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百合系サキュバスのお話  作者: 釧路太郎
おパンツ戦争

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第44話 ごく普通とは何か

 視線を上へと移すと宇宙船が浮かんでいるのが気になる所ではあるが、あの中で工藤太郎が休んでいるという事なので誰にも邪魔されずにいるのは良いことなのかもしれないと工藤珠希は考えていた。

 何人かの生徒がドローンを飛ばして内部の撮影を試みようとしていたようなのだが、宇宙船に備わっている防衛機能が働いて自動的に撃墜されているので悲鳴が上がるたびに何かがあったのだと認識することも出来ていた。

 工藤太郎がいつどのタイミングで起きてくるのかが心配なのだが、ペタコン博士の話を信じると起きてくるのは下校時刻を少し過ぎたあたりになるようだ。工藤珠希は何とか先生たちを説得して今日だけはいつもよりも遅くまで学校に残れるようにしようと計画を立てることにしたのだ。


「太郎ちゃんって凄く丈夫で頭もいいでしょ、それを見てて地球人って凄いなって思ってたんだけど、ここにいるみんなってあたしが思ってたのと何となく違うように感じるんだよね。太郎ちゃんは自分の事をどこにでもいるごく普通の人間だって言ってたんだけど、あたしの飼ってた熊を子供と遊ぶかのように相手してたのを見てもどこが普通なんだろうって疑問があったんだ。四十尺ある熊を素手で一方的に支配するかのように遊んであげることが出来るのがごく普通の人間だとしたら、太郎ちゃんが暮らしている地球って凄くヤバいところなんだって思ってたんだよ。太郎ちゃんは自分の事を、歴代でもそこまで強くないとか世界は広いので自分よりも強いやつなんていくらでもいるって言ってるんだけど、それって嘘だよね?」


 工藤太郎がイザーと互角の強さを持っているという事は周知の事実なのだが、工藤太郎がどこにでもいるようなごく普通の人間だと思っている人は誰もいなかった。

 彼は頭が良くて力も強く性格も真っすぐで非の打ち所がない。

 あえて欠点をあげるとすると、一緒にいると自分が能動的に動かないと何もやることが無くなってしまうという事だろうか。それが欠点と呼べるのかはわからないが、それくらいしか無いというのも困ったものである。


「太郎がごく普通ってのは違うと思う。この学校に入るまでは太郎の事を何でも出来る天才だとは思ってたよ。でも、この学校に入ってからはボクが想像していたよりも何倍も凄いんだってのを気付かされたんだ。この学校には凄い人がたくさんいてボクなんかが一緒にいていいのかなって思う事も多いんだけど、そんな凄い人たちと比べても太郎は全く見劣りしないんだよね。それどころか、一番凄いなって思ってるイザーちゃんとどんな事をしても互角なのも異常だなって思ったよ。遠い宇宙に行って帰ってくることが出来なくなったって聞かされた時はどうなってしまうかなって心配にもなったけれど、それでも太郎なら何とかして帰ってきてくれるとは思ったよ。色々あったみたいだし、ペタコン博士の協力もあって無事に帰ってきたって聞いた時は安堵感よりも、帰ってきて当然だよねって気持ちの方が強かったし。ペタコン博士がいたからこんなに早く帰ってくることが出来たってのはわかってるんだけど、もし太郎が一人で行動してたとしてもそんなに変わらなかったんじゃないかなとも思うんだよね。別に、ペタコン博士の事を卑下しているわけじゃないんだけど、それくらい太郎は何でも出来るんじゃないかって思うようになってるだけの話だよ。そんな太郎がごく普通の人間だって言うのは、絶対に違うと思うな。太郎みたいな人間が他にいてたまるかって思うよ」

「一番近くで太郎ちゃんのことを見ていた珠希ちゃんが太郎ちゃんの帰りを信じてたってのは良いよね。私は正直に言って、転送ゲートが使えなくなったって時点で諦めてたよ。ううん、諦めてたのは私だけじゃないと思うんだ。残りの寿命を全部使って光の速さで移動してもたどり着けないような場所にいる太郎ちゃんが自力で帰ってくるなんて無理だって思うのが普通だよね。それなのに、珠希ちゃんは太郎ちゃんがちゃんと帰ってくるって信じてたんだよ。それって凄いことだと思うんだ。私もイザーちゃんもみんな太郎ちゃんが帰ってこれるとは思ってなかったのに、珠希ちゃんだけは信じて待ってたんだよ。そんな風に太郎ちゃんのことを信じられる珠希ちゃんって、凄く素敵だなって思った。凄く素敵で愛おしいって思ったよ。誰にも渡したくないくらい愛してるって感じたからね」


「これからお世話になるうまなちゃんに対してこんな事を言いたくはないんだけど、うまなちゃんが珠希ちゃんに対して抱いている感情はちょっと凄いよね。あたしもその気持ちは何となく理解出来るけど、ちょっと度が過ぎてるような気もするよ。そこで気絶してるイザーちゃんもきっとうまなちゃんと同じことを思ってるんだろうし、あたしたちの事を見守ってる人たちも似たようなことを思ってるんだってのが伝わってくるよ。もしかして、珠希ちゃんってこの学校のアイドルか何かなのかな?」


 自分の事についてそこまで言われるとは思っていなかった工藤珠希はちょっとどころではなくかなり恥ずかしいと感じていた。

 ペタコン博士に向いていたはずの視線も自分に集中しているように感じていたし、うまなちゃんの言葉に対して頷いている人がたくさんいたのも感じていた。

 それよりも、ペタコン博士が自分の事をアイドルなのかと言ってから拍手が徐々に増えていったのはどういう事なのかと思ってしまった。

 零楼館高校にいるサキュバスが自分の事を好きだという事は知っていたけれど、レジスタンスからも拍手が起こっているのは意外であった。

 レジスタンスだけではなく、野生のサキュバスやサキュバス星人からも拍手が起こっているのは何かの間違いだと思っていたのだけれど、みんな穏やかな笑顔を浮かべているのを見て逃げられないかもしれないと感じていたのだった。

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