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百合系サキュバスのお話  作者: 釧路太郎
おパンツ戦争

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第46話 穴から感じる恐怖と喜び

 宇宙船から落ちてきたものが何なのか気になっている工藤珠希は栗宮院うまなが止めるのも聞かずに穴へと近付いていった。

 穴の底から微かに聞こえるうめき声に恐怖を感じつつも、何がおちてきたのか確かめないといけないという気持ちになってゆっくりと穴を覗いていた。


「落ちたら危ないから私が手を掴んでるよ。ほら、しっかり手を握って」

「ありがとう。でも、大丈夫だと思うから気にしなくてもいいよ」


 栗宮院うまなの優しさなのか下心なのかわからない提案を無視して工藤珠希は穴の中を覗いていた。

 微かに聞こえるうめき声が徐々に近づいてきているような気がしていたけれど、そんなはずは無いと思いながら目を凝らして穴の中をじっくりと観察していた。

 うすぼんやりと穴の中から何かが這い上がってきているように見えるのだが、その正体がいったい何なのかまではわからなかった。壁を上っている姿は昆虫のようにも見えるし爬虫類のようにも見えるのだが、工藤珠希は不思議と危険な印象を受けなかったのだ。


「危ないからもう見ない方がいいよ。何か危険な感じがしてるんだけど、珠希ちゃんは何にも感じてないの?」

「危険な感じはしないかも。どっちかって言うと、ボクはアレが天使みたいに感じてるよ」

「天使って、それは珠希ちゃんのことじゃないかな?」

「え、それは流石に意味が分からないよ」


 工藤珠希も栗宮院うまなもふざけているつもりはなかった。

 お互いに感じたままを言っただけなのだが、お互いの思いを理解し合うことは出来ずにいたのだ。栗宮院うまなが工藤珠希に合わせることが多いという事もあって、あまりすれ違うようなことが無い二人だったが、この時ばかりは全く意見がかみ合う事は無かったのだ。

 だが、周りを囲んでいるサキュバス達も穴から這い上がってきている何かは危険な存在だと認識しているようで、工藤珠希に近付こうとするものは現れなかった。栗宮院うまなくらい強い者がいれば状況は違ったのだろうが、サキュバス達は穴の奥から感じる得体の知れない恐怖に恐れおののいていた。


 そんな事は全く知らない工藤珠希は上ってくる何かの正体を確かめようとさらに身を乗り出して穴を覗いていたのだが、その姿を見ていたサキュバス達は工藤珠希の勇敢さに敬意を表しているのと同時にあまりにも無謀な行動をとっていることに畏怖の念も抱いていた。


「本当に危ない感じがするからもう離れた方がいいよ。私もこれ以上は無理かも」


 栗宮院うまなは完全に腰が引けている形ではあったが、懸命に腕を伸ばして工藤珠希の力になろうとはしていた。

 だが、助けたいという気持ちとは裏腹に体は正直なもので、顔は完全に穴が見えないように横を向いていた。辛うじて視界の端に工藤珠希が入っている程度の状態ではあったが、それでも一生懸命に手を伸ばして工藤珠希を救おうとは思っているのだ。


 サキュバス達も力になれるかは自信が無いようではあったが、穴から出てきた生物が危険な感じであればなんとか一撃でも入れられるようにと戦闘態勢をとっているのである。

 もちろん、野生のサキュバスやサキュバス星人たちも同様にいつでも戦えるように準備は万端であった。


「あ、みんなそんなに警戒しなくても大丈夫だよ。上がってきてるのは太郎だよ。まだはっきりとは見えていないけれど、アレは太郎で間違いないよ」

「本当に太郎ちゃんなの?」

「そうだと思うよ。まだちゃんと見えてるわけではないけど、アレは太郎で間違いないよ」


 工藤珠希の口から自信満々に工藤太郎の名前が出たことでみんなが落ち着くと思っていたのだけれど、その思いもむなしくサキュバス達の戦闘態勢が解かれる事は無かった。

 むしろ、先ほどよりも気合を入れいている者の方が多いようにも感じていた。

 そんなサキュバス達の行動を少しおかしいと感じながらも、穴から出てこようとしているのが工藤太郎だと気付いた嬉しさが勝っていた。みんなから何を言われようと、工藤太郎に会えるという嬉しさに勝るものはなかったのだ。


「ねえ、珠希ちゃんが見ているのって本当に太郎ちゃんなの?」

「そうだと思うよ。ボクが太郎を見間違えることないと思うし、ちょっと怪我してるみたいだけどアレは太郎で間違いないと思う」

「そう言われると太郎ちゃんと同じような力に感じるんだけど、その力の根源的なモノが太郎ちゃんと違うように感じるんだよね。説明するのが難しいんだけど、何かとてつもなく危険な力に感じてるんだよ。多分、私だけじゃなく他のみんなもそうなんだと思うよ」


 危険な力とか言われても良くわからないと思った工藤珠希は穴から離れてみんなの事を確認しようと思って振り返っていた。

 工藤太郎が戻ってきたことを喜んでくれているものだとばかり思っていたのだけれど、工藤珠希の目に飛び込んできたのは今まで見たことが無いくらいに好戦的な顔をしているサキュバス達であった。

 戦う力を持たない工藤珠希でも感じるほどの殺気を放っているサキュバス達に驚いていた。

 なぜ殺気を向けられているのかわからないままではあったが、栗宮院うまなが工藤珠希に向かって駆け寄ってくるのとは対照的にサキュバス達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出してしまっていた。


「ただいま帰りました。時間がかかっちゃってごめんね」


 聞き覚えのある懐かしい声に思わず振り返ってしまった工藤珠希であった。

 彼女の目に映っているのは会う事を待ち望んでいた工藤太郎であるのだが、自分が知っている工藤太郎と少し違うような気もしていた。

 男子、三日会わざれば刮目して見よ。そんな言葉を思い出した工藤珠希はやっと再開することの出来た工藤太郎をじっくりと見ていたのであった。

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