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百合系サキュバスのお話  作者: 釧路太郎
おパンツ戦争
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第5話 おっぱいが小さいんですけど

 クリーキーの遺体を回収に来たドクターポンピーノの前に立ってそれを阻んだのはクリームパイであった。

 ドクターポンピーノが死んだものを完全な状態で生き返らせることが出来るという事をクリームパイも知っているはずなのだが、完全に亡くなっているクリーキーの回収をクリームパイは拒んでしまったのだ。処置室に運ばなければ完全な状態で生き返らせることが出来ないという事を説明していたのだが、クリームパイの意志は変わらなかった。


「弟が亡くなって辛い気持ちはわかるんだけど、ここで私がその子を処置室まで連れていかないと元の状態に戻してあげることが出来ないんだよ?」

「それは知ってます。でも、弟は、クリーキーはこのままで大丈夫です」

「大丈夫って、不完全な状態で生き返らせるのはその子にとって辛いことになると思うんだけど。私はそんな風になってほしくないんだよ。君たちはこの星の住人じゃないから生き返ることに不安があるのかもしれないけれど、私は異星人だって異世界人だって悪魔だって神様だって元の状態に戻してあげることが出来るんだよ」

「ええ、ポンピーノちゃんは元の状態に戻せない時もあるじゃない。ほら、私のあんなに大きかった胸がこうして小振りになってるんだけど、それはどうしてなのかな?」


 クリームパイとドクターポンピーノの会話に割り込んだ栗宮院うまなであったが、何度も繰り返されているこのやり取りはもはや誰も相手にしなくなっていたのだ。栗宮院うまなが生き返った時に彼女の胸が小さくなっているなんて誰も思っていないし、実際に測ってみたとしてもサイズは全く変わっていないのだ。それに、生前に着用していたブラジャーも違和感なくぴったりとフィットしているという事実もあるのだが、それらの事に栗宮院うまなは目を向けようとしなかったのだ。


「もう、私の胸を元の大きさに戻してもらえるのはいつになるのかな。そのためには私がもう一回死なないといけないのかもしれないけど、本当は死にたくないんだよね。ねえ、どうしたら私の胸が元の大きさに戻るのかな?」


「君の不安な気持ちはわかるけれど、君の弟だって生き返った時に体が欠損した状態だったら嫌だと思うんじゃないかな。それに、こんなに粉々になってしまっているんだから修復するのに時間もかかると思うんだよ。だから、一刻も早く修復して元の状態に戻してあげたいのだが」

「本当に大丈夫です。こいつの取り柄は死んでも生き返ることが出来るって事なんです。なので、こいつはあなたの手を煩わせることもなくちゃんと蘇生するので大丈夫ですよ。例え、マグマの中に落とされてしまったとしても完璧な状態で蘇生するんです」

「ちょっと気になるんだが、その例え話って実際にあったことなのか?」

「はい、以前足を滑らせてこの子が火口に落ちたことがあったのですが、二か月後に火山が噴火した時に溶岩流と共に帰ってきたんです。溶岩石の中から出てくるのにちょっと時間がかかっちゃったんですけど、無事に戻ってきたんですよ」

「それは凄いと思うけど、それでも私がちゃんと元に戻してあげるよ。ね、だから私に任せてほしいな」


「私の胸も元に戻してくださいよ。ポンちゃんならそれも可能でしょ?」


 胸の話をする栗宮院うまなには関わるな。

 そういう決まりがあるのではないかと思ってしまうくらいに誰も相手にしてくれない状態の栗宮院うまなであった。目の焦点も定まっていない栗宮院うまなはドクターポンピーノの周りをフラフラと歩いているのだが、その姿は獲物を見つける前のゾンビのようでもあった。


「私の弟はあなたの手を煩わせなくても大丈夫です。こいつを救うためのリソースを他の人に使ってもらった方がいいと思うんですよ」

「あら、私の事を心配してくれていたのね。でも、そんな心配はご無用よ。私が亡くなっている人を元に戻すのに何かを消費しているって事は無いの。あえて言うのであれば、時間を消費しているともいえるのだけれど、それは他の事をしていたとしても同じなのよね。それよりも、修復することで得られる経験が私にとってとてもかけがえのないものになるのよ。ここまでバラバラで粉々になってしまってるのはなかなか見ることも出来ないし、それをやったのがあのイザーちゃんであるというのも重要なのよね。イザーちゃんが殺した人を修復できるなんて、滅多にある事じゃないし得られる経験値も桁違いなのよ。だから、私にこの子を修復させてもらいたいな」

「ですが、こいつは誰かに蘇生してもらうという事を望んでないと思うんです」

「そんな事無いと思うわよ。どれだけ時間がかかるかわからないけれど、私だったら一晩あれば確実に元の状態に戻してあげられるわよ」


「一晩で戻せるんだったら、私の胸も元の大きさに戻してほしいな。少しくらいだったら元よりも大きくしてもらってもいいんだけど」


 相変わらずドクターポンピーノの周りをフラフラと周回している栗宮院うまなであったが、あまりのしつこさにイラついてしまったイザーは栗宮院うまなの上に岩を落としてしまった。


「申し訳ないです。うまなちゃんは普段はこんな子じゃないんですよ。なんか、ポンちゃんが死体を回収するところを見ると変なスイッチが入っちゃうみたいで」

「それは前からだから気にしなくてもいいよ。イザーちゃんはちょっとイラっとしちゃってるみたいだけど、あんまり気にしない方がいいんじゃないかな」

「それはそうなんですけど、このままだと珠希ちゃんに似合うおパンツを決めることも出来ないと思っちゃって」

「そうだね。それが今はこの世界で一番重要なことだもんね。よし、あんまりよくないことだけど、うまなちゃんを生き返らせるときにちょっとだけ記憶をいじってあんまり胸の事を考えないようにしてみるね。本当はあんまりやりたくないんだけど、イザーちゃんも困っちゃうみたいだし仕方ないよね」


 ドクターポンピーノが栗宮院うまなの遺体を回収することにはなったけれど、クリーキーはそのままの状態でクリームパイが一晩見守るという事になってしまった。

 ただ、クリーキーが異星人という事もあって何が起こるかわからないので、何が起こったとしても対処出来ると思われるイザーも一緒に見守ることになったのだ。

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