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異世界転生者のTSスローライフ  作者: 未羊
第一章 大陸編

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第89話 転生者、懐かしい人に会う

 落ち着いて魔王城で悠々と過ごしていると、久しぶりに外部から人間の訪問者が現れた。

 街道を整備したこともあって、前回の訪問からそんなに日数が経っていない。オークとドライアドたちが一直線に整備してくれたからな……。

 一瞬遠い目をした俺だったが、改めてやってきた人間たちの表情を見る。すると、怯えたように震える様子が見受けられた。

 となると、先日送り返したおっさんの事を受けてやってきた人間たちなのだろう。様子を見る限り、脅しておいたかいがあったというものだな。


「よく来たな。俺に一体何の用だ」


 足を組んで肘をつき、実に悪者みたいな態度で人間たちを出迎える俺。

 内心かっこいいなぁと思っていたら、キリエからジト目を向けられていた。心の中を読まれたかもしれないな。

 とはいえ、今は人間たちに変な行動を取らせないことが重要だ。前魔王を討ちとったメンバーのうち、二人が今は魔王側にいるのだからな。力関係ははっきりさせておくに越したことはない。

 なにせ、先日来たおっさんは、俺の部下に無礼を超えた態度を取っていたからな。せめてお互いの立場が対等であると認識させないと、こういうことはまた繰り返されるだろう。


「はい、先日魔王領へと出向いた薬師たちの状況を確認をしに参りました」


 一行を代表する男が俺の質問に答えている。

 その話を聞いた俺は、キリエに話を振る。すると、キリエが状況の説明を始めた。


「ピエラ様が連れてこられた薬師の方々のお話ですね」


 キリエの言葉に、男がこくりと頷く。それを確認して、キリエは話を続ける。


「大変真面目な方々ですね。私の連れてきました魔族側の薬師たちともとても協力的で仲良くやっています。素材がかなり豊富にそろっておりますので、それは毎日充実した様子でございます」


 薬師たちの近況を聞いて、ほっと胸をなでおろす男たち。

 正直、魔族と一緒にやっていけるかという気持ちが王国からやって来た男たちの中にあった。それは長く続く人間と魔族の歴史から見れば当然だろう。

 だが、現実はまったく違っていて、俺が見る限りはケンカのようなトラブルは起きていない。むしろ、意見をすり合わせている感じだった。


「せっかくですから、様子を見ていかれますか?」


 キリエが男たちに話を持ち掛けると、王国の使者たちはお互いの顔を見て話し合っていた。すぐには結論を出すわけにはいかなかったか。

 結局、話し合いの結果、薬師たちの様子を見ていくことになった。

 キリエが案内して、俺が人間たちの後ろについて行く。

 俺はすぐにその違和感を感じ取る。

 キリエは最短ルートで薬師たちのところへ向かっていないからだ。


(なるほど、ウネのいる庭園を見せるわけにはいかないから、別ルートでの案内をしているってわけか)


 その意図をすぐに理解する。

 キリエが最短ルートを避けた理由は主に二つだ。一つはドライアドのウネ、もう一つがウネの育てる植物だ。ピエラがあれだけ反応するんだからな、知ってるやつがいれば大騒ぎだろう。

 なにせ、あのピエラが青ざめて大騒ぎするような薬草なんだもんな。

 俺はいろいろと頭の中で起きただろう騒ぎを想像しながら、キリエの後をついて行った。


 そうしている間にも、俺たちは薬師の詰所へと到着する。庭園ではない方から訪れるのは初めてだけに、ちょっと新鮮な気分である。

 だが、すぐさま鼻をつく薬草などのにおいに思わず鼻が曲がりそうになってしまう。


(うう、忘れてたぜ。鼻が利くから、みんなが平気でも俺には強烈すぎる)


 俺は慌てて魔法でにおい対策をする。それにしてもなんでみんな平気なのだろうか。


「急ごしらえではありますが、設備としては十分揃っております」


「しかし、今さらではあるが、見せても構わなかったのかね?」


「ええ、構いませんよ。揃えられるものなら、揃えて下さいませ」


 氷の笑みが人間たちを襲う。本当にキリエはこういう時ばかりは遠慮がない。俺まで震えちまったじゃねえか。

 俺たちが部屋に姿を見せると、薬師たちが珍しく全員が動く。


「魔王様!」


「トータレ侯爵様!」


 魔族は俺を、人間たちは男の名前を呼ぶ。

 うん、その名前なんか聞き覚えがあるぞ?

 そうだ、トータレ侯爵家って、コングラート侯爵家とも交流のある家じゃねえか。追放された上にいろいろあったせいで、すっかり忘れてたよ。


「その顔、私の事を思い出してもらえたようですね。セイ・コングラート侯爵家令息、いえ、今はただの魔王セイですかね」


「い、いやぁ……。申し訳ありません。いろいろあり過ぎたせいですぐに思い出せませんでした、はい……」


 目を逸らしながら詫びを入れる俺。

 こうなるのも仕方がない。親父であるコングラート侯爵と一緒に、小さい頃からいろいろスパルタをやられてきた相手だからな。

 だが、今の俺があるといっても過言じゃない人物の一人であることは間違いない。


「はあ……。まさか、あなたを送り込んでくるとは、王国は何を考えているんですかね」


「さあ? おそらくは私ならば魔王を御せると考えたのでしょうね。まったく、甘い人たちですよ」


 俺の質問に、トータレ侯爵は大声で笑っていた。

 こうして、まさかの人物と再会した俺は、最初の威厳に満ちた態度はどこへやら、すっかりおとなしくなってしまったのだった。

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