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中央線の車窓から

 中野駅のホームの隅で目を覚ました。着ていたはずのトレンチコートは無くなっているし、スウェットはゲロでひどく汚れていた。

 今一体何時なんだ? 太陽はずいぶん傾いているが…上野の飲み屋を出たのは確か12時頃だった気がする。酔いは覚めていたが、頭が酷く重たい。吐き気はするが俺はとにかく腹が減っていた。駅を出た所で適当に何か食おう。

「すいません、斧を見かけませんでしたか?」

 突然、後ろから声をかけられた。振り返ると背の高い制服の少女が立っている。

「斧を探しているんです。父からもらった大切な斧で、この辺に置いておいたんですが……」

 綺麗な子だった。目はぱっちりと大きくまつ毛も長い。鼻筋が通り過ぎているせいか少し日本人離れした印象を受けるが、長い黒髪をひとつ結びにしている所も校則に縛られた学生らしさが垣間見え俺好みだ。

「女子高生? いくら?」

 あまり大きな声では言えないが俺は女子高生が好きだ。本音を言うならブレザーよりもセーラー服に惹かれるのだが…。

「そうですけど…あの、斧を」

「今から食事でもと思っていたんだけど一人だと寂しいと思っていたところなんだ。君は見た目も良いし俺は性的な関心を持ったよ。どうやらおっぱいもかなり大きいんじゃない?」

 俺の言葉に彼女が信じられないものを見るような目を向ける。

 いけない、自制しないと。好みの女を見つけるとついつい舐め回すように見てしまい、焦ってしまうのが俺の悪いところだ。

「…何言ってるんですか? 斧のこと知ってるんですか?」

「斧なら俺の家に置いてあるよ。野晒しじゃ寂しそうだったからうちで保管することにしたんだ。今から取りに来たらどうだろう?」

「本当ですか? うーん…どうしようかな…。3次空間への直接干渉はなるべく避けるようにお父さんに言われてるんですけど…」

「でも声をかけてきたのは君だ。君が声をかけてきさえしなければ俺は勃起することだってなかったし…つまり責任をとってくれって事だよ」

 俺は徐にズボンのジッパーを下ろし、パンツの中の物を取り出した。

 少女は顔を赤らめ目を逸らす。

「わかりましたからしまってください! ううん、しょうがないか…あっ!?」

 瞬間、少女の頭部が3倍くらいに膨れ上がり、すぐに元通りの大きさに戻った。

「いけない! もう見つかるなんて…ううっ!?」

 彼女はそのままその場に倒れ伏し、苦しげな声をあげホームの上をのたうち回っている。一体何が起きているんだ?

「ああああああああ」

 少女の声が段々と和音のように広がっていく。異様な光景に周りに人が集まり始める。

 転げ回りながら徐々に制服が脱げている。短いスカートが捲りあがり、水色のパンティが丸見えになった。俺はもう自分を抑えることができなかった。

 彼女に飛びつき、スルスルとパンティを脱がす。白い肌に淡く生えた陰毛のコントラストが美しい。たまらず俺は曝け出された彼女の秘部に顔を埋めた。

「こんにちは。ここは第7位相だと思うのですが、あなたは観測者ですか?」

 俺は文字通りに飛び上がった。彼女の生殖器が声を出したのだ。

「ちょっとここは窮屈ですね。よいしょっとーー」

「あぎいいいいいいいい!」

 地べたに大の字に寝転がっていた少女が信じられないような悲鳴をあげた。

 と、彼女の性器から人間の指がとび出ている。

「もうちょっと、よいしょ!」

「ひいいいいいいいいいい!」

 掛け声と絶叫と一緒に今度は性器から人間の腕が生えている。

 何かが少女の膣の中から出てこようとしているのだ。

「うるさいなあ。たかだか幻想4次元の擬態機構のくせに。一丁前に人格やら『瞋』を備えてるもんだからこれっぽっちの痛みにも耐えられないんだ。そら、頑張れ!」

 少女の膣からメリメリと人間の頭部が出現する。絶叫はいよいよ人語の体を成していない、獣じみたものになっている。

「そら頑張れ! 頑張れ!」

 少女の膣から出てきた頭部は小学生くらいの少年のものだった。少年は女子高生を鼓舞するように頑張れを繰り返す。

「が…頑張れ…頑張れ、頑張れ! 頑張れ!」

 いつの間にか俺も同じように叫んでいた。

「「「ーーれ、頑張れ! 頑張れ! 頑張れ!」」」

 俺たちの周りにはいつの間にか人垣が出来ており、発せられるエールが波のように俺たちを包んでいた。

「あばあああああああああああああ!!!!」

 美しい顔を苦痛に醜く歪め、一際大きな絶叫を上げた途端、ずるんと少年がこの世に誕生した。

 わっ、と周囲が歓声に沸く。

 少女は白目を剥き、失禁していた。

「汚いなあ…3次空間に転移して早々シャワーが必要そうだよ。とんだ欠陥品だなこいつは」

 少年はそう言いながら転がる少女の頭を蹴飛ばした。

「あの、その子のことなんだけれどもう要らないようなら俺が貰っても良いだろうか? どうやら君はもう必要ないようだし、彼女の機能には問題があるらしい。ところが俺にとってはそうじゃないんだ」

 少年は怪訝な顔で俺を見る。「こんな欠陥品どうすんのさ? 言っとくけど3次空間からの転移には使えないぜ?」

「構わないんだ。人間的…いや、動物的排泄欲を満たすのにこの肉体は最適と言える。純粋性欲の発散を促進するいわばカンフルなんだよ。君にもわかるだろ?」

「僕にはよくわからないけれど、この第7位相は半分くらいが瞋に満たされてるところを見ると貴方もどうやら⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎みたいだね。間接的干渉による削除対象と言えなくもないけれど、僕は忙しい。そんなガラクタで良ければ好きに使っていいよ。肉体情報だけ見れば君たちにはこの上ないご馳走だろうしね」

 話のわかる少年だ。俺は自分の尿に塗れた少女を自分の背におぶった。「じゃあ、いただいていくね」

 丁度高尾行き中央特急がホームに滑り込んでくる。俺が歩き出すと俺たちの門出を祝福する様に周囲の人垣が割れ、道を作った。

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