表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第七章 島からの脱出

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/45

44 うん。ごめん。たぶん、若干、バカにしてる


「うん。たぶん、中二病。別に、“神々に与えられた制約”を超えるとか、たぶん、素晴らしくも何ともない」

 パク・ソユンが、答える。

『たぶん』を、二回使って。

 さらに、続けること、

「何か、日本の、昔のお坊さんが、こんなこと言ったらしいんだけど、さ? 人間の本質ってのは、皆、“クソ袋”なんだって」

「クソ袋……、ですか?」

 と、秘書の女が、すこし顔をしかめて聞きかえす。

「うん。たぶん、“ウンコを溜める袋”みたいなもんだって。まあ、何だろう? あの、ニートが自分を、ウンコ製造機とかいう的な」

 と、淡々と答えるパク・ソユンに、

「その……、そんな、“醜悪な本質”を課した神に、憤りを、感じませんか? パク・ソユン様?」

 と、秘書の女が、また共感を求めて聞いてきた。


 だが、パク・ソユンは答える。

「はぁ? 別に、それで、いいんじゃない?」

「それで、いい――、とは?」

 秘書の女が、聞き返すと、 

「うん。まあ、美しく飾ろうが、美しい理想を語ろうが、高度なIT社会を作ろうが、シンギュラリティとかいうのに近づこうが……、所詮は、人間は、クソ袋――。古今東西、そんな人間の愉しみってのは、おおむね、『食う飲む、喋る歌う、打つ』くらいしかないわけで、」

 と、まだ話し続けるパク・ソユンに、

「いや、それで――」

 と、秘書の女が思わず割り込むように、「それでいいのか?」と、口を挟もうとするも、



「――でも、それだからこそ……、人間ってのは、いいんじゃない?」



 と、その先に手を打つように、パク・ソユンが言葉を置いた。

「いや、――ですが、パク・ソユン様、」

 秘書の女が、まだ説得する。

 その様子は、どこか調子が少し崩れかけているようにも見える。

 そして、その時、



 ――ブ、ッ……


 と、何か、“音”が響くとともに、

「あっ……? ごめん、オナラ、出ちゃった」 

 と、パク・ソユンが、脂汗と血が滴りながらも、正直に申し立てた。

 その傍ら、

「は――?」

 と、ドン・ヨンファが、シュールな顔でポカンとする。

 まあ、そんな顔をするのも、無理もないだろう。

 これまでも、クリーチャーを目にしても無反応であったり、危機的状況にも関わらずカンチョーをしたり、便意を聞いてきたりと、“異次元クラスに緊張感の無い”パク・ソユンである。

 だが、ここにきて、屁をこいて見せるなど、あまりにも予想外の出来事であった。


「何、で……? オナラなんか、してんの? ソユン?」

 ドン・ヨンファが、引きつり気味の顔で聞く。

「はぁ? まあ、人間だから、出るときは、出るんじゃない?」

 パク・ソユンが、少しイラっとした様子で答える。

「その……、わざと……、じゃないよね?」

「さあ? わざとじゃないかもしれないし、ちょっとは、わざとかもしれない――」

「何だよ、わざとかもしれないって……、」

 ドン・ヨンファが、つっこみたくも呆れる。


 まあ、そのドン・ヨンファのことは、さておき――

 肝心なのは、まだ話の途中の、秘書の女のほうである。

 真剣に話をしようとしていた矢先に、屁をこくなどということを、されたわけであるから、

「――あの……? 人が、話をしようとしているときに、放屁をするなど……、どういう神経を、しているのですか……?」

 と、これまで感情をあまり出さなかった秘書の女が、どこか、怒気に震えはじめる。

「だから、ごめんって、言ってるじゃん。クソ袋の話をしてただけに」

「あの、ですね……? 貴女は、わたくしを、馬鹿に、してるのですか?」

「うん。ごめん、若干、バカにしてる」

 と、怒りはじめる秘書の女に、パク・ソユンが「ごめん」と言いつつも、逆なでするようなことを言う。


「(そ、ソユン……! ま、また、おちょくるようなこと言っちゃダメだって――!)」

 ドン・ヨンファが、ハラハラして小声で注意するも、

「何、ですか? その、若干バカにしてるって……?」

「はぁ、ごめん。じゃあ? もうちょい、ちゃんとバカにしてあげよっか? はい、バーカ、バーカ」

「だ、からッ!! 何で!? 敢えて喧嘩売るの!?」

 と、おかまいなしに、パク・ソユンは秘書の女を煽る。

 その刹那、


 ――ブッ、チンッ――!!


 と、今度は屁の音などではなく――!! 秘書の女の堪忍の尾が完全に切れる音がした!!

 その同時!!


「いい加減にしろってんだよッ!! この下品なクソ女がッ――!!」


 と、ブチ切れた秘書の女が、パク・ソユンに襲いかかる!!

 先の、ユスリ・タカリと同じ能力を有しているのか――!? 

 瞬間移動のようにしてパク・ソユンに迫り、その手を“かざさん”とする!!

「そ、ソユンッ――!!」

 ドン・ヨンファが、慌てる。

 先に、パク・ソユンは大きなダメージを負いながらも、何とかユスリ・タカリを倒したわけである。

 そんな状態もかかわらず、同等の能力を持っているかもしれぬ秘書の女が襲いかかるという、まさに危機的状況――!!

 しかし、その時、


 ――ボワッ――!!


 と、突如!! 空間に生じたナニカ――!!

「ッ――!?」

 秘書の女は気がつき、咄嗟に動きを止める!!

 眼前の、空間の間隙から、


 ――ドド、ドドドッ――!!!!!


 と、先のドン・ヨンファの植物とは比較にならないほどの!! 数十倍にも強力な魔界植物たちが姿を現し、まさに鉄砲水の如く――!!

 怒涛の勢いで秘書の女へと襲いかかる!!

「ちィィッ――!!」

 秘書の女が感情をむき出しにした舌打をしつつ、

 ――ザ、シュッ――!!

 と、大きく後方へと回避する!!

 それと同時、


『ふむ。そろそろ、その辺にしておくのだ。貴様――』


 と、妖狐の、神楽坂文の声がした。

 すなわち――!!

 いま、異界にいる妖狐だが、異なる世界線を超えて魔界植物を召還し、ふたりに助け差し伸べたわけである!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ