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百合系サキュバスのお話  作者: 釧路太郎
おパンツ戦争

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第37話 重要な決断と蛮勇

 工藤太郎にはどうすることも出来ない問題。

 工藤太郎が人間であるという事が理由なので、解決することが出来ない問題。

 深刻な問題であったし、それを無事に解決する方法は存在しないのであった。


「つまり、この宇宙船の最高速度で地球に向えばあっという間につくって事でしょ。それなら遠慮せずにそのスピードで向かってくれていいんじゃないかな?」

「君は本当にバカなのか? あたしの言っていることを何も理解していないとでもいうのか?」

「理解はしているよ。宇宙船が最高速度を出すことで俺の体にかかる重力が凄くて肉体がもたないってことでしょ?」

「そういう事だ。この宇宙船が無事に地球についたとしても、君が死んでいるのだとしたら何の意味もないだろう。それが理解出来ない君だとは思えないのだが?」

「地球に着いてくれさえすれば俺は死んでたって構わないよ。どっちにしろこのままのスピードで向かっていたとしても生きてたどり着くことが出来ないだろうし、それだったら死んでしまうとしてもすぐに地球に着いた方がいいでしょ。誰だってそう思うんじゃないかな?」


「生まれ故郷に早く帰りたいという気持ちはわからないでもないけれど、命だけではなく肉体も消滅するというのは悲しいことだろ。あたしだって太郎ちゃんをすぐにでも地球へ送り届けたいと思っているけど、それと同じくらいその体を無事に送り届けたいって思ってるからね」

「ペタコン博士が俺の事を心配してくれるってのはありがたいことではあるんだけど、そこまで心配してくれなくても大丈夫だよ。だって、俺が帰る地球にはポンピーノちゃんがいるからね」


 真実を知っても全く動揺することのない工藤太郎の精神力には驚かされたペタコン博士であったが、その理由として名前をあげられるような人がいることに少しだけ嫉妬してしまっていた。

 自分も信頼されてはいると思っていたのだが、それ以上に信頼されているポンピーノちゃんという人物が何者なのか気になって仕方がなかった。


「君がそこまで信頼するポンピーノちゃんってのはいったい何者なのかな?」

「詳しいことは俺も知らないんだけど、俺が通っている零楼館高校で死んだ人を生前の状態に戻してくれる人だよ」

「死んだ人を生前の状態に戻してくれる人。つまり、遺体を修復してくれる人って事でいいのかな?」

「大体そんな感じであってると思うな。今まで何度か悲惨な感じに亡くなってる人を見たことがあるんだけど、次の日には何事も無かったかのように復活させていたからね。あまりにもおかしな思想だったり言動が酷い人はちょっと脳をいじられたりもしてたけど、概ね元の状態に戻されてから復活してたね」

「復活してたという事は、体を復元させるだけではなく命も蘇らせることが出来るという事なのか?」

「俺も詳しいことは本当に知らないんだけど、零楼館の中では死んだとしても次の日には生き返ることが出来るんだよね。そのおかげで命のやり取りも結構気軽に行われていたりするし」

「平和なのか物騒なのか全く分からないな」


 真実を打ち明けた後にも工藤太郎が変わらず冷静さを保っていた理由はわかったのだが、ここは零楼館でなくただの宇宙船だという事を忘れているのではないだろうか。

 工藤太郎の体が重力に押し潰されて塵一つ残っていない状態になったとしても元の姿に戻すことが出来るのかもしれないが、失われた命を蘇らせることが出来るとは思えない。

 この宇宙船にそんな特別な力があるとは思えないし、工藤太郎が言う零楼館の不思議な力も遠く離れている宇宙船にまで影響を及ぼしているとは思えないのだ。


「太郎ちゃんが冷静でいられる理由はわかったけど、体を無事に復元できるかもしれないという事は理解出来たよ。納得は出来ていないけれど、君のその真っすぐな瞳を見ると嘘ではないんだろうという気持ちになった。だが、肉体は再生することが出来たとしても、この宇宙船の中で失われた太郎ちゃんの魂はどうやって蘇らせるというのかね?」

「そこは賭けになっちゃうと思うけど、俺は生き返ることが出来るという可能性に賭けるだけだよ」

「とても分の悪い賭けだと思うけれどね。あたしは太郎ちゃんを信じてはいるけれど、本当にそんな事が可能なのかはわからない。ただ、その真っすぐな瞳を見ているとあたしも信じたくなってしまうね」


 このままの速度では間に合う事は無いのは事実なのである。

 この宇宙船の最大船速で進めば一週間とかからずに地球へ着くことも事実なのである。


 だが、その速度域では工藤太郎の体にかかる負担が大きすぎるというのも事実なのである。

 その負担によって、工藤太郎の体がこの世界から消滅してしまう可能性も高いのである。


 それらをすべて理解したうえで、工藤太郎は最大船速で進むことを希望していた。


 とても勇気とは呼べない、ただの無謀な決断であることはわかっていた。


 わかってはいたのだけれど、ペタコン博士は工藤太郎の瞳が真っすぐ前を向いていることを信じてみようと思っていた。


 自分を信じてくれている工藤太郎の事を信じてみよう。

 そう思ったペタコン博士は重力に耐えらえるように体を変化させていったのであった。

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