第二章 謁見
さて、やることがない。どうしようか。とりあえずパソコンをいじる。開くと、また超自然な機械音声が流れて、気温やらなんやらを言ってくれる。ただ少し鬱陶しい。よく見るとWi-Fiのマークがついていた。ということはつながっているのだ。Wi-Fiに。これには、舞を踊りたくなったが、医務室内なのでやめておく。そういえば、組織設立の話はいつになるのだろうか。俺は今30歳だからあんまり時間がかかってしまうと、その間に体力的、頭脳的にピークを過ぎてしまうから早めに、やってもらいたいことだ。あれ何でWi-Fiがつながっているんだ?この世界まだWi-Fiないはずのなのに。まあ、いいやそんなことは置いておこう。いややっぱ置いておけないな。なぜだ、なぜこのパソコンはWi-Fiにつながっているのだ?ラノベではこういう異世界転生したときには、だいたいサポート役のアシスタントがついていることが普通だ。これは転生物でよくある、アシスタントも一緒に成長していくタイプのやつか?今は自動充電とWi-Fiが自動的に出てくるようになったのか。これほんとに異世界転生したんだなと思う。俺ができることはただ一つ。この世界に宇宙という大きな新しい世界を提供することだ。
そんな妄想をしていると、牧師さんらしき人が僕のベッドに来て、
「まもなく着陸しますので、降りるご準備を。」
と言ってきた。俺は長そでのロゴ入りワイシャツとスラックス。それとこのパソコンしか持ってきていないから、降りる準備も何もほぼないようなものだ。そうして飛行船の高度がどんどん下がっていく。地表に近づくとそこには、マジで1940年代のアメリカのような風景が広がっていた。建物は鉄筋コンクリート造だがどこか古臭く、レトロ感が残っている。そして都市の中心部にはそんなアメリカンな街並みにそぐわない姫路城のような真っ白な日本式の城が立っていた。まるで、ラノベで見たままの異世界だった。ちなみに都市の周りは城壁で囲まれているようだった。ただ問題なのが、城壁の周りにはスラム街が形成されていた。明らかに人口過多だろう。飛行船は、城壁の外側に明らかに日本人が作ったような形をしている飛行場的なところに着陸する。この感じだと空港間連絡鉄道が通っているような気がするが。まあまだそんなに発達していないだろう。そこまで発達していたら、もう生きているうちに木星探査機も打ち上げちゃいたいくらいだ。何だろうか自分で言っといてなんだがフラグを建てすぎているような気がする。やっぱさっきの発言は撤回でお願いしたい。
飛行船はボーディングブッリジに横付けされ、パーキングブレーキをかける。
さっき牧師さんが教えてくれたが、転移者は安全の確認が取れるまで一時的に拘留されるらしい。
さて、時は進み、今ちょうど拘留されている。パソコンも検査のために没収されてしまったし、なにをしよう。そういえば、数年前に知り合いが突然失踪したような、しかもそいつは医師。まあそんな偶然あり得ないか。何もやることがないし本を読むか。いやそんなことをしている暇はないぞ自分。早くこっちの世界での宇宙開発組織の計画をしなければならない。パソコンは没収されてしまったが、紙はテーブルの上に、ペンはあるはず……。あれペンがない……。と思ったら万年筆があった。中学二年生のころから大切に使っている万年筆だ。
何というか独房よりかはホテルの一室に近い環境の部屋で組織図と理想の人材をひたすら書き続けていく。まるでプロットを書いているようだ。人員は最低でも1000人は欲しいし、予算も日本円で年ウン十億円は欲しい。うーん、果たしてこの予算通るのか?ふと疑問に思った瞬間、看守さんが僕の部屋の前にやってきて、
「天羽さん、あなたの安全性が確認できましたので、アポロン王国の首都ヨークシティにご案内いたします。」
と言われた。特にここにとどまる理由もないのでついていく。さっき、飛行船の上から見た景色が眼前に広がっている。1940年代のアメリカの景色と、和の城が調和している。いかにも異世界と実感できる場所に自分はいる。感傷に浸っている中案内されたのは、ごくごく普通の一軒家だった。中に入ると、日本人と思われる人が三人ほどいた。彼らの名前は、まだ聞いていないので後程聞いて紹介しよう。中は少し豪華なシェアハウスのようになっていて、キッチンにはおそらく冷蔵庫がある。しかしデザインは日本の家電量販店でよく見る者なので転移者のうち一人がこっちの世界の人に作ってもらったのであろう。このシェアハウスのリーダーは大漆さんだそうだ。大漆?なんか聞いたことのある苗字だ。
「初めて会った瞬間に申し訳ないんですけど、あなたってもしかして、札幌藻岩高校第48期卒業生ですか?」
「ええ、そうだけど。って、あなたもしかして、天羽さん?」
「そうですそうです。」
「なんか声聞いたことあると思っていたわ。」
ちなみに彼女は北大でがんの研究をしている。そんなすごい人がい世界に転移して噂にならないのだろうか疑問に思っている。あっ、噂になってたわ。完全に忘れていた。
「あなた日本ではJAXAの職員だったんでしょ?」
「そうだけど何か問題が?」
「この世界でも宇宙開発はするの?」
「もちろん。」
「へー、じゃあ、その輪に入れてくれないかしら。」
「いいですよ」
よしこれで人員を一人確保できた。しかもこの人は医師だ。過去にも医師の宇宙飛行士は何人もいる。という訳で大漆にはまだ計画段階だが、アポロン航空宇宙開発機構(AAXA)に入構してもらおう。これでAAXAの人員が二名になった。そしたら次は何をしようか。あっ、技術系の人がいない。AAXAは技術要員がいなければ何も始まらない。大漆に技術系で宇宙に興味のある人はいないか聞いてみる。
「いるよ、アポロン一の技術者が。」
おっこれはいい感じじゃないか。そうなったら会いに行くほかない。ただ下は、国王陛下に謁見するので予定はあいていない。ということは最短であさってか。明後日にアポロンの技術者に会いに行くとして、明日は予定がてんこもりだぞ~。国王陛下に謁見して、そのあと王族の皆様と食事をしなければならない。食事と言っての俺はプレゼンをしなければならないのが……。宇宙に興味を持ってくれる王族はいるのだろうか。いや一人はいるな絶対。何故ならあの王女、俺がロケットの話をしたときか忘れたが、JAXAのロゴを見た瞬間、目を輝かせていたからな。まあ、王女だ。国王陛下の可愛い娘のはずだから王女が賛成したら国王も断りづらいと思うが……。こんなことを、考えてどうする。スライドを作れ自分!
スライドを作っていると、いつの間にかに、小鳥のさえずりが聞こえ、カーテンの隙間から日が漏れてくる。そうか自分は、徹夜で作業したのか……。そう思いながら自室から、共用のリビングにへと移動する。ふと気になったことがある。なので大漆に聞いてみる。
「城にプロジェクターとスクリーンってあるのか?」
「プロジェクターとスクリーンなら結構あるぞ。私の家にあるものを複製してもらった。何ならこの家僕の家のコピーだし。」
一瞬すごいことが聞こえて気がするが、気にしないでおこう。
「電源は?」
「電源は例の技術者に。発電は、近くにある湖をダムにして、受刑者を雇用して発電している。しかし我ながら名案だったなあれは、受刑者は校正できるし、都市部の電力問題も解決できる。」
「ちなみに発電量当たりの内訳は?」
「水力100パーセントだ。」
大きな国土を水力発電だけで賄うことは不可能に近しい。ということは
「農村部への電気の配給はまだですか?」
「ああ、残念ながら。しかし20年後には、農村部でも電気を気兼ねなく使える環境を整えたい。」
「じゃあ、ロケット発射用の電力はどうするんだ?」
「都市を計画停電し、別のダムからも電力を持ってくる。」
そんな世間話をしている間に朝ご飯ができる。今日のメニューはお茶漬けにたくあんだ。質素ながらも、日本のことを思い出せるメニューだ。お茶漬けを口に運ぶ。、茶の甘みと梅の酸っぱさが口の中で見事なハーモニーを描き絶品だ。たくあんは、独特の味ながら、身に染みる。今こんな悠長なことをやってもいいのだろうか、いや、だめだ。早めに朝の準備を済ませなければ。俺はスーツに着替え、国王陛下への謁見の準備をする。今日は大事な日なのだ。その時のプレゼンが、成功しなければこの後の計画が水の泡になってしまう。それだけなんとしても避けたい。日本時代の上司から教わった、「適度な緊張感を持って物事に臨め」という言葉を忘れずに、今日一日過ごしていきたい。
8時ちょうどになったとき、玄関の扉がノックされる。
「天羽様、お迎えに上がりました。」
黒いスーツに身を包んだ男たちがドアの前で待っていた。本当に出ていいのかわからなかったので、大漆に
「これ本当に出ていいやつなんでしょうかね……。」
と尋ねる。すると大漆は
「あの人たちは日本でいうSPだ。安心して今日のプレゼン満喫してこい!」
というので外に出てみる。
「天羽様お待ちしておりました。私本日警護に配備されましたブラウンと申します。」
と自己紹介をしてくれたので僕も軽く自己紹介をしてから馬車に乗る。ここは古典的なんだな。馬車の中で今日の予定を伝えられる。9時から国王陛下に謁見し、12時から昼食会兼プレゼン、そして15時からは、俺のプレゼンに共感してくれた王族と個別に解説等をする時間だそうだ。こんなこと言っちゃだめかもしれないが、すごく面倒くさい気がする。スケジュールを話された後には、ブラウンさんと他愛もない会話をしているとあっという間にこの王国の中枢、アポロン上に到着する。
城の周りは塀に囲まれていて、大きな門がギイィと音を立て開く、すると数多の給仕さんが一斉にお辞儀をする。こんな扱いを受けるのは初めてなので少しばかり興奮している。落ち着け俺!こんな重要なところで失敗したら今までの計画がパーになってしまう。自制心を働かせ、白の内部へと馬車に揺られながら入っていく。馬車から降り、いよいよ王の間に入る。王の間には、外見にはそぐわない洋風の調度品が沢山置かれていた。そしてその奥には、大きな玉座が1つあった。その玉座には、いかにも男らしいひげを持った男が一人座っていた。彼の名はアポロ11世。言わずもがな名の知れたアポロン王国の国王である。彼はゆっくりと口を開き、
「礼儀はニホン式でよい」
といった。なので、日本式で行かせてもらおう。しかしアポロン王国で王のこととをキングかエンペラーと呼ぶのかでだいぶ対応が違ってくる。国王なので、たぶんキングだろう。今回はキングで行かせてもらおう。キングなら礼儀は陛下の時よりかは幾分か楽にできる。日本の礼儀の上で最も重要なもの、それは、万歳である。とりあえず国王などの国家元首には、○○万歳と言っておけば何とかなる風潮があるからな、日本だと。とりあえず「国王陛下、万歳」と叫び、国王陛下への挨拶は終わる。次に何をやっていいのかわからないのでブラウンさんに、次に僕はなにをしたらいいのかを聞く。するとブラウンさんは
「この次は飛行船に乗って移動です。」
と教えてくれた。間髪入れずに国王陛下から
「アマウよ、おぬしの目標は何じゃ……。」
「僕の目標は、王族の皆様を宇宙にお送りし、無事にこの大地まで帰ってきてもらうことでございます。」




