第32話 抗議活動
イザーに対する抗議活動は収まるどころか過激さを増していた。
最初の方こそある程度無抵抗で抗議を受け入れていたイザーではあったが、連日絶え間なく続く抗議活動という名の攻撃に無抵抗を貫くことは出来ずにほどほどに反撃は行っていた。
イザーの反撃により抗議活動も停滞を見せるかと思われたのだが、正義の心に燃える彼女らは抗議活動を止めることなく何度も繰り返されていたのであった。
「なんでみんなイザーちゃんに対して酷いことをしてるの?」
自分が攻撃されたことが原因だとは思っていない栗宮院うまなは素直な気持ちで工藤珠希に質問をしていた。
工藤珠希は返答に困ってしまった。
栗宮院うまなのために行動を起こしているというのは紛れもない事実なのだが、今の栗宮院うまながそれを聞いて納得するのだろうか。おそらく、彼女はみんなの行動を良くないとは思いつつも、自分のために行ってくれているという事に対して止めることは出来ないだろう。そんな感じになることは想像に難くないのであった。
「ピンクが良いか水色が良いかで揉めてるだけだったらよかったんだけどね。どこかで何かが間違ってこんなことになっちゃったのかもしれないな」
「そうなんだ。揉めるのは良くないと思うんだけど、うまなちゃんはやっぱりピンクの方がいいと思うよ。珠希ちゃんもそう思うでしょ?」
ココで工藤珠希が頷けば全てが終わるかもしれない。
その事は工藤珠希本人も理解はしているのだけれど、どちらのおパンツもそこまで好みではないので答えに窮していた。正直に言ってしまえばどちらも好みではないがどちらも嫌いではない。そこまでこだわりはないのだが、イザーと栗宮院うまなが提案してきたおパンツなのだが、工藤珠希が普段穿いているおパンツの素材と異なるおパンツ素材なので穿いた時の感触が想像出来ない。その事を早めに伝えるべきだったのではないかと後悔していたのだが、そんな後悔は今更遅いのだという事だけは理解していた。
「ねえ、珠希ちゃんはうまなちゃんが選んだおパンツは嫌いなの?」
「嫌いという事は無いんだけど、ちょっと恥ずかしいかな」
「そんなに恥ずかしくないと思うんだけどな。珠希ちゃんにはすごくすごくお似合いだと思うよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、似合ってるって言っても見せたりはしないよ」
「ええ、うまなちゃんが選んだおパンツを珠希ちゃんが穿いているところを見たいな。他の人には無理でもうまなちゃんには見せてほしいな」
「そう言われてもな。ボクはおパンツを見せるのは良いことじゃないと思うんだよね。恥ずかしいってのもあるけど、やっぱりそういうのは人に見せるものじゃないと思うから」
「でも、うまなちゃんは毎日みんなにおパンツを見られてるよ。今日も水鉄砲でぬらされちゃったから、乾かすために何回も穿き替えたんだよ」
水鉄砲で攻撃されるようになってから栗宮院うまなは防水のバッグにおパンツをたくさん入れて持ち歩くようになっていた。
他の人が新しいおパンツを差し入れしてくれることもあるのだけれど、基本的には栗宮院うまなが自分で持ってきたおパンツに穿き替えることにしているのである。
幼児化しているとはいえ、他人が用意したおパンツに穿き替えるのは抵抗があるのかもしれない。
イザーに対する抗議活動と並行してイザーの信徒である宇宙人に対しての作戦も秘密裏に行われていた。
栗宮院うまなに対する蛮行は教職員の間でも問題になっており、宇宙人たちに対してどのように対応するべきか議論が行われていた。
零楼館高校の生徒であればどのように対処するべきか悩むこともないのだが、実態の良くわかっていない宇宙人を相手にどこまでの行為が許されるのか判断に悩んでいた。
宇宙人たちが個人の意思で地球にやってきていてイザーに協力しているのであれば問題なく対処することも出来るのであろうが、仮に彼女たちがその星の代表者として地球にやってきていたのだとすると、外交問題に発展しかねないと勧化てしまっていたのである。その事をイザーに聞いても良くわかっていないようだし、捕まえた宇宙人もコミュニケーションをとることが出来ないので確認のしようがなかったのだ。
結局、栗宮院うまなに対して悪さをしているという事で罰を与えることにしたのだが、いくら殺したところで次の日には生き返ってまた同じことを繰り返す。毎日がその繰り返しになっており、誰もが頭を悩ませていた。
「皆さんの苦労は察します。自分たちの行動によって外交問題が発生してしまうのではないかと考えているのもわかるのですが、宇宙人である私からアドバイスをさせていただきますと、この星に攻め込もうと思う宇宙人はこの広い宇宙を探しても見つからないと思います。例えば、この星が他の星に対して侵略戦争を仕掛けたとしても、どの星も無条件で降伏することになるでしょう。なぜなら、この星にはイザーちゃんがいるからです」
「それには一理あると思うんだけど、本当にイザーちゃんが抑止力になりえるのかな?」
「もちろんです。どんなに強い魔王だって世界を救うことの出来る勇者だってイザーちゃんと戦う事なんて無謀だってわかってるんです。それは全宇宙の総意ですよ」
「まあ、宇宙だけじゃなく他の世界でもそう思われてるかもしれないね。私の知ってる範囲になっちゃうけど、イザーちゃんの力は他の世界でも広く知れ渡っているからね」
クリームパイとドクターポンピーノの発言は教職員たちの背中を強く押す一つの要因となったのであった。




