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百合系サキュバスのお話  作者: 釧路太郎
おパンツ戦争

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第36話 宇宙船で起きた問題

 地球へ向けて最大船速で向かっている宇宙船だが、今のスピードでは地球につく前に工藤太郎の寿命が尽きてしまう可能性が高いという計算結果が出てしまった。

 その事実を知っているのはペタコン博士だけなのだが、それを工藤太郎に伝えることは出来なかった。

 伝えたところで何も事態は進展する事は無いし、いたずらに動揺をさせてしまうだけだという事は考えなくてもわかる事であった。

 当初の予定では一週間とかからずに地球へと到着しているはずだったのだが、生身の人間である工藤太郎がその超速度の移動に耐えることが出来ないという事実が判明していたのである。ペタコン博士は自身の体を変異させることで超重力に耐えることも出来るようになるのだが、工藤太郎の体はほんの一瞬の移動であっても耐えることが出来ずに潰れてしまうことになるだろう。


 どうあがいても工藤太郎を無事に送り届けることが出来ないという事実をどのタイミングで伝えるのが適切なのか、ペタコン博士は長い人生の中で一番悩んでいたのであった。

 当然、工藤太郎はペタコン博士が何かに悩んでいるという事は気付いていたのだが、それがいったい何なのかはわからないのであった。ペタコン博士の悩みが自分に関することだという事は夢にも思わなかったのだ。


「何か悩んでいるみたいだけど、俺に協力出来ることだったりするのかな?」

「いや、こればっかりは太郎ちゃんの力を借りることは出来ないんだよ。どちらかというと、あたしが太郎ちゃんに力を貸すことが出来ればいいんだけどね。それも無理な話だと思うからどうしたもんかと悩んでいるのさ」

「天才の苦悩ってやつだね。俺に協力出来ることが無いんだとしても、何かしらのヒントを見つけることは出来るかもしれないよ?」

「その可能性はあるかもしれないけれど、問題を解決するための方法はおそらくこの世界には存在しないんだよ」

「そんな難しい問題があるなんて、世界ってやっぱり広いんだな」


 ペタコン博士が自分の事で悩んでいるとは思ってもいない工藤太郎は他人事のように考えていた。

 ハッキリと問題を伝えないペタコン博士にも責任はあるのだけれど、そんな工藤太郎の態度を見てペタコン博士は本当の事を言った方がいいのかもしれないと考えるようになっていた。

 だが、その事実を突きつけるという事は、工藤太郎にとって残酷な結果しか残らないという道しか存在しないので伝えることに戸惑いを感じているのであった。


「そう言えば、地球迄あとどれくらいで着きそうなのかな?」

「そうだね。今のペースで問題なく進んで行ったとして、四千年もあれば着くんじゃないかな。多少寄り道をすることを考慮したとして、五千年はかからないと思うよ」

「そんなに時間がかかるのか。てっきりもっと早く着くのかと思ってたよ」


 あまりにも普通に聞かれてしまったので思わず本当の事を言ってしまったペタコン博士であったが、工藤太郎があまりにも自然にその事を受け入れてしまっていたので間違えていってしまった事に気付くのが遅れてしまった。

 本来であればもう少しタイミングを見計らって伝えるべき問題であったのだが、あまりにも自然に伝えてしまった事でペタコン博士は気付いてから大いに後悔してしまっていた。


「申し訳ない。本来のペースで進めていれば一週間とかからずに地球に着くはずだったんだよ。これは本当のことなんだ」

「わかってるよ。地球との通信でそんな事を言ってたと思うし、何か事情があってのことなんでしょ?」

「まあ、そういうわけなんだが、その理由を聞いたりしないのか?」

「聞きたいとは思うんだけど、ペタコン博士が言いたくなさそうだから聞かない方がいいのかなって思ってるんだよ」

「君は本当にいいやつだな。あたしの事をちゃんと信頼してくれているんだもんな」


 人から頼られることの多かったペタコン博士ではあったが、頼られるのはその頭脳と身体能力によるところが多くペタコン博士自身を無条件で信頼するような人は誰もいなかった。

 そんな自分をあったばかりの工藤太郎がここまで信頼してくれている。

 そう思ったペタコン博士は本当の事を言うべきなのではないかと思い始めていた。


 だが、それと同時に、抗うことの出来ない残酷な現実を突きつけるという事は、彼の心を壊してしまう事に繋がるのではないかとも考えてしまっていた。

 信頼してくれている人の心を破壊してしまうかもしれない。そう考えると、工藤太郎に本当の事を言い出すことが出来ずにいたのだ。


「俺一人じゃあの星から出ることも出来なかったし、イザーちゃんが転送ゲートを直してくれるまで待機するしかなかったんだよ。でも、そんな俺をあの星から連れ出してくれたペタコン博士には感謝してるよ」

「そう言ってくれるのはありがたいのだけど、あのまま待っていたら転送ゲートとやらを直してもらえたんじゃないかな?」

「たぶん、それの可能性はこの宇宙船に乗って地球を目指すよりも低いと思うよ。だって、イザーちゃんもうまなちゃんもサキュバスのみんなは俺を珠希ちゃんから遠ざけようとしてるからね。俺が珠希ちゃんの近くにいると、サキュバスの人達が珠希ちゃんの心を手に入れることが出来ないからさ」


 宇宙の奥を見つめている工藤太郎の瞳はどこまでも澄みきっているように思えた。

 その瞳を見て余計なことを言ってしまったと思ったペタコン博士だが、今更本当の事を隠しても仕方ないと思い、真実を打ち明ける決心をしたのであった。

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