表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第一章 Xパラダイス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/45

4 すっごい、マグロ


 そのように、【陰謀論】に対する話題に、話がそれながらも、

「しかし、ね……? 話を戻すとね、ヨンファ? この、【トランスヒューマニズム】的な思想というのが、今後の世界にかけて、力を持ちつつあるのは……、確かかも、しれないよ」

「ほう」

 ふたりは、ふたたびコーヒーカップを手にして、

「その手法の中には、【外部から】――、例えば、ハリウッド映画にでもでてくるような、ハイパーメカニックな義手のような【ガジェット】を装着するんだけじゃなくてね……、それこそ、身体の【内部】に働きかけることで、【変化】、【変身】させるような発想の技術というのも、研究されていてね」

「身体の、内部に働きかけて、変化させる――、だって?」

「ああ……」

 と、ドン・ヨンファが確認するように聞き、それに友人が答えようとした。

 その時、


 ――カランコロン♪ カランコロン……♪


 と、まるで不意打ちするかのように、電話の着信音が鳴った。

「うん……? ――えっ? ソユンから、か」

 ドン・ヨンファは、着信の主を確認すると、パク・ソユンからだった。

「おっ? 恋人からか?」

「おいおい、」

 と、茶化す友人に、ドン・ヨンファが「勘弁してくれよ」の顔をする。

「ソユンって、パク・ソユンだろ? あの、DJとモデルをやっている」

「そうだよ。まったく、何の用なんだい? いきなり」

 ドン・ヨンファは友人に答えつつ、『やれやれ』と電話に出てやる。 

「――ん? どしたんだい? ソユン?」

 まず、そう聞くと、

『ねえ? 明後日、暇でしょ』

 と、電話の向こうのパク・ソユンから、そう返って来た。

 こちらの都合を聞くことなく、また、“はてなマーク”をつけた疑問形の心すらない。黙って、『うん』と答える以外の選択肢のない、無言の圧が込められた質問だ。

 その返答の言葉を考えるより前に、パク・ソユンが続けて、

『もし、暇じゃなかったら、さ? 草刈り機で、アンタの首、狩るから』

「い、いやっ、ま、まだ、何も答えてないじゃないか……! ま、まあ、暇を作れるといえば作れるけど……」

 物騒なことを言うパク・ソユンに、ドン・ヨンファが物怖じした様子で答え、

「それで? どんな要件、なんだい?」

『うん、何かさ? リゾートっぽい島の招待状、貰ってさ? たぶん、カジノとかがあるやつ』

「へぇー……。それで? 何て、ところなの?」

『さあ? 【Xパラダイス】って、いうらしいんだけど……、ヨンファ? 知ってる?』

「Ⅹパラダイス……?」

 と、ドン・ヨンファが、首をかしげた。

 見たことも、聞いたこともないリゾートの名だ。

『とりま、まあ、確定でいいわよね。予定変えたら、ほんとに草刈り機で四肢を落とすから――』

 と、そこで、ガチャンッ――!! といわんかのように電話は切れた。

 まあ、スマホだから、ガチャンと鳴るわけないのだが。


 そうして、電話の切れたあと、

「……」

 と、ドン・ヨンファは、突然の嵐に呆気にとられたように、ポカンとしていた。

 そこへ、

「おっ? リゾートで、デートかい? いいねぇ」

「おいおい、良くは、ないよ」

 と、茶化してくるカジに、ふたたびドン・ヨンファが『勘弁してくれよ』の顔をするも、

「またまた、そんなこと言っちゃって。ぶっちゃけ? “あっちの方”は、どうなんだ? ヨンファ」

 と、追求の手を緩めてくることはなく、ふたりの、エッチのほうの事情を詮索してきた。

「どう――? って……」

 ドン・ヨンファが、困惑気味の顔をしつつ、

「すっごい、マグロなんだよね、ソユン」

「マグ、ロ……?」

「ああ。むしろ、冷凍マグロっていってもいいくらいさ。あの、解体される前の、冷凍庫でキンキンに凍ったくらいの……」

「……」

 と、強張った様子で語るドン・ヨンファに、先ほどまでチャラけてたカジの表情も、硬くなってくる。

 そうして、ドン・ヨンファが思い出して話すところは、こうである――



          ******



 ――これは、すこし前のことになる。

 高級マンションにある、パク・ソユンの部屋のこと。

 ラグジュアリーな部屋には、某デザイナーのバッグを彷彿させる、【菱形タイル状のパターンで彩られた白いアート壁】。

 “それ”を背景にして、【錆びついたチェーンソーと蔓バラ】という、およそ趣味は良くないオブジェが佇んでいた。

 そんな、パク・ソユンの部屋のベッドにて、


「……」


 と、裸のパク・ソユンが、ジトッ……とした目を――、まるで、冷凍庫の死んだ魚のような目をして、仰向けに横たわっていた。

 いっぽう、

「……」

 と、ドン・ヨンファのほうも、無言だった。

 ただ、こちらの表情はというと、どこか引きつるように、強張ったものがあった。

 そうして、“コト”を始める。

 ――ギコ、ギコ……

 と、揺れるベッド。

 だが、

「……」

「……」

 と、まさに冷凍マグロというべきか――? まったく動かないし、反応もしないパク・ソユンであり、


 …………、…………


 と、沈黙する空気が漂った。

「ね、ねぇ……? 何か、反応してくれよ? ソユン」

 ドン・ヨンファが、恐る恐る頼んでみる。

 もしかすると、電動マッサージつきベッドが必要なくらい、マグロで何も反応がないパク・ソユンである。

 それに対して、ドン・ヨンファが、コトを再開する。

 すると、

 ――コト、コト……

 と、動きに合わせて、

「あ、ふ……、あふ……、」

 パク・ソユンが、死んだ魚の目のまま、声だけ出した。

「……」

 ドン・ヨンファが、唖然として、ふたたび沈黙する。

 こんどは、驚愕と虚無とが混じった表情で。

「き、気持ち、いいのかい?」

 恐る恐る、ドン・ヨンファが聞くも、

「さ、あ……?」

 と、答えるパク・ソユンだが、マグロ・モードはそのままに、挙句にはタブレット開き、いつものグロ動画を見ていた。


 そんな、シュールなエッチは続きながら、

「あ、ふ……、あふ……」  

「も、もっと、楽しそうにしようよ? ソユン?」

「う、ん……」

 と、パク・ソユンは答えつつも、

「あ、ふ……、あ”、ふラ”〇ク……!」

「ちょっ――!? タンマ!!」

 と、急に発せられた、某米国産の白鳥のように、ふざけたパク・ソユンに、ドン・ヨンファがガバッ――!! とたまげた。

「ん……? 何で? 笑かそうと思ったのに」

「いや、『楽しそうに』の、種類が違うって……、ソユン」

 と、ナチュラルな顔で言ってくるパク・ソユンに、ドン・ヨンファは、どうしようもない顔でつっこむより他なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ