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【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第一章 Xパラダイス

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5 ブイブイ言わせるように、焼酎を



          ******



 ――と、ここまでが、エッチの振り返るところである。

 一連の、話を聞いて、

「うっわ……、本当にひどいな。その、エッチ……」

「ああ……。本当に、ひどいだろ」 

 と、先ほどまで興味津々そうに聞いていたカジの顔が、ドン・ヨンファと同じく、どこか虚無になりかける。

 友人が、続けて聞いてくること、

「それで? ヨンファ? 君らは、いったい、どんな関係なんだ? 付き合っているのか?」

「いや、そういうわけじゃないけど、さ」

「いやいや、そういうわけじゃない、とは? どういう、わけだよ? わざわざ、ふたりでリゾートに行ったりするくせに」

「おいおい、いっしょに遊んでいるだけで、イコール、付き合っているにはならないだろ? 童貞かい、それは? 世には、愛人やセ・フレ、ときどき男女の友情もあるだろ?」

「まあ、それはそうだな」

 と、友人は、コーヒー片手に納得してみせた――



          ******



 ――ここまで、マトリョーシカのように回想して、時間軸は、ようやく夜の屋台へと戻ってくる。

「何だ? それで? その【Xパラダイス】ってとこに、行ってくるわけかよ? お前らは?」

 と、キム・テヤンが、しかめた顔をする。

 その手元で、


 ――ジュ、ワァァッ……


 と、鉄板で、何かを焼きながら。

「うん。そうだけど」

 ドン・ヨンファが答えると、

「けっ、何が、『うん。そうだけど~』だ、まったく」

 と、キム・テヤンが舌打ちする。

「まあ、『そうだけど』としか、言いようがないんだけど」

 とここで、パク・ソユンも入ってくる。

 同時に、もう何杯目か分からなくなった焼酎のグラスを空にして、


 ――スッ、コォンッ――!! 


 と、音を立てて置いた。

「フン……。それにしても、どこにあるか分からない島に行くって、何だってんだ? ふざけた話だな。まあ、お前たちみてぇな、ふざけた連中にゃ、ふさわしいっちゃ、ふさわしいけどよう!」

「は? ヨンファならいいけど、私まで、【ふざけた人間】扱いしないでくれる?」

「い、いやっ、僕も、そんなふざけてないさ、」

「けっ……!! 何が、『そんなふざけてないさ』だ? お前は、存在自体がふざけてんだよ!!」

 と、パク・ソユンとドン・ヨンファが、キム・テヤンを間に挟んで互いに応酬しあう。


 そうしているところへ、

「しか、し……? 確かに、その【Xパラダイス】っていうのが、どこにあるのか分からない島にあるってのは……、気にするなといわれても、気にはなるな」

 と、いちおうグループのリーダーであるカン・ロウンも、会話に入ってきた。

 普段から、あまり変わらない表情に、なおかつサングラスをしていることから余計に表情を読みにくいカン・ロウンである。だが、どこか、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりを心配しているようにも見える。

 そんな、カン・ロウンの言葉と、回ってくるアルコールの酔いとともに、ふと置いていたスマホの画面を見るのであれば、


 ――ジュワァァッ……


 と、鉄板の音がする中、背景に映る【竹の回転螺旋】のCGアートが、どこか不気味に感じられるだろう……

 そこへ、

「まあ? 行ってみれば、分かるんじゃない? とりあえず、もう明日行くのは確定だし」

 と、カン・ロウンの言葉とは時間差を開けて、パク・ソユンが言った。

 乾いたグラスを持ち上げつつ、

 ――トク、トク……

 と、自分で焼酎を注ぎながら。

 それを見て、

「おいおい? そう言いながら、まだ飲むのかよ? お前は」

 キム・テヤンが『やれやれ』と言うも、パク・ソユンは、グイグイとグラスを空にしていく。

 そうして、また、


 ――スッ、コンッ――!!


 と、空にしつつ、

「は、ぁ……。飲んだ、飲んだー」

 などと言いながら、パク・ソユンはもう一杯、グラスに焼酎を注ぐ。

「おい? 飲んだ、とは?」

 キム・テヤンが、つっこむ。

 なお、そんなパク・ソユンを横にしながらも。

「……」

 ドン・ヨンファは、ただ黙って見るだけにしていた。

 もし、自分がつっこみを入れてしまうと、また、首に【チェーンソー】を突きつけられたり、何をされるかわかったものでない。

 まあ、賢明な選択だろう。

 その間にも、パク・ソユンはブイブイ言わせるように、焼酎をガソリンのように飲みながら、


 ――スッ、コンッ――!!


 と、今夜は何度目かの、乾いた杯を天板に置いた。

 そんなふうに、アルコールを交えつつ、

「は、ぁ……、ん……? ま、あ……? そんな、特に変わった……、事は、起きないでしょ? 私たちに、限って?」

 と、やはり酔いが回ったのか、すこし垂れた首を起こしながらパク・ソユンが言うも、キム・テヤンが、

「いや、お前たちだから、何か起きそうなんだが――」

 


          ******



 ――と、ここまで来て、ようやくのようやくのこと、島のほうへと場面は戻ってくる。

 すなわち、【この中の中で――】と、よくもまあ言ったもので、ややこしくも入れ子構造になった回想だったわけである。

 それはさておき、

「ふぅ……」

 ドン・ヨンファが、ため息するとともに、足を止めた。

「やれやれ……、その矢先の、【これ】、か――」

 ふたたび、“見上げて”みた。

 そこには、


 ――ゴゴゴ、ゴゴ……


 と、やはり、【ヒトガタの建築】がそびえていた。

 まるで、夢とうつつと、見紛うような光景。の中、

「まあ……、とりあえず、行くわよ。これ以上、ボーッ……としてても、仕方ないし」 

「あ、ああ……。そうだね」

 と、パク・ソユンが、ドン・ヨンファに促した。

 そうして、ふたたび足を進めながら、

「……」

 と、パク・ソユンもまた、この謎のヒトガタ建築を見上げてみた。

 その、髪の部分は、


 ――ゆる、り……


 と、やはり、【二重螺旋】が回転するようにも見える。

 そうして、微かに【ナニカ】の予感がしながらも、ふたりは、この【Ⅹパラダイス】に足を踏み入れていく。

 いまは知る由もないが、そこで、信じがたいことが起こるのであるが――

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