第49話 イザーと工藤太郎
幼女化していた時の栗宮院うまなの映像を見た工藤太郎は何とも言えないような表情を浮かべていたが、すぐに穏やかな笑顔を浮かべて微笑みかけていた。
栗宮院うまなはそんな工藤太郎の優しさに涙が出そうになっていたのだが、幼女化していた時の事をいつまでも茶化してくるイザーの事が頭から離れなくて複雑な気持ちになっていた。
「うまなちゃんが小さい子供みたいになった時に太郎ちゃんがいたら、もっと楽しいことになってたと思うんだけどな。ポンピーノちゃんに頼んでもう一回うまなちゃんの脳をいじってもらおうか?」
「絶対に嫌なんだけど。それって、私にもう一回死ねって言ってるって事?」
「そういうわけじゃないよ。でも、最近の傾向だと、うまなちゃんって自分の部屋で朝を迎えてないんだから、脳をいじってもらう機会はいくらでもあるって事なんじゃないかな?」
「そういう言い方は良くないと思う。私は確かにここ数週間は処置室で目覚めることが多いけど、そういうのは言わない方がいいと思うな」
「でも、どうしてうまなちゃんはいっつも狙われちゃってるんだろうね?」
心配そうに話しているイザーではあったが、毎日栗宮院うまなを殺しているのは彼女なのだ。
その理由は単純で、自分と対立しているのが許せないというものである。
もちろん、栗宮院うまな以外にもイザーと対立している者は多くいるのだが、毎日イザーを殺しているという事を周知させることで多数派だったピンクのおパンツ派が徐々に規模を縮小させている事になっていて、その状況に概ね満足しているという事で無駄に殺しはしないという考えにいたっているのだ。
そこにたどり着くまでに多くのモノが殺されていたのだが、誰が殺しているのかという証拠は一切見つからなかった。
だが、無数に設置されている死角が存在しない監視カメラに全く映らず、痕跡も一切残さずに犯行を行っているという事を考えると、そんな事が可能なのは未知の力を持った神に近い存在かイザーしかありえないのだ。現実的なことを考えると、犯人はイザー以外にあり得ないし、そんな事が出来るのはイザーしかいないと誰もが想像している。
しかし、イザーがやったという証拠が一切残っていないこともあって疑惑のまま事件は幕を下ろしてしまいそうであった。
「今日は太郎ちゃんもいるし、うまなちゃんは久しぶりに自分のベッドで眠ることが出来るんじゃないかな?」
「そうだといいんだけど。それよりも、太郎ちゃんはどっち派なの?」
工藤珠希に似合うおパンツは水色の可愛いおパンツだと主張するイザーは工藤太郎に対しても自分の思いのたけをぶつけていた。
何の反応も示さない工藤太郎に対して若干の焦りを見せつつも、イザーは最後まで自分の主張を述べることが出来ていた。
まったく興味が無いかのようなリアクションの工藤太郎に対してプレゼンをした形になったイザーは、一切手ごたえを感じることもなく体だけではなく心にも大きな疲労していたようだ。
一方、水色のおパンツよりもピンク色のセクシーなおパンツの方が似合うと主張する栗宮院うまなと多くの生徒たちは自分の思いだけではなく、工藤珠希には大人っぽいおパンツの方が似合うという事を語っていた。
熱い演説が続いているのにもかかわらず、工藤多呂のはこちらに対しても全く何の反応を見せる事は無かった。
むしろ、イザーの話を聞いている時よりも興味が無いようにも感じてしまっていた。
工藤太郎を自分の陣営に引き込んだ方が勝てると思っている二人ではあったが、肝心の工藤太郎は二人の争いに加わることはなかった。
どちらの選んだおパンツも工藤珠希にはベストな選択ではないと思っている。
お風呂上りに下着姿でウロウロしている工藤珠希を時々目撃していたという事もあり、工藤太郎の記憶の中にいる工藤珠希の穿いているおパンツは水色の可愛らしいおパンツでもなく、当然ピンク色のセクシーなおパンツという事でもないのだ。
両陣営の意見が対立することは当然なのだが、そこに工藤太郎が割って入ることにしたのだ。
この争いを終わらせるためには工藤太郎自らが犠牲になる必要があるという事なのだ。
「俺はどっちの陣営にも協力は出来ないかもしれない」
「そんなことは言わずに、イザーちゃんの派閥にはいっちゃいなよ。太郎ちゃんが入ってくれたら鬼に金棒状態になると思うけど、どうかな?」
「イザーちゃんは俺に対してちょっと酷いことをしてくれたってのは覚えてるよ。あの時は本当に大変だったからね。どれくらい離れているかもわからないくらい遠い場所からどうやって帰ればいいんだろうって毎晩考えてたからね」
「あれはたまたまそうなっただけで、私が意図してやったことではないんだよ。本当に不幸が重なってしまっただけだし、そこまで気にしないでいてほしいな」
そんな事を言われても普通の人は気にしてしまうと思うのだが、工藤太郎はイザーの言う通り気にしないことにしたのだ。
頼まれたから気にしないという事ではなく、気にするようなことでもないと思っているのが本音なのかもしれない。




