38 お前がッ!! その、ドラえもんみたいなナニカなんだよッ――!!
そのようにして、とりあえず、こちらに妖狐が来れないという話は分かった。
そのうえで、
「じゃあ……? 僕たちだけで、どうにかするしか、ないのかい?」
と、ドン・ヨンファが妖狐に、改めて問う。
『まあ、そういうことに、なろうな――」
「そ、そっかぁ……」
『ただ、せめて……、貴様たちの異能力を、少し補助してやるくらいは、できなくはないが』
「あ、ああ……、ありがとう。それだけでも、助かるよ」
ドン・ヨンファと、妖狐が話していると、
「それで、さ? タヌキ? “あいつら”の、ユスリ・タカリの力っていうは、どんな感じのものか分かる?」
と、パク・ソユンが、間に入って聞いてきた。
なお、相変わらずキツネでなく、タヌキもしくはドラえもん呼ばわりである。
たぶん、意地でも、キツネと呼ぶつもりはないのだろう。
それはさておき、妖狐が答える。
『ふ、む……? そう、だな……? 直接、私が見てないから、何とも言えないが……、まるで、“ドラえもんみたいなナニカ”のような、摩訶不思議な力ではあるな』
「「……」」
聞いて、ふたりはフリーズして、仏頂面のような顔をする。
その心は、
((お前がッ!! その、ドラえもんみたいなナニカなんだよッ――!!))
と、ふたりは、そうつっこみたかった。
そんな、つっこみたい衝動は堪えながらも、こんどは、そのドラえもんみたいなナニカである妖狐は続けて、
『しかし、どこで、手にしたのだろうな? なかなかに、大した能力だ。ちょっとした邪神や、魔人クラスに匹敵しかねないほどの――』
「どこで、手にした――、だって……?」
と、ドン・ヨンファが怪訝な顔をし、
「……」
と、パク・ソユンが無言ながらも、反応した。
『ふむ。ちょっと、はっきりしたことは言えないが……、いま、貴様たちの電話を通じて、現場の“観察”をさせてもらっているが、な……、おそらく、秘書の女と同様に、そのユスリ・タカリとやらは、あくまで、“人間”であってな――』
「にっ、人間――!?」
と、ドン・ヨンファが、衝撃のあまり、
「――だって……?」
と、無意識にも呼吸を挟み、“二段階で驚いて”みせた。
妖狐が、それに答える。
『ああ。私の観察が、間違いなければ、な……、ヤツは人間だ』
「はぁ? あれが、人間なの?」
と、パク・ソユンが、眉をひそめるように言う。
『まあ、言って、貴様たちも――、普通の人間からみたら、結構な異能力を使っているだろうに』
「ま、まあ、それは確かに」
と、妖狐の言葉に、ドン・ヨンファが頷く。
確かにの確かに、毒をものともせずに、ギンピギンピをものともせずに食ってみたり、チェーンソーや草刈り機、はたまた係留ロープを召還して見せたりと――、このパク・ソユンの異能力だけをとってみても、まあまあけっこう人間離れしているだろう。
また、妖狐が、
『さて、続けると、な――? ユスリ・タカリとやらの力は、おそらく、超常的な力で以ってして、空間を、物体を“変形させる力”なのだろ?』
「まあ、言うまでもなく、それ以外にないじゃん? タヌキ」
『フン……。まあ、そう、せっかちに話を急ぐな。続きが、あってな――』
「続き――? かい……?」
と、ドン・ヨンファが聞き、
『ああ……。その、ユスリ・タカリ単体の能力もそうだが……、この島自体が、“その力”を発動させるための、云わば、“場”になっているようでな』
「場――?」
とは、パク・ソユン。
『ふむ。妖力で感じ取れる範囲で“見た”ところ、ユスリ・タカリ単品の能力自体は、それほどは強くはない……。だから、島自体が、何か、その力を増幅して媒介するような場になっていてな――。それで、部屋にいた客連中が、恐らく。いっせいに“変形させられた”のだろう』
「は、ぁ、」
『そして、補足するとな――、このユスリ・タカリの能力というのは、それほど強くはないと言ったように、ある程度、万能というわけではない。回避できたり、遮蔽したりできるうえ……、それに、貴様たち自体が、ある程度の耐性があるように、だ――』
「ああ? それで、僕たちは、何もなかったってことかい?」
『ふむ。そのとおりだ』
妖狐はドン・ヨンファに答えつつ、こんどは、パク・ソユンに向かって、
『ただし、だ――、ソユン』
「は?」
『貴様は、先ほどの――、ヤツの攻撃で、腕にヒビが入りかけているな?』
「はぁ、やっぱし」
「やっぱし、って……、大丈夫なのかい? ソユン?」
「まあ、大丈夫なんじゃない? てか、それより、さ? 問題は、どうやってアイツらを倒すか――、なんだけど? タヌキ?」
と、パク・ソユンは心配するドン・ヨンファに答えつつ、妖狐に聞いた。
やはり、意地でもキツネと呼ばない。
チェーンソー、いや、草刈り機による攻撃――
さらには、係留ロープによる攻撃でさえも、かわされて無効であったのだ。
それらを振り返りつつ、
『ふ、む……? そう、だな……? おそらく、ヤツが“変形”に――、“形を変える”ことにこだわっているように、“形”というキーワードに、“何か”ありそうだな』
「“形”――?」
と、妖狐のいった“形”との単語を、パク・ソユンは口にした。
『ああ……。意外と、重要なものだ』
「はぁ、」
『何が、“よい形”なのか――』
「……」
と、パク・ソユンは、妖狐が話すのを、無言で耳を傾け続ける。
『その時、ドンピシャに合えば――、妖力が、貴様の異能力とシンクロするだろう』
「……」
『そうすれば、そのユスリ・タカリとやらを倒すことも、可能になるかもしれない――』
と、妖狐が話すのを、パク・ソユンだけでなく、
「……」
と、ドン・ヨンファも、ジッ……と聞いていると、
『もちろん、それは、貴様の能力も、だ――。ヨンファよ』
「――!? ――え? あ、ああ……」
と、ここで不意打ちのように振られながらも、とっさに頷いた。
そこまで話すと、
『とりあえず、いま、貴様たちにアドバイスしてやれることは、こんなところだ。これで、切るぞ』
「え? ち、ちょっと待って! タヌッ――、キツネさんっ!」
と、ドン・ヨンファは待ってもらおうとするも、
――プ、ツンッ……
と、電話は切れてしまった。
「ああ……、切っちゃった……」
ドン・ヨンファが、まいった顔をし、
「ほんと、何なわけ? あのタヌキ? “形”がどうだとかだけ言って」
と、パク・ソユンが、すこし呆気に取られた表情で言った。




