33 プラナリア君もビックリな再生具合
「そっ、ソユン……?」
ドン・ヨンファが、恐る恐ると声かける。
それが聞こえたのか、そうではないか定かでない中、
「……」
と、パク・ソユンも無言で、ジッ……と、ユスリ・タカリと対峙する。
その間も、相手を観察しながら考える。
おそらく、先ほどの攻撃――これは、ユスリ・タカリの異能力というべきか?
その力というのは、『空間に作用して、対象、もしくは空間ごと変形させるようなナニカの力』の可能性がある。
そう、思い浮かびながら、
「……」
と、パク・ソユンは少し目線を下げて、
――チラ、リ――
と、自分の腕を見てみた。
もし、あのまま回避せずにいたら、腕は“変形”させられていただろう。
それは、グリン――!! と、腕の内側から裏返しされる格好になるのか?
あるいは、寄生獣の漫画のように、グバァッ――!! と、腕先から六等分ぐらいに“裂ける”スタイルで変形するのか? どちらかは、定かでないが……
「ヨンファ、気をつけて――」
パク・ソユンが、振り向かずに言った。
そのドン・ヨンファは、
「……」
と、緊迫して息を呑みながら、チラリ……と振り向きながら、
「たぶん、何か、変形させるような力、かも――」
と、間を置いて言ったパク・ソユンの言葉に、
「あ、ああ……」
と、頷いた。
その間も、ユスリ・タカリであるが、
「……」
と、無言で、相変わらずの肖像画のような目で、こちらをジッ……と見ていたが。
そんな、緊迫感が漂う空間――
そして、対峙するだけの時間――
ただ、このまま両者とも何もせず時間が流れてくれるなど、そうは問屋は時間を卸してはくれないだろう。
その時、ユスリ・タカリが、
「……」
と、少しだけ目を開かせてか? ついに、動き出す。
――ゆらり……
と、少し空間を移動して――
先ほどのように、再び、手を……、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりに向けんとした。
「そ、ソユンッ――!!」
ドン・ヨンファが思わず叫ぶ。
その傍ら、
「……」
と、パク・ソユンは、ジッ……と無言で見ながらも、動く。
距離を、どう、取るべきか――?
そう思考しつつ、パク・ソユンは中距離くらいのポジションを取るや、
――グ、ォォン……!!
と、その手にチェーンソーをッ――!!
否ッ――!! 草刈り機を召還していた!!
そのまま、
「フ、ンぬッ――!!」
と、力を込め、
――ギュ、イィィーン……!!!!
と、まさに達人の居合の斬撃にも勝らんほどの動作で!! 草刈り機を振りぬいたのだ!!
なお、その威力は異能力でマシマシであり!! 通常であればグバァッ――!! と、相手の身体を簡単に切断してしまうだろう!!
そして、その攻撃は見た感じは、クリティカルにヒットしていたはずである。
しかし、
「――?」
と、パク・ソユンは、軽く目を見開いた。
空を切ったように、まったく、無い手ごたえ――
その、“先ほど切った空間”を見る。
するとそこには、
「……」
と、ユスリ・タカリが、変わらずに肖像画のような目をこちらに向ける姿があった。
しかしながら、まるでアニメや映画のようにというべきか……?
何と、あろうことか――!?
その身体というのが、“草刈り機の刃が切り裂いた空間”とともに、パカァッ――と、“分裂”していたのだ!!
そして、続けて、
――ぐぐ、ぐっ……
と、分裂したユスリ・タカリの身体は、さも何事もなかったかのように――、当たり前のように“くっついた”!!
それも、数秒もかからない、プラナリア君もビックリな再生具合で。
すなわち、このユスリ・タカリであるが、その力は、“空間や物体を変形させる能力”だけではない。
自身をも、自在に“変形”することができる能力。
さらに、変形させ、分裂させた身体を難なく再生することで、あらゆる攻撃が効かないという可能性があるのだ!!
「……」
パク・ソユンは無言で、ユスリ・タカリを見つつ、
――シューッ……
と、召喚していた草刈り機を、いったん消滅させて引っこめた。
その傍らでは、
「う、嘘だろっ……!?」
と、ドン・ヨンファが、戦慄まじりに驚愕していた。
そのドン・ヨンファの声を、
「……」
と、パク・ソユンは無視しながらも、ふたたび、ジッ……とユスリ・タカリのほうを見る。
その間も、頭の中に、何か“イメージ”を浮かべようとした。
その、“イメージと連動した武器”が、召還されるわけである。
恐らく、ただ切断しようとするだけの武器では、先ほどのように効かないと予想される。
そうしながら、パク・ソユンの頭の中には、“ある知見”とともに“グロいシーン”が過った。
「……」
と、パク・ソユンは、そのイメージを確かに確認しつつ、
――スッ――
と、虚空に手をかざした。
同時に、
――シュル、シュルッ……!!
と、“何かけっこうな太さをもった細長いモノ”が――
おそらくは、大型の船舶などを係留するロープらしきものが召喚されるとともに、
「――!?」
と、まさか目を見開いたユスリ・タカリの、後ろの空間まで延びていた!!




