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異世界転生者のTSスローライフ  作者: 未羊
第一章 大陸編

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第53話 転生者、ドラゴンを圧倒する

 俺はぽんぽんと厄災に向けて石を投げつける。

 様子を見かねたキリエが声を掛けてくる。


「魔王様、あれを引きずりおろせばいいのですね」


「ああ、頼めるかな?」


「お任せを。魔王様に恐れをなす存在など、私にとっても大したものではございません」


 俺の魔力にびびって飛び上がったままの厄災など恐るるに足りない。キリエはそういわんばかりに堂々と魔法を放とうとしている。


「切り裂け、疾風の刃。エアブレイド!」


 どうっという凄まじい轟音とともに、空に浮かぶ厄災に向けてキリエの魔法が飛んでいく。


「ふん、ちょこざいな!」


 だが、その強力なはずの魔法は、あっさりと厄災のしっぽによって弾かれてしまった。

 上空でよく見えないが、ドヤ顔をした気がしたので、ちょっとイラッとする俺とキリエである。


「悪しきものを穿て、神の慈悲よここに。レインボーソード!」


 ところが、間髪入れずにピエラの魔法が放たれる。

 ピエラは幼い頃からの特訓のおかげでほぼ全部の属性魔法が扱えるんだ。

 詠唱が聞こえたとはいえ、死角から魔法を放たれてはさすがの厄災も対処が遅れる。なにせピエラが使った魔法は上空から光の剣が降り注ぐ魔法だからな。


「くっ、そこの魔族の魔法はおとりか!」


 空からまんべんなく降り注ぐ虹色の剣が、非常にも厄災の体を掠めていく。


「ぐあああっ!」


 あの状況から躱そうとしているのはすごいんだが、体がでかすぎるので当たる当たる。

 さあ、耐え切れずに降りてこい。

 俺は厄災の急降下に備えてぐっと構える。


「許さぬぞ、お前ら……!」


 ところが、厄災は上空に留まったままぐっと頭を持ち上げた。これはブレスの構えだ。


「この程度の傷、なんて事はない。我が耐えられぬようになる前に、お前らを消し炭にしてくれる!」


「ピエラ!」


「任せて、セイ!」


 俺はピエラにブレスを防ぐ魔法を展開するように指示を出す。名前を呼んだだけで伝わるあたりが、さすが幼馴染みといったところだ。

 だが、それと同時に俺はなぜか嫌な予感をひしひしと感じていた。

 何かがおかしいのだ。


「キリエ、念のためにブレスからワンテンポ遅らせて、ブレスの方向に向かって魔法を放ってくれ。嫌な予感がする」


「承知致しました」


 俺の支持にキリエはこくりと頷いた。

 それと同時に厄災からブレスが放たれる。先程とは違う黒い炎のブレスだった。

 ピエラは同じように防壁を展開してブレスを防ぐが、なんとも言えない不安感はまだ拭えない。


「今だ、キリエ!」


「エアブレイド!」


 黒いブレスに向けてキリエの魔法が放たれる。

 それと同時にバンと何かが弾かれる音が聞こえる。


「そこだ!」


 俺は拳に魔法をまとわせて、防壁から飛び出していく。


「ちょっと、セイ!」


 俺の行動に慌てふためくピエラだが、そんな事に構わない俺だ。


「おりゃあっ!!」


「ぐはっ!」


 俺の拳に確かな手応えが感じられる。

 それを示すかのように厄災のドラゴンの苦痛の声が響き渡る。

 ドスンドスンと何度となく弾む音が聞こえてくる。俺の一撃はそのくらい強力なものだったのだ。


「バカな……。なぜ攻撃が読まれた……」


 派手にぶっ飛ばされた厄災のドラゴンは、苦痛に苦しみながら、ゆっくりと顔を上げている。


「分からないな。ただ、野性的な直感が走ったんだ。ブレスを煙幕代わりに突っ込んでくるじゃないかっていうな」


「なん……だと……」


 驚きを隠せない厄災のドラゴンである。作戦を見抜かれていたので仕方がないだろう。


「俺の魔力を警戒していたから、不意を突いてくるというのは読めてたのもあるな。ただあの時は失念してたから、獣人の勘様様ってところだったぜ」


「ぐぅ……」


 俺の言葉に、厄災のドラゴンは項垂れていた。


「……にしろ」


「はあ?」


「好きにしろといったのだ。まさかたった三人相手に手も足も出ぬとは思わなかった。完全に我の負けだ」


 なんと驚いたことに、魔族の脅威であるはずの厄災のドラゴンが勝負を投げた。これにはキリエの開いた口が塞がらなかった。


「じゃあ、そうだな……」


 好きにしろと言われた俺は、その対処を考える。そして、俺が出した結論はというと……。


「俺の配下になれ。好きにしろというのなら、それでも構わないだろう? 今さら発言を翻すのか?」


「ぐぬぅ……」


 痛いところを突かれた厄災は、苦虫を噛み潰したようにその身を強張らせた。


「我に二言はない。よかろう、その提案、受け入れようではないか」


 苦渋の決断といった感じのいいっぷりではあるが、どうにかこれで解決しそうだな。

 となると、次はあれかな。


「魔王様、どうかなさいましたか?」


「いや、配下に置くなら、こいつに名前を付けておこうかなと思ってな。厄災とかドラゴンとか、他の魔族に警戒感を与えてしまうからな」


「それは確かにそうかも知れないわね」


「私もそれがよろしいかと思います」


 キリエとピエラの同意もあった事で、三人で必死に名前を考える。

 その結果、俺の考えた名前が採用されることになり、俺は厄災のドラゴンへと向かって手をかざす。


「お前の名前は、デザストレだ。これからはよろし頼むぞ」


 俺がそういった瞬間、デザストレと名付けられたドラゴンの体が急激に光り始めたのだった。

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