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【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第六章 立て直しと再対決

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36 タヌキって、キツネじゃないか、


 そうして、ムカデ列車や異形の“筒人間”たちの姿・気配が無くなったのを確認して、

「ま、マズかったな……」

「アンタが、大きな声出すからじゃん」

「いやっ……、ソユンが、い、いい加減、便意をきくからじゃないか。」

 と、ふたりは軽くなすりつけ合いながらも、先の喧嘩の状態からはほこをおさめつつ、

「――それより、だ? ソユン」

「ん、ん?」

 と、話題を変えるドン・ヨンファに、パク・ソユンが注目する。

「このまま……、どうするか?」

 ドン・ヨンファが、改めて、核心かつ喫緊きっきんの質問をした。

「どうする――、って……、まあ? あいつらを、倒すしかないんじゃない?」

「た、倒すって……? ぼ、僕たちの力で、かい?」

「いや、そりゃ、そうでしょ? 他に、何か、あるわけ? そんな、都合よく助太刀してくれるのが?」

「ま、まあ、そうだけど……、も、もう一度電話したら、つながらないかな? ロウンたちに、」

「いや、さっき、つながらなかったのに、もう一回電話するわけ? たまたまつながらなかったんじゃなくて、さ? この島自体が、ある時点から、外部との通信が、一切遮断されてるとかじゃないの?」

「ま、まあ……、たぶん、ソユンの言うとおりなんだけど、」

 ドン・ヨンファが、しどろもどろと答えつつ、パク・ソユンの言葉に納得する。

 まあ、考えるまでもでない。

 おそらく、招待客たちが“変形”された前後くらいから、通信自体が遮断されているのだろう。


 ただ、そうは分かってはいても、わらにもすがりたいというのが人情であろう。

「そ、そうすると……、もう、他を頼るのは、無理なのか……?」

「まあ、無理でしょね」

 パク・ソユンが、淡白な様子で答える。

「う、う……」

 ドン・ヨンファは悲壮な顔をし、呻くように下を向く。

 パク・ソユンのほうは、ユスリ・タカリたちと戦うつもりでいた。

 ただ、いっぽうのドン・ヨンファはというと、「そう簡単に行くだろうか?」という、心配や悲観のほうが強かった。

 まあ、戦うというのも分かるし、恐らく、“そうする”くらいしか選択肢はないだろう。

 今までも、SPY探偵団という、ふざけた活動をしている自分たちであるものの、“それなりの修羅場や敵”を相手にしたことは、無いことも無い。

 しかし、先ほど見ただけでも、ユスリ・タカリたちの力は、その中でも過去最大クラスに、強大かつ厄介なものである。

 そんな、心が折れそうになる事実の中に、半ば思考するのをやめようとした。

 その時、



「う、ん……?」



 と、ドン・ヨンファは、何か、“あること”を思い出した。

 それは、まさに、天啓とでもいうべきか――?

「いや、待てよ……!! “妖狐”さんなら、つながるんじゃないか? ソユン」

 と、ドン・ヨンファは、『妖狐』との単語を口にした。

 すなわち、いちおうはSPY探偵団とは協力関係にあり、以前の事件の調査においても助けを借りたことのある妖狐のことを――

 神楽坂文かぐらざか・ふみのことを、思い出した。

 ただしかし、妖狐との言葉を聞いて、パク・ソユンが顔をしかめて、

「は? あいつに、相談するの? 私、嫌いなんだけど? あのタヌキ」

「タヌキって、キツネじゃないか、」

「あいつだけは、絶対イヤなんだけど? もし、呼んだら、今ここでアンタの首を落としてもいいんだけど?」

「そ、そうは言っても……、ソユンッ!! も、もう頼れるのはっ……、あの、X財団の二人を倒すには、妖狐の力が必要じゃないかっ……!!」

 ドン・ヨンファは、顔をしかめつつキレかかるパク・ソユンを、何とか説得しようとする。

 そうしている間にも、

「と、とりあえず!! このまま、かけてみるよ!!」

 と、ドン・ヨンファはすでに電話を手にしており、くだんの妖狐こと、神楽坂文に電話をかける。

 一縷いちるの、望みをかけて、


 ――プル、ルルル……、プル、ルルル……


 まず、数秒ほど呼び出してみるも、まだ反応はない。

「出ない、か……?」

 表情が険しくなるドン・ヨンファに、

「出るわけないって。ほら、さっさと切りなさいよ」

 と、パク・ソユンが促す。

「も、もう少しっ……!! もう少し、待ってくれよ!! ソユン!!」

 ドン・ヨンファは、そう頼みながら、電話がつながるのを待つ。

 

 ――プル、ルルル……、プル、ルルル……


 鳴るだけの呼び出し音に、

「……」

 と、グッ……と、ドン・ヨンファは無意識に表情が強張りつつも、心拍数が高まる。

 もし、このまま――、あと10秒ほどして出なければ諦めようかと、ドン・ヨンファは思った。

 すると、


 ――プ、ツッ……!!


 と、軽くノイズ混じりにも、奇跡的にも電話はつながった。

 そうして、相手からの声を待つより先に、ドン・ヨンファは話し出していた。

「もっ、もしもし!! たっ、タヌキさん!!」

「アンタも、タヌキって言ってんじゃん」

 思わずタヌキ呼ばわりするドン・ヨンファに、パク・ソユンはつっこむ。

 そうして、妖狐が答えるのを期待した。

 だがしかし、



『――殺してやろうか? クソども』


「こ、殺す――!?」

 と、ドン・ヨンファは、電話越しの直球ストレートの「殺す」の言葉に驚愕した。

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