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【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第六章 立て直しと再対決

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37 神そうなヤツらはだいたい友達

 なお、電話の向こうの光景はというと、こうである。

 まるで、日本の北陸は加賀百万石の、金沢の誇る兼六園のようでありながら、かつ、雅で絢爛な夜の庭園。

 その中に、某スパイ家族の嫁のような暗殺者風のドレス姿で、長く麗しい黒髪に狐耳の女のなりをした者こそ、妖狐の神楽坂文であった。

 鉄火巻きのようにドラ焼きを手にしながら、他の、“神そうなヤツらはだいたい友だち”の風貌をした者たちと、恐らく花札“賭博と思しきもの”に興じているところだった。


 それはさておき、電話の向こうからこちら側へと場面は戻る。

 妖狐の「殺す」と云うのが聞こえたのか、パク・ソユンがドン・ヨンファの電話のほうへと寄って、

「は? 殺すって、いきなり何なわけ? このタヌキ」

「ちょっ!? ソユン!」

 と、ドン・ヨンファが慌てながらも、

「そ、その、タヌキさん……、ちょっと、僕たち相談があって、連絡したんだけど……、もし、何か、タヌキさんの気に障ることしてたら、謝るけど……」

『ふむ。そもそも、タヌキじゃなくて、キツネなのだがな』

「あ、ごめん、」

「いや、いいじゃん、別に、タヌキで。タヌキもキツネも、大差ないって」

「ちょっと、ソユンは、黙っててくれって」

 と、本題を話そうとするのを邪魔するパク・ソユンを、言って遮る。

「はぁ?」

 パク・ソユンが、また不機嫌な顔で眉を上げる。

 まあ、これも、お前が悪いのだがという話なのだが。


 そんなふたりに、こんどは、妖狐のほうから、

『――で? その、貴様たちが何のようなのだ? こちとら、賭博に負けている途中なのだぞ? 殺すぞ、コラ』

 と、聞いてきた。

 やはり、神そうなヤツらはだいたい友だちな面々とは、賭博に興じているところであった。

 そして、なおかつ、負けているとのこと。

「は? だから、機嫌悪いわけなん? タヌキ? バカじゃん?」

「もう、やめっ、やめなって! ソユン!」

「はぁ、もういいわ。何かムカついたから、切るわよ? ヨンファ」

「ちょッ!? ちょっと待てって! ソユン!」

 と、ドン・ヨンファは、無理やり電話を切ろうとするパク・ソユンを止めつつ、

「ご、ごめんよっ、タヌ――、キツネさん」

『貴様? さっきから、わざとやってないか?』

「い、いやっ! そ、そんなつもりは、ないって……! と、とりあえず、謝るから!」

『ふむ、まったくだ。それで? 要件は、何なのだ?』 

「あ、ああ……、その……、話すと……、変な話、なんだけ、ど――」

『変な話、とな――?』




          (2)




 そうしてのこと――

 パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりだが、ひととおりのことを、妖狐の神楽坂文に説明した。


『――それで、今の、この状況なんだな? カスども』


「ああ、そういうわけだ」

 妖狐の言葉に、ドン・ヨンファが頷いた。

 その傍ら、

「は? 誰がカスなわけ? タヌキ」

 と、パク・ソユンが、カス呼ばわりに苛つく。

 いまは、それをスルーして、

『まあ、状況をどうにかするためには、貴様たちの云うとおり――、その、ユスリ・タカリとやらを倒すより他には、無いだろうな』

「やっぱ、そうなのか……」

 ドン・ヨンファが、まいった様子で言う。

 そのまま、

「う、う~ん……」

 と、少し考えつつ、

「じゃあ? キツネさん、来てくれないかい?」

 と、妖狐に聞いてみた。

 

 すると、

「は? こっちに呼ぶわけ? このタヌキ」

「だって、僕たちだけで、さすがに厳しくないかい? あの、ユスリ・タカリたちと、戦うの?」

「いや、ドラえもんみたいに、さ? 妖具、だっけ――? それ、借りるだけでいいじゃん?」

 と、ドン・ヨンファの提案に、パク・ソユンが露骨に嫌そうな顔する。

 なお、妖狐をちゃっかりドラえもん呼ばわりするなど、ほぼ“ドラえもんみたいなナニカ”扱いで確定であった。

 そうしていると、

『そうだ、な……?』

 と、電話越しの、妖狐が口をひらいた。

「え? 来てくれるのかい?」

「は? いいって、来なくて」

 嫌そうな顔のパク・ソユンの横、ドン・ヨンファが一瞬、期待する。

 そんな、締まりの無い間を置きながら、


『……だが、断る』


「へっ――?」

 と、妖狐から返された使い古されたマンガの文言に、ドン・ヨンファが、間の抜けた様子でポカンとする。

 その横から、

「は? ちょっと? もう、切るわよ。こんなタヌキ」

「ちょっ!? 待って! 待って、って! ソユン!」

 と、イラついて無理くり電話を切ろうとしてくるパク・ソユンに、ドン・ヨンファが慌てると、

『――まあ、行こうにも、行けないというのが、本当のところだ……。締まりの無いカスども』

「へ? 行こうにも、行けない――、って?」

『ふむ。貴様たちも、まあ、知っているとは思うが……、我が妖力、貴様たちの世界のほうでは、リボ払い式に減耗する設定でな』

「ああ。何か、そういうの、あったよね」

 妖狐の言葉に、ドン・ヨンファがピンとくる。


 まあ、そのとおりである。

 この、妖狐の神楽坂文であるが、潜在的にはけっこうチートクラスの妖力を持っている。

 しかし、こちらの世界側では、その妖力というのが大きく減少したり、あるいは、著しく速いスピードで消耗したりするのである。

 まあ、そんな設定の、“ドラえもんみたいなナニカ”のような存在と思っていただければよろしいか、と。

 それはさておき、妖狐は続ける。

『だから、いま、こうして妖力を回復させているのだが……、さっき、賭博で負けたぶんで、さらに減ってしまってな』

「「いや、それ、やめればいいんじゃない」」

 と、ドン・ヨンファとパク・ソユンのふたりが、ここだけは、息が合ってつっこんだ。

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