくらいだろうか。そんなことを考えながら、ご飯を食べ進めていく。この味が本場で二度と食べられないのは非常に残念だが。まあ、うるちゃんが材料さえあればそれっぽいものを作ってくれるので北海道の味を思い出したくなったら、うるちゃんに頼むことにしよう。
夜ごはんも食べ終わり、風呂に入ろうとした。ここで一つ疑問が生まれた。この世界に風呂という概念があるのかという話だ。こういう時の異世界転生の先輩だ。うるちゃんに、
「この世界って風呂あるの~。」
と聞いてみる。うるちゃんは
「シャワーならあるよ。風呂入りたかったらうちの家の風呂使って~。」
少なくとも大漆家には、風呂があるようだ。
AAXAの事務所や施設には絶対に風呂用意しよ、それも、近くの温泉から引っ張ってきたやつを。しかし、AAXA最初の事務所兼管制施設はプレハブ小屋になりそうだな。いや、ここの地下に事務所を作れば万事解決なのでは?地下ならどれだけ広いスペースを取っても大丈夫だし、ひんやり涼しいからパソコンをたくさん使ってもあまり影響がない。PC?あれ、この世界にPCってあるのか?
「ああ、天羽君、あるよPCなら。最新のやつが君の1台、そして、2023年度モデルが9台とワークステーションが1台。こっち側独自の黎明期のパソコンが沢山だね。」
なんで、うるちゃんはそんなにパソコンを持っているんだ?疑問に想いながらも2階に行くと、3階への階段が見える。しかしそこの階段には、バイオハザードマークがついていた。なんとなく、大漆家にPCが10台ある理由が分かったような気がした。ワークステーションは高性能な奴がいいがそんなやつあるわけないよなと思いながら、着替えを持ってくる。風呂に入る前にうるちゃんに、ワークステーションに積んであるグラボのVRAMってなんGB?と聞く。するとうるちゃんは
「24×3」
とかいうとんでもない数字を出してきた。ということは、超高性能ワークステーションだろう。AAXAの備品として利用したい。特に打ち上げ時のシュミレーション機材として。
風呂に入るか。俺は服を脱ぎ、浴室に入る。そこには、なんとヒノキ風呂があったのだ。贅沢だと思いながら体と髪を洗い湯船につかる。ヒノキのいい匂いとちょうどいい湯加減の湯が気持ちいい。




