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百合系サキュバスのお話  作者: 釧路太郎
おパンツ戦争

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第54話 逆転

 各人の怒りメーターが可視化できるのであればまだ誰一人として怒りメーターは下がりきっていなかっただろう。

 そんなタイミングで工藤太郎はまた一つ提案をしてしまった。


「君たちの考えはよくわかったよ。そこまで深く考えているとは思わなかったので、今は申し訳ないという気持ちでいっぱいです。でも、もう一つ提案があるので聞いてもらってもいいかな?」


 誰もその問いかけには答えない。

 このタイミングで何を言ったところで無駄だとは思うのだが、みんな工藤太郎の事を心の底では信用しているという事もあって複雑な思いを抱いていた。

 もしも、もう一度間違ってしまっていることを言ってしまったとしたら。誰一人として工藤太郎の事を信用できなくなってしまうだろう。それがわかっているからこそ、誰も工藤太郎の意見を聞くことが出来なかったのだ。

 本当は工藤太郎が何を言うのか聞きたい。

 でも、また間違っていることを言ってしまったとしたら。そんな思いが頭の中で膨らみ始めていたのだ。


「わかったよ。私は太郎ちゃんと一緒に行動することが多かったし、他のみんなよりは太郎ちゃんの考えがわかるかもしれない。みんなに聞かせる前に私だけ聞いてもいいかな?」

「私達も太郎ちゃんのことを信用していないわけじゃないんだけど、殺気のは流石にあり得ないと思ったよ。これ以上太郎ちゃんのことを悪く思いたくないし、イザーちゃんが先に聞いてくれるって言うんだったらソレの方がいいかも。みんなもそれでいいかな?」


 栗宮院うまなの言葉に全員が深く頷いていた。工藤太郎はみんなに深く頭を下げてから、イザーと一緒に部屋を出ていった。

 窓越しに見えるイザーに皆が注目していたのだが、工藤太郎がイザーに何かを告げたとほぼ同時に工藤太郎の姿が消えていた。

 先ほどと同じような余計な事を言ってしまって工藤太郎が消されてしまった。そう思った一同は立ち上がって教室から出ようとしたのだが、それよりも早くイザーが教室へと入ってきた。


 なぜか、イザーは満面の笑みを浮かべて嬉しそうにしていたのだ。


「凄い、凄いよ。あんな発想は出てこなかったよ。さっきは本当に殺してやろうかと思っちゃったけど、あの時に殺さなくてよかった。本当に殺さなくて良かったよ。いや、太郎ちゃんを一方的に殺すとかは出来そうもないんで私が殺されちゃうって可能性もあったかもしれないけど、あの時に太郎ちゃんを殺そうと思わないで良かった。マジで良かったよ。太郎ちゃんは天才なんじゃないかってみんな思ってるかもしれないけど、みんなが思ってる万倍は天才だよ。絶対にそうだって言いきれる自信があるくらい凄いことを言ってのけたよ。本当に太郎ちゃんは天才だ。いや、髪と言っても過言ではないね」


 早口でまくし立てるイザーに気圧されてしまって誰も何を言われたのか聞くことが出来なかった。

 あんなに怒りを溜めていたイザーがここ迄態度を急変させるような事がいったい何だったのか、誰もが気になっているのに興奮しているイザーはその事を言おうとしなかった。

 イザーはずっと工藤太郎の事を誉めているのだが、みんなはそれよりも何を言われたのか聞きたいと思っているのである。


 姿が見えなくなっていた工藤太郎がゆっくりと扉を開けて中へ入ってきたのだが、左手を使わずにだらりと垂らしていた。

 気のせいかもしれないが、工藤太郎の体の中心が左側に寄っているように見えていた。

 そんな事はあり得ないのだが、首を中心にして見て左肩と右肩の距離がまったく違うように見えているのだ。


「みんなも早く太郎ちゃんが何を言ったか聞いた方がいいよ。本当に凄いことを言ってくれたんだよ。なんでそんな発想が出てくるんだろうって思っちゃうくらいに凄いことだから。凄すぎて本当に凄いって思うしかないよ。凄く凄い凄さなんだからね」

「わかったから。わかったからイザーちゃんはいったん落ち着いて。太郎ちゃんが何も言えなくなっちゃってるから。ね、いったん落ち着こう」

「ごめん。でも、本当に凄いことだから。期待していいよ」


 興奮しているイザーとは対照的に不自然なくらいに落ち着いている工藤太郎に視線が集まっているのだが、工藤太郎は誰とも視線を合わせずにずっと下を向いていた。

 誰もが工藤太郎の言葉を待っているのだけれど、工藤太郎は何も言わずに黙って下を向いたまま小刻みに震えていた。右手で左手を押さえたままずっと下を向いていたのだが、工藤太郎がつばを飲み込む回数が異常に多いことを栗宮院うまなが指摘したのた。


「イザーちゃんがここまで喜んでるってことは何かとても凄いことを言ったんだなって思うんだけど、太郎ちゃんはさっきからどうしたのかな。何か様子が変じゃない?」


 工藤太郎は何かを言おうとしているのだけれど、言葉を発する事は無く延々とつばを飲み込んでいるのであった。

 何か様子がおかしいと思ったクリームパイが近付くと、工藤太郎の口元が少し赤くなっていることに気が付いた。

 リップを縫っているとは思えない。どうしてそんな色が付いているのだろうと思って見ていると、工藤太郎がつばを飲み込んだ瞬間に口の端から血が滲んでいるように見えてしまった。


「ちょっとみんな、太郎ちゃんの口から血が出てるよ。大変だよ」


 近付くみんなを落ち着かせようと工藤太郎は右手を前に突き出したのだが、それと同時に工藤太郎の口から血液が滴り落ちていった。

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