表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合系サキュバスのお話  作者: 釧路太郎
おパンツ戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/77

第29話 イザーの焦り

「イザーちゃんは誰にも負けない強さを持っていると思っていたんだけど、どうして今はそんなに焦っているのかな?」


 クリームパイの指摘を受けるまでイザーは自分が焦っているという自覚はなかった。自覚はなかったのだけれど、いつもとは時間の感覚が異なっているような気はしていたのだ。それが焦りだという事を初めて知ったイザーは今までにない体験に喜びを感じていたのだが、それと同時に自分自身に少しだけイラ立ちも感じていた。


「焦っている。これが焦っているという感覚なんだね。そう言われるとそうなんだろうなってわかるんだけど、なんで私は焦っているんだろう?」

「もしかしてだけど、太郎ちゃんの存在ってイザーちゃんにとって何か都合が悪いことでもあったりするのかな?」

「そんな事は無いと思うよ。だって、太郎ちゃんは私たちに珠希ちゃんのことを教えてくれるきっかけになった大切な人なんだよ。私たちが珠希ちゃんにであるまではずっと太郎ちゃんが珠希ちゃんのことを守っていてくれたんだからね。そういった点でも感謝してるんだよ」


「それはそうなのかもしれないけど、イザーちゃんって太郎ちゃんのことを話す時だけ眉間にしわが寄ってるよ。それって、何か良くない感情があるって事なんじゃないの?」


 イザーは工藤太郎の事を考えてみた。

 生まれて初めて出会った自分と同等の強さを持った生物。どの世界線を辿っても自分と対等に戦えるものなど確認出来なかったのだが、この世界線には自分と同じ強さを持った生物がいたのだ。

 それも、自分たちが初めて運命の相手だと感じた工藤珠希がいるこの世界線に工藤太郎がいるという悲劇。工藤太郎がいなければ自分たちの魅力で工藤珠希を簡単に誘惑し、身も心も自分の虜にすることだって出来たはずなのにそれが出来ていない。

 なぜそうなっているのか、原因は工藤珠希の心が強いからという事ではなく工藤太郎が守っているからなのではないかという疑念はあった。

 工藤太郎が遠く離れている今は前よりもずっと工藤珠希の心が自分に近付いているという気もしている。自分だけではなく他の女性との距離も近付いているように感じているのだけれど、その理由は工藤太郎が誰にも気付かれないように工藤珠希と女性の距離をとっていたという事なのかもしれない。


 それは考えすぎなのだろうと思ってはいるのだけれど、工藤太郎がいる時といない時の距離感が違うという事がその答えになっているのではないかという考えが頭の中で生まれてしまっていた。


「あれ、どうしたのかな? 何か困ったことでもあるの?」

「そういうわけじゃないんだけど、クリームパイちゃんが言ってた太郎ちゃんのことを話すときにだけ私がちょっと違うってのは何でなのかなって考えてたんだ」

「そうなんだ。それの答えって見つかりそう?」


「私が勝手にそう思ってるだけで正確な答えじゃないと思うんだけど、太郎ちゃんがいる時といない時でみんなと珠希ちゃんの距離が違うような気がしてるんだよね。それって、太郎ちゃんが珠希ちゃんとみんなの距離をあけようとしているって事なんじゃないかなって思ったのかも」

「それはどうだろう。どちらかと言えば、太郎ちゃんがみんなと珠希ちゃんの距離をとるようにしてるんじゃなくて、太郎ちゃんと一緒にいる時に珠希ちゃんがみんなとの距離をとってるんじゃないかなって思うよ。だって、この前見た太郎ちゃんと話をしている時の珠希ちゃんの顔ってあなたたちサキュバスが珠希ちゃんを見ている時と同じような顔だったよ」

「それって、私たちが珠希ちゃんに抱いている思いを珠希ちゃんが太郎ちゃんにも抱いているって言いたいわけなの?」

「あくまでもそう見えたってだけだよ。珠希ちゃんに直接聞いたわけじゃないし、聞いても答えてくれないと思うんだけどね。それと、太郎ちゃんと話している時の珠希ちゃんの心拍数はいつもより高かったな」


 通常であればサキュバスの魅了に抗う事など出来ないのだが、例外はいくつかある。

 その一つは、誰かに対して純粋な愛の感情を持っているという事だ。

 そんな事は考えたくなかった事なので違うと信じ、自分と同じ強さを持っている工藤太郎が妨害していると思っていたのだ。

 その方が対策も立てることが出来ると思っていたのだけれど、工藤珠希が純粋に愛している相手がいるという事になると何も出来なくなってしまうのだ。

 例え、工藤太郎を殺すことが出来たとしても、工藤珠希の思いを消すことは出来ないだろう。

 むしろ、工藤太郎が死んだことでその思いがより強くなってしまう可能性だってあり得るのだろう。


 現に、こうして工藤珠希と工藤太郎が会えていないこの期間においても工藤珠希の思いはより強い物へと変わっていると感じることが多いのだ。

 工藤太郎を遠くへ追いやるという事で工藤珠希のガードを解くことが出来ると考えていたことなのだが、近くにいても遠くにいても変わらないのであれば工藤太郎に何かをするということ自体意味のないことなのかもしれない。


 ただ、工藤珠希の近くに工藤太郎がずっと居ることの方がサキュバス達にとってデメリットも多そうなので今まで通り工藤太郎には辛い課題が与えられることになるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ