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【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第六章 立て直しと再対決

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38 お前がッ!! その、ドラえもんみたいなナニカなんだよッ――!!


 そのようにして、とりあえず、こちらに妖狐が来れないという話は分かった。

 そのうえで、

「じゃあ……? 僕たちだけで、どうにかするしか、ないのかい?」

 と、ドン・ヨンファが妖狐に、改めて問う。

『まあ、そういうことに、なろうな――」

「そ、そっかぁ……」

『ただ、せめて……、貴様たちの異能力を、少し補助してやるくらいは、できなくはないが』

「あ、ああ……、ありがとう。それだけでも、助かるよ」

 ドン・ヨンファと、妖狐が話していると、

「それで、さ? タヌキ? “あいつら”の、ユスリ・タカリの力っていうは、どんな感じのものか分かる?」

 と、パク・ソユンが、間に入って聞いてきた。

 なお、相変わらずキツネでなく、タヌキもしくはドラえもん呼ばわりである。

 たぶん、意地でも、キツネと呼ぶつもりはないのだろう。


 それはさておき、妖狐が答える。

『ふ、む……? そう、だな……? 直接、私が見てないから、何とも言えないが……、まるで、“ドラえもんみたいなナニカ”のような、摩訶不思議な力ではあるな』

「「……」」

 聞いて、ふたりはフリーズして、仏頂面のような顔をする。

 その心は、


((お前がッ!! その、ドラえもんみたいなナニカなんだよッ――!!))


 と、ふたりは、そうつっこみたかった。

 そんな、つっこみたい衝動は堪えながらも、こんどは、そのドラえもんみたいなナニカである妖狐は続けて、

『しかし、どこで、手にしたのだろうな? なかなかに、大した能力だ。ちょっとした邪神や、魔人クラスに匹敵しかねないほどの――』

「どこで、手にした――、だって……?」

 と、ドン・ヨンファが怪訝な顔をし、

「……」

 と、パク・ソユンが無言ながらも、反応した。

『ふむ。ちょっと、はっきりしたことは言えないが……、いま、貴様たちの電話を通じて、現場の“観察”をさせてもらっているが、な……、おそらく、秘書の女と同様に、そのユスリ・タカリとやらは、あくまで、“人間”であってな――』


「にっ、人間――!?」


 と、ドン・ヨンファが、衝撃のあまり、

「――だって……?」

 と、無意識にも呼吸を挟み、“二段階で驚いて”みせた。

 妖狐が、それに答える。

『ああ。私の観察が、間違いなければ、な……、ヤツは人間だ』

「はぁ? あれが、人間なの?」

 と、パク・ソユンが、眉をひそめるように言う。

『まあ、言って、貴様たちも――、普通の人間からみたら、結構な異能力を使っているだろうに』

「ま、まあ、それは確かに」

 と、妖狐の言葉に、ドン・ヨンファが頷く。

 確かにの確かに、毒をものともせずに、ギンピギンピをものともせずに食ってみたり、チェーンソーや草刈り機、はたまた係留ロープを召還して見せたりと――、このパク・ソユンの異能力だけをとってみても、まあまあけっこう人間離れしているだろう。


 また、妖狐が、

『さて、続けると、な――? ユスリ・タカリとやらの力は、おそらく、超常的な力で以ってして、空間を、物体を“変形させる力”なのだろ?』

「まあ、言うまでもなく、それ以外にないじゃん? タヌキ」

『フン……。まあ、そう、せっかちに話を急ぐな。続きが、あってな――』

「続き――? かい……?」

 と、ドン・ヨンファが聞き、

『ああ……。その、ユスリ・タカリ単体の能力もそうだが……、この島自体が、“その力”を発動させるための、云わば、“場”になっているようでな』

「場――?」

 とは、パク・ソユン。

『ふむ。妖力で感じ取れる範囲で“見た”ところ、ユスリ・タカリ単品の能力自体は、それほどは強くはない……。だから、島自体が、何か、その力を増幅して媒介するような場になっていてな――。それで、部屋にいた客連中が、恐らく。いっせいに“変形させられた”のだろう』

「は、ぁ、」


『そして、補足するとな――、このユスリ・タカリの能力というのは、それほど強くはないと言ったように、ある程度、万能というわけではない。回避できたり、遮蔽したりできるうえ……、それに、貴様たち自体が、ある程度の耐性があるように、だ――』

「ああ? それで、僕たちは、何もなかったってことかい?」

『ふむ。そのとおりだ』

 妖狐はドン・ヨンファに答えつつ、こんどは、パク・ソユンに向かって、

『ただし、だ――、ソユン』

「は?」

『貴様は、先ほどの――、ヤツの攻撃で、腕にヒビが入りかけているな?』

「はぁ、やっぱし」

「やっぱし、って……、大丈夫なのかい? ソユン?」

「まあ、大丈夫なんじゃない? てか、それより、さ? 問題は、どうやってアイツらを倒すか――、なんだけど? タヌキ?」

 と、パク・ソユンは心配するドン・ヨンファに答えつつ、妖狐に聞いた。

 やはり、意地でもキツネと呼ばない。


 チェーンソー、いや、草刈り機による攻撃――

 さらには、係留ロープによる攻撃でさえも、かわされて無効であったのだ。

 それらを振り返りつつ、

『ふ、む……?  そう、だな……? おそらく、ヤツが“変形”に――、“形を変える”ことにこだわっているように、“形”というキーワードに、“何か”ありそうだな』

「“形”――?」

 と、妖狐のいった“形”との単語を、パク・ソユンは口にした。

『ああ……。意外と、重要なものだ』

「はぁ、」

『何が、“よい形”なのか――』

「……」

 と、パク・ソユンは、妖狐が話すのを、無言で耳を傾け続ける。

『その時、ドンピシャに合えば――、妖力が、貴様の異能力とシンクロするだろう』

「……」

『そうすれば、そのユスリ・タカリとやらを倒すことも、可能になるかもしれない――』

 と、妖狐が話すのを、パク・ソユンだけでなく、

「……」

 と、ドン・ヨンファも、ジッ……と聞いていると、

『もちろん、それは、貴様の能力も、だ――。ヨンファよ』 

「――!? ――え? あ、ああ……」

 と、ここで不意打ちのように振られながらも、とっさに頷いた。

 そこまで話すと、

『とりあえず、いま、貴様たちにアドバイスしてやれることは、こんなところだ。これで、切るぞ』

「え? ち、ちょっと待って! タヌッ――、キツネさんっ!」

 と、ドン・ヨンファは待ってもらおうとするも、


 ――プ、ツンッ……


 と、電話は切れてしまった。

「ああ……、切っちゃった……」

 ドン・ヨンファが、まいった顔をし、

「ほんと、何なわけ? あのタヌキ? “形”がどうだとかだけ言って」

 と、パク・ソユンが、すこし呆気に取られた表情で言った。

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