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異世界転生者のTSスローライフ  作者: 未羊
第一章 大陸編

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第44話 転生者、本格的にスローライフを考える

 前世は社畜、今世も優れた力の持ち主として魔王討伐と、散々こき使われてきた。

 現在は魔王として、他人を扱う側に立っている。正直使われるばかりでこういうのは初めてだから完全に手探り状態だった。


「はあ、魔王なんてものになっちまったが、俺は正直言って、田舎暮らしがしたかったんだよな……」


 玉座に座らされた俺は、足を組んで肘をついて愚痴をこぼしていた。

 すると、俺に付き添っているキリエがぴくりと反応していた。


「田舎暮らしとは何ですか」


 そこの説明を求められるのか。

 今の気分じゃ説明するのも面倒だが、キリエは俺付きのメイドであると同時に魔族の参謀だ。なので、説明しておいた方が得策と考えて、俺は田舎暮らしについて知っている限り説明をしておく。

 それを聞いたキリエは、ちょっと目が輝いているように見えた。


「何のしがらみにもとらわれず、自給自足の悠々自適な生活ですか。それはいいですね」


 キリエがここまでの反応を示すとは思ってもみなかった。

 思えば彼女は親の命令で魔王の直属の部下になってこれまで働いてきたのだ。時には自分を押し殺してまで働いてきたのだろう。

 俺の言う田舎暮らしに興味を示したのは、その反動の現れといったところなのかもしれないな。

 しかしだ。俺は魔王となってしまったので、普段は城から離れるのは難しいだろう。先日までだって、視察だのなんだとと理由をつけていたからな。

 そこで、俺はキリエに改めて相談を持ちかけてみることにした。


「それでしたら、魔王城の中をお好きお使いいただければよいかと存じます。魔王城は魔王様の持ち物ですし、歴代の魔王も好き勝手にいじっておられましたから」


 そしたら、こんな返答があった。どうやら魔王城は魔王が好きに改造できるらしい。これはいい事を聞いたものだ。

 キリエがそういうのなら、魔王城の適当な場所に畑でも作らせてもらうかな。田舎暮らしといえば畑は欠かせないからな。

 しかし、まだ問題がある。先日カスミによって城の案内をしてもらったが、まだ全部を見せてもらえたわけではないからだ。畑を作れるような場所が把握できていないってわけだった。

 というわけで、俺はキリエに魔王城内の案内を頼むことにした。城の中はある程度カスミと一緒に回ったので、城の外の城壁内を中心に俺たちは巡っていく。

 こうやって歩いていると分かるのだが、魔王城の中はかなり広い。屋根のない部分もかなり広くて初めて見る光景ばかりだった。


「これだけ広いと、いろいろ好き勝手できそうだな」


「そうでございますね。私は城の中はかなり把握している方ですけれど、そのほとんどが使われる事もなく、ご覧の通り荒れ放題になるばかりでございますからね」


 キリエが手で指し示した方向を見る俺。そこには雑草が花壇を覆い尽くす、まるで廃墟のような光景が広がっていた。


「庭師、居ないのか……」


「そうですね。前魔王様がその辺りを全員追い出してしまいましたからね。必要でしたら、招集を掛けますが」


「そうだな。追い出された人たちを中心に集めてくれ」


「畏まりました。では、早速ドライアド族に打診を取ってみます」


 そういったキリエは部下を呼び出して手紙を認める。屋外だというのに魔法で手紙を書いてしまうあたり、さすがは参謀たるキリエだと思う。これほど頼りがいのあるメイドがいるというのだろうか。


「では、魔王様。畑はこの辺りにするということでよろしいでしょうか」


「ああ、そうしてくれ。それと育てられる野菜の種類を教えてくれないか?」


「野菜ですか。野菜もよろしいですが、薬草も育てられますよ。広さもございますし、この際いろいろやられてみてはいかがでしょうか」


 キリエの提案に、俺は面食らっていた。

 畑といえば野菜というイメージしかなかった俺は、実に衝撃的な提案を受けたのである。


「そっか、薬草という手もあったな。どうもその辺りは前世のイメージに引っ張られてしまう」


 俺は尻尾をゆっくりと揺らしながら、ぐっと考え込んでしまった。


「その前世とやらが何か分かりませんが、畑といえば植物を育てる場所です。野菜も薬草も植物ですから、普通は両方を思い浮かべるものですよ」


「いや、すっかり失念していたよ。さすがキリエだな」


「恐縮でございます」


 素直にキリエを褒めると、淡々と軽く頭を下げて反応している。さすがは参謀でメイドなだけある。どんな時でも冷静な態度が取れるのだ。


「育てる植物ですが、ドライアド族が到着されてから検討されてもよいかと存じます。植物に関する知識でドライアド族に並び立てるのはアルラウネ族くらいですからね」


「分かった、そうさせてもらうとするよ。貴族暮らしだったから、その辺の知識には疎いからな」


 俺は素直にキリエの提案に従うことにした。

 しかし、だからといって何もしないのは気が引ける。

 せっかくだからと、俺はキリエと一緒に荒れた庭をきれいにすることにしたのだった。

 俺が獣人パワーで草を引き抜き、キリエが魔法で整えていく。

 しばらくすると、さっきまで荒れ放題だった庭がきれいに蘇ったのだった。


「よし、これで後はドライアド族が来るのを待つばかりだな」


「左様でございますね。これならきっと、彼らもやりがいを感じてくれるでしょう」


 きれいになった庭を前に、俺たちはちょっとした高揚感を感じているのだった。

 ドライアド族っていうのはどんな連中なのか。俺の当面の楽しみが一つ増えたのだった。

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