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異世界から帰ってきた野球部一年の話  作者: りんごアレルギー
2/2

第二話 復帰

「っしゃー!午前終わり!」

「長かった。本当に長かった」

離人たちが通ってる高校はなんと65分5限なのだ。ちなみに月曜日は6限だ。ヤッタネ

「そういや今日の部活、実践形式のバッティングらしいぞ」

楓が急に言ってきた。

「なんか綾辻が言ってた」

「へー」

(おん詰んだー!)

何年振りかの野球。まともに打てるはずがないし守れるはずもない。

「でそのあとは内野と外野に分かれてノックだと」

(もっと詰んだー!)

外野のフライの落下地点なんて予想できるわけがない。

「ってかもう右足大丈夫なん?」

「うん…?」

(右足?なんかあったっけ?)

『疲労骨折ですよ』

『そういやしてたな』

あまりに昔すぎて忘れてた。しょーもないことは覚えてるのに大事なことが覚えられない。

「もういける。今日から復帰戦や」

(疲労骨折言い訳にしたらええやん)

これでポンコツなプレーをしても許される。

「楽しみにしとくわ。秋の大会は出れんかった分、リーグ戦ではがんばってくれよ」

「待って?リーグ戦っていつから?」

「いつからっていうかもう一校目は終わって次の試合は明後日だな。ちなみに明日は練習試合」

「流石に俺一試合目は出んよな?練習試合は」

もし出るとすれば大変なことになる。まぁ流石にありえない。復帰した次の日に試合に出るなんて。

「あたりまえやろ。練習試合も二試合目の少しぐらいちゃん。リーグ戦も最後の代打くらいじゃね?」

リーグ戦は全員出なければならないというルールがあるため、怪我してない場合、絶対に出場ということとなる。ちなみに一校につき二試合するためどっちになるかは監督の取りジャン次第。


放課後

「どうも復活の三好です」

先輩の部室にて挨拶をする。

「やっとか!もうあんな生活はやりたくないわ。今後一切怪我すんな」

「っちょ。それは厳しいです」

この人は坂井裕翔(さかいゆうと)さん。三番ライト…なんだが離人が怪我したせいでセンターを守るハメになって怒っていた。

「うるさいわ!早よ着替えて準備しろー!」

「はいー!」

せっせと一年生の部室に移動して着替える。着替え終わったあと、すぐに顧問の吉野先生のとこに行って

「今日から練習入ります」

「おっ。ついに治ったか」

「はい」

「まぁでもいきなり飛ばしすぎないようにな」

「わかりました」

先生との話を終えてグラウンドにダッシュで行く。

「あっ。三好ー」

「はい。なんですか?」

先にグラウンドで準備をしていた先輩に呼ばれた。

この人は今井巧也(いまいこうや)さん。キャプテンで一番セカンドをしている。中学の時から同じチームだ。その時もキャプテンだった。

「お前リーグ戦出れるん?」

「多分行けます」

なぜ先生ではなくキャプテンが聞いてくるかというと、リーグ戦の監督は選手がするからだ。

「おっけ」

短い会話だ。そうしてなんやかんや準備しているうちに人が集まってきて練習が始まった。

まずはキャッチボール。

「離人やろー」

「おけまる」

コイツは岡林哲也(おかばやしてつや)。ポジションは特に決まっておらずオールラウンダーなタイプだ。スタメンではないものの代打や代走が出た際は守備に着いている。ちなみに秋はコイツが離人の代わりに試合にライトで出ていた

「久しぶりにキャッチボールするな」

「暴投投げるなよ」

哲也からボールを受け取る。

(そーっと、そーっと)

軽く投げる。

「おっ。良い球やん」

スパンとグローブの中に収まった。

(よかった〜)

そこからどんどん離れていってセンターからホームくらいの距離まで離れる。

「いけるかな?」

正直とても不安だ。力を少し、ほんの少しだけ込めて投げる。

「おぉーナイスボー!」

(我ながら素晴らしい調整)

完全に力加減のコツは掴んだ。ただ復帰後すぐにいつも通り投げれてしまってるのはどうなのだろうか。

ピピー!キャッチボール終了の合図だ。

「じゃあ実践形式やるぞ。あそこに班分け書いてるから」

(俺はどこかな?)

自分の名前を探す。A班だ。ということは

「俺初手バッティングや」

久しぶりのバッティング。少しどころではなくかなり楽しみだ。

「じゃあホームランおにゃしゃす」

「無茶言うな」

一ヶ月以上バットを握ってないのはわかっているはずだ。(本当は10年以上)

「ピッチャーは…おぉw久しぶりやけど頑張れよw」

哲也が離人の肩に手を置きながら笑っている。

「まさか…」

最初にピッチャーをするのはD班の人だ。

「辰野さん…」

辰野武次(たつのたけじ)さん。このチームの絶対的エースだ。復帰後すぐに辰野さんとは運がない。

「離人〜緊張してんの?」

「うっせ。お前こそ辰野さん打てんのかよ?」

「おいおい。正捕手を舐めてもらっちゃ困るなぁ。あの人の球を一番見てるのは俺なんだ。打てるに決まってんだろjk」

コイツは村尾裕(むらおゆたか)。本人が言っているように正捕手だ。打撃能力がそこまで高くないのに自信たっぷりである。だがなぞに出塁率が鬼高い。

「ほぉ…じゃあ見せてもらおか」

この練習で打つ順番は選手で勝手に決める。ちなみに打つのは三人ずつだ。もう一人は

「お前ら…俺のことは完全に無視か…」

「あっ…」

この人は如月光太郎(きさらぎこうたろう)さん。守備は…。だがバッティングはすさまじい。この人の高校通算打率は7割8分。化け物だ。opsは2を超えている。

「如月さん、どうしますか?」

「勝手に決めていいよ」

「いやいいんかーい」

如月さんは顔は怖いが実はめっちゃ優しい。後輩からもとても慕われている。

「じゃあ僕最後がいいんで如月さんは先打ってください」

「りょ」

そんな話をしていると村尾が左打席に入る。

(辰野さんは大体入りはストレート。まずカウントを有利にしたいからな。でも最近は変化球のコントロールを気にしてる。特に左打者への。ってことは...)

辰野さんが投球動作に入り、リリースする。ボールは鋭く曲がってボール球からストライクゾーンのアウトコースへ。

「ですよね」

待ってましたとばかりにその球をミートする。綺麗なレフト前ヒットだ。

「ナイバッチー」

(まぁなんとなく打つ気はしてた。コイツの相手するの嫌だろうなぁ)

村尾は性格が悪く頭もいい。それを利用して相手の投げてくる球を予想して的確に打ってくる。

「お前キライ!」

辰野さんがマウンドで地団駄を踏む。

「まぁまぁ。インコースに投げればよかっただけですよ。でもまだ少し抜けることがあるからインコースは投げにくいですよね?まぁキレはいい感じだと思います」

打ってる奴に言われても皮肉にしか聞こえない。

続いて如月さんが右打席に入る。

「コイツは絶対に抑える」

「抑えてみろよ」

辰野さんと如月さんが真剣な表情になる。

一球目アウトコースビタビタのストレート。

「ストライク」

後ろから見ている離人が言う。

二球目低めのスプリット。

「ボール」

三球目インコース低めのスライダー。

「ストライク」

カウント1-2。

四球目高めのストレート

(少し微妙やけど多分ボール球やな)

離人は投げた瞬間にそう思った。

カキンッ!!

「えっ...」

バットに当たったボールがグングン伸びていく。

「ホームラン!」

吉野先生が手を回して宣言する。

「きっっっっっしょ!!!」

思わず口から出てしまった。

「あいつなんなん?マジで!」

マウンド上の辰野さんは先ほどより怒っている。

「出直してこい。たった140kmくらいのストレートじゃ詰まらんぞ」

「くそがー!」

さらっと言ってるけど高校二年のこの時期で140kmって結構早い。

「如月さんえぐいっす。マジで」

「痛ぇ」

ホームランを打って一周してきた如月さんが手を見せてくる。

「どしたんすか?赤くなってますけど?」

「めっちゃ押された。アイツこの前対戦した時よりも球に重みがある。スピンの音がエグい」

「へ…へぇ…」

球に重みがあるのにホームランにするとは。

(この人も異世界転生してんじゃねぇの?)

そう思うのも無理はないくらいのパワーだ。

「打てるかなぁ…」

とても不安になってきた。

『ゆかり』

『バットですか?』

『うん。壊したらまずいから』

バットを取る際にゆかりとすり替える。すり替えたバットは認識阻害かけとけば大丈夫。これでどれだけ力を込めても壊れないバットの完成だ。

「お願いします」

バットの芯をアウトコースギリギリに置いた後、インコースギリギリを先で叩き構える。

「流石にお前は抑える」

辰野さんが投球動作に入って投げてくる。

(お、縫い目の回転的にスライダーか)

異世界に行ってたおかげで動体視力が高くなっていた。

(よーいしょ)

軽く振り抜く。

「ストライク!」

「あり?」

バットは空を切った。

(やっぱ野球ってむずいな)

異世界では刀しか降ってないからバットの振り方なんて忘れた。それに力を抜いて振るってのも難しい。

二球目

(今度はストレートか。限りなくバックスピンに近い。すげぇな)

「フンッ!」

今度はさっきより強めに振り抜く。

カキンッ!

「おぉ結構飛んでるな」

走りながら打球の行方を見る。

ガシャン。フェンス直撃だ。

(走れ走れ軽く走れ)

外野からボールが返ってきたため二塁で止まる。

「ヤッタネ」

「そんなバカな...」

野球って難しいですよね。ちなみに僕はセンターです。正面のフライが一番難しい。なんかコツとかあったら教えてください

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