第50話 工藤珠希のおパンツと
工藤珠希に似合うおパンツの答えはまだ出ていないのだが、そんな事を真剣に撮りあって欲しくないと工藤珠希はずっと言い続けていた。
みんな工藤珠希の事が好きなのでその意見を聞こうとはするのだけれど、工藤珠希のお願いを聞くよりも自分たちの願望を優先してしまっていた。
世論調査ではピンクのセクシーなおパンツの方が似合うと考えている人が多いようだが、イザーの説得の甲斐もあって水色の可愛らしいおパンツの得票数も徐々に伸びてきているのだ。
ただし、最終的にどちらのおパンツを穿きたいかを決めるのは工藤珠希であるので、たとえ票が入らなかった方だとしても逆転の芽はあるのだ。
毎日行われている投票の結果を公表することで工藤珠希に強く印象付けるという狙いもあるのだが、工藤珠希はどちらのおパンツに対しても否定的な意見を述べている。
人前でおパンツを見せるのはおかしいというもっともな意見なのだが、それを受け入れるほどサキュバス達はお人よしではない。なぜかレジスタンスの一部も工藤珠希が選ぶおパンツがどちらなのか楽しみに待っている人もいるようだ。
「珠希ちゃんに私たちが選んだおパンツを穿いてもらうためにもう一押し必要だと思うんだよね。そんなわけで、太郎ちゃんからもピンクでセクシーな大人っぽいおパンツが珠希ちゃんに似合うって勧めてもらえないかな?」
「さすがにそんな事を勧めるつもりはないよ。仮に、俺が勧めたとしても珠希ちゃんは納得して穿いてくれるとは思えないんだよな。どちらかというと、周りから言われれば言われるほど意地になって穿かなくなるんじゃないかなって思うよ」
「そうかもしれないけれど、それをどうにかして穿いてもらう必要があるのよ。これはイザーちゃんと私たちのこれからを決める代理戦争と言っても過言ではないからね」
工藤珠希が選んだ方がこれから先の主導権を握ることが出来るという事なのだが、工藤太郎が見てきた限りでは栗宮院うまなもイザーもお互いに気を使って行動しているように見える。
主導権を奪い合ってこれから進む道を決めるような関係でもないと思うし、何かあった時は割と話し合いで決めているような気もしていた。
ただ、工藤太郎が遠い宇宙に取り残されてしまった事に関してはイザーの単独犯行であって栗宮院うまなは関与していないという結論が出ている。
その事を踏まえると、工藤太郎が栗宮院うまなに手を貸すのもやむなしと言えるのかもしれないが、工藤珠希がセクシーで大人っぽいおパンツを穿くところを想像できないでいた。普段の彼女を見ていると、とてもそのようなモノを穿くとは思えないのだ。
だからと言って、自分を苦しめたイザーに協力する気にもなれず、このままどちらの陣営も決め手を欠いて共倒れになればいいのにとも考えていた。
両者共倒れになる事こそが工藤珠希の平穏な生活を保つ唯一の道のようにも思えていたのだ。
だが、どちらの陣営も劣勢の追い込まれても辞退するつもりはなく、どうしても自分たちが選んだおパンツを工藤珠希に穿いてもらおうと努力し続けているのだ。
例え自分の命を落としてしまったとしても、理想のおパンツを工藤珠希に穿いてもらうためであれば後悔などしない。むしろ、誉れ高き事と自画自賛するのであろう。
なるべくおパンツの話題を避けている工藤珠希ではあるが、それを感じ取ったサキュバス達はあまり大っぴらにおパンツの話題を出さないようにしているのである。
しかし、多くのサキュバス達の思いもむなしく、栗宮院うまなとイザーは連日連夜どちらのおパンツが工藤珠希によくお似合いかという討論をしているのである。
討論の様子は毎回配信されているのでいつでも見ることが出来るのだが、工藤珠希も工藤太郎も気付いていないふりをして日常を過ごしているのであった。
工藤家の食卓には今日も豪勢な料理が並んでいる。
お手伝いをしている時に一通り味見をしたのだが、どれも満足のいく出来だと工藤太郎は考えていた。
料理をしない工藤珠希は先にお風呂に入っているのはいつもの事なので気にはならないのだけれど、このいつもの事が工藤太郎にとって地球に帰ってきたという事を実感させる出来事になっていた。
今まで長い間素性をよく知らないペタコン博士と宇宙船の中で暮らしていたという事もあるのだが、こうして工藤家に戻ってこれたという事に対する喜びは工藤太郎の中でとても多きものになっていた。
「お風呂上りで暑いのはわかるけど、何かちゃんと履きなさい。全くはしたない子ね」
「急いでてパジャマ持ってくるの忘れちゃったんだもん。すぐに部屋に戻るし、お客さんが来てるわけじゃないんだからいいでしょ」
「そういう事じゃないでしょ。珠希は女の子なんだからもっと周りに気を使いなさいよ。太郎ちゃんだって嫌な気持ちになるでしょ」
「ちょっと、なんで太郎が嫌な気持ちになるのよ。それって凄く失礼な言い方だよ」
「失礼なのはあんたのその恰好でしょ。せめてシャツでパンツを隠すとかしなさいよ」
「別に家族なんだからいいでしょ。そろそろパパが帰ってきそうだし、すぐに着替えてくるから問題ないし」
工藤珠希は風呂上りに牛乳を飲んでから部屋に戻って行ったのだが、学校ではおパンツを見せるのはイヤだと言っていたのも嘘なんじゃないかと思ってしまうような行動をとっていた。
お風呂上りにおパンツが見えるような格好でも気にする様子はないのだ。
おパンツを見られるという事をあれほど嫌がっていた工藤珠希が家の中ではおパンツが見えても気にしない。そんな感じで過ごしているのだ。
この事を知ったら栗宮院うまなとイザーはいったいどんな反応を見せるのだろうか。
おそらく、あの二人がいる時にはおパンツが見えないようにしっかりと対策を立てるのだろうが、普段からそのように行動してほしいと思う工藤太郎であった。




