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異世界転生者のTSスローライフ  作者: 未羊
第一章 大陸編

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第96話 転生者、リザードマン町長に驚く

 扉が開いて中に入ると、そこには魔王城から二つ目の宿場町の町長が立っていた。一つ目の宿場町の町長であるティコとは対照的に、二つ目の宿場町の町長は俺くらいの身長を持つ、全身を鱗に覆われリザードマンだった。


「これは魔王様、よくお越し下さいました。私は、この街の町長を務めるザルドンと申します。モリーが失礼を働いたようで、心よりお詫び申し上げます」


 なんとも礼儀正しいリザードマンだった。案内役のモリーを思うと、意外な人物のようだ。


「ちょっとザルドン様?!」


 失礼を働いたのは事実だが、改めて言われるとショックの大きいモリーなのである。あれで丁寧に接していたというのなら、モリーは反省してもらいたいな。


「モリー、下がっていいぞ。お前がいては話がややこしくなる」


「ちょっと待って下せえ、ザルドン様」


 食い下がろうとするモリーだったが、ザルドンの部下に脇を抱えられてそのまま町長室を強制退出となってしまった。

 うるさいのがいなくなって、部屋の中が一気に静かになる。

 すると、ザルドンの覇気がかなり強烈なものである事がはっきり感じ取れるようになった。

 それを思うと、モリーのやつも強さはあったんだろうな。ただ、性格に問題があったからこの場にいられなかったというわけだ。

 モリーを退出させ、改めて俺たちと向かい合うザルドン。


「先触れは頂いておりましたので、やって来るのをお待ちしておりました。早速、私自ら街の案内をさせて頂きましょう」


 さっさとモリーを追い出していたので難しい性格かと思ったが、自ら宿場町の案内をしてくれるらしい。

 ザルドンの案内で宿場町に繰り出す俺たち。

 宿場町の住民や作業員たちは、意外と気さくにザルドンに挨拶をしている。かなり慕われているようだ。


「私はそもそもリザードマンたちのボスをしていたのです。そのこともあって、慕われやすいのですよ」


 ザルドンは照れくさく話している。図体はでかいものの、性格は少々可愛いところがあるようだ。

 宿場町を案内してもらっていて気が付いたのだが、事前に城でキリエたちから聞いていた通り、根本的な街の作りは同じようだ。


 ひと通りの案内が終わって、俺たちが町長の屋敷に戻ろうとしていると、沼の方からなにやらはしゃぐ声が聞こえてくる。


「何でしょうかね。ずいぶんと楽しそうですが……」


 ザルドンも気になるらしく、しきりに顔を向けている。


「申し訳ございません、魔王様。ちょっと寄り道はよろしいでしょうか」


「ああ、構わないぞ」


「ありがとうございます」


 ザルドンの要求を聞いて、俺たちはその声がする方向へと向かっていく。

 向かった先で目にしたものは、魚を釣り上げてはしゃぐ子どもたちの姿だった。大人の姿もいくらか見える。


「これは……、一体何をしているのでしょうか」


 不思議そうに驚いているザルドン。

 その姿とは対照的に、俺は気まずそうにゆっくりと視線を外していく。カスミにジト目を向けられているのがよく分かる。


「魔王様? もしかしてご存じなのですかな」


 俺たちの様子に気が付いて、ザルドンが問い詰めてくる。うん、近い近い。


「いや、あの子どもたちが持ってる棒切れだけど、俺が作ってやったんだ」


「なんと?!」


 うん、だから顔が近いって。


「ふむ……。魚は水に入って獲るものばかりだと思っていましたが、こういった方法もあるのですね。ふむむむ……」


 ザルドンが思いきり悩み始めた。一体どうしたというのだ。

 かと思えば、突然勢いよく顔を上げた。


「いやぁ、さすがは魔王様。これならばこの宿場町にこれからやって来る人たちも魚を楽しめるというものですよ。わはははは」


 いきなり大口を開けて笑い出すので、思わずびっくりしてしまう。一体どうしたというのだろう。


「これは、魔王様が考案された釣りというものに、可能性を見出してしまったようですな」


「こうなるとザルドン様は止められませんよ。責任取って下さいませ、魔王様」


 バフォメットは大笑いしているし、カスミは俺を突き放してきた。


「おい、工事責任者をすぐに呼んできなさい。ここに釣りをする場所を作りますよ」


 おっと、すぐさま行動を始めてしまったぞ。なんだこのフットワークの軽さはよっ!

 それにしても、魔族ってのは本当に釣りってのを知らなかったんだな。人間たちならある程度やっているんだがな。これも人間と魔族の文化の違いってやつなんだろうな。

 俺は、ザルドンの動きを見ながら、しばらくそのままじっと動向を見守った。

 結局、町長の屋敷に戻ったのはそれからずいぶん後で、すっかりあたりが暗くなってからだった。

 あまりにも待たせてしまったことで、ザルドンは土下座までして謝罪をしていた。

 こうして、二番目の宿場町での視察は終わりを告げたのだが、食事中もずっとザルドンは謝罪してばかりだったので、食事の味がよく分からなかったぜ。


 翌日、ちょっと不安は残ってしまったものの、そのまま三つ目の宿場町を目指して俺たちは二つ目の宿場町を経っていったのだった。

 なんか精神的に疲れたぜ。

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