表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第四章 調べにかかる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/45

29 なんてことを……


 そうして――

 制止された状態で、また、パク・ソユンが聞く。

「まあ、それは置いといて、さ? ――で? その、“トランス何とか”って、ので? 招待客たちを、あの、“変なの”に変えたってわけ?」

「ええ……。そのとおりで、ございます……」

 秘書の女が、ゆるりと答える。

 そのまま、続けるに、

「我々、人類が……、“設計者たち”によって課せられた制約から、解放されるために、ですね……、その、“形を変えるということ”も……、ときに必要なことだ、と――」

「……」

「……」

 いったん、少しの沈黙を挟んで、

「……私どもの財団は、そう、考えております」

 と、女が結んだ。


 ここで、ドン・ヨンファが間にはいって、

「そ、そうすると……? 招待客たちが、あんな姿に変えられたのは……、その、実験のためだった――、ってことかい?」

「はい。仰るとおりで、ございます。ドン・ヨンファ、様――」

「な、なんてことを……」

 と、単刀直入な質問に対しての簡潔すぎる回答に、思わず絶句した。

 また、そこへ、

「はぁ、それで――? その実験ってのが、トランス何とかってのの、何に役に立つわけ?」

 と、パク・ソユンも質問をした。


 秘書の女が、それに答える。

「お答えしましょうか、パク・ソユン様――」

「はぁ、」

「この、我が財団の、トランスヒューマニズムに関する技術というのは、まだ未熟な段階でございまして……、今回のような“形”になってしまうのは、残念ではありますが……、いたって、仕方のないことでもあります」

「仕方がないって、さ……? まあ、別に、招待客たちと仲良いわけじゃないんだけど、さ? いちおう、今度、ポーカーに行こうって話してた子たちも、いるんだけど?」

 と、パク・ソユンが言う。

 表情を変えないながらも、その言葉には、若干ながら、感情が入っているようなトーンにも聞こえる。


 そんな、パク・ソユンの問いに、

「あ、あ……? “そちら”に関しては……、心配しなくても、大丈夫ですよ。パク・ソユン様」

 と、秘書の女が答える。 

 そこへ、

「し、心配しなくて良いというのは……? 彼らを、元に戻すことが、できるっていうことかい?」

 と、ドン・ヨンファが反応する。

 まあ、「大丈夫だ」と聞けば、そのように反応するのは、当然といえば当然のことだろう。

 しかし、案の定、


「――いえ。それは、できません」


「――!?」

 と、秘書の女の口から出てきたのは“期待を裏切る答え”で、ドン・ヨンファは目を見開いた。

 ただ、その隣のパク・ソユンであるが、その回答をすでに予想していたのか、

「……」

 と、静かに、無言で見ていた。

 また、秘書の女は話す。

「形を、戻すことはできませんが……、変形させる前の、彼らの、脳の状態というか情報――、その人格といったり、意志というべきものでしょうか――? “それらの情報”といいますのは、すべて、“私ども”の中に“トレース”しておりますので……、どうぞ、ご安心くださいませ」

「――!?」

「……」

 と、秘書の女の言葉に、ドン・ヨンファとパク・ソユンが先ほどと同じような反応をする。


「ト、トレースだって……?」

 ドン・ヨンファが、ポカンとした様子で聞く。

 まあ、『トレース』という言葉自体は、様々な分野で用いられており、何となくの言いたいことは想像つくのだが。

 なお、今回のパク・ソユンは、

「……」

 と、変わらずに無言のままであり、「何それ美味しいの?」などと、余計なことは聞かなかったが……

 それはさておき、秘書の女は話を再開する。

「――ですので、招待された皆様は、貴方がたの想像するところの、“殺された”というわけではありませんので……、そこは、ご安心ください」

「いや、でも? その形は、戻らないんだよね?」

 再び、ドン・ヨンファが聞く。

「ええ……。先ほど、申しましたとおり……、そちらに関しては、残念ですが……」

 秘書の女が、答える。


 また、ここで、パク・ソユンが、

「――で? ちなみに、さ? その、招待客たちの形を変えたのって、どんな力で、やったわけ? もしかして、あの、『Ⅹ』とかいうワインで?」

「いえ。ワインでは、ないですね……。あれは、純粋に、私どもからのサービスでございます」

 秘書の女は、まず、そう答える。

 まあ、ワインだとすると、飲まない人もいるだろう。

 ゆえに、飲まなかった人間が、“変形”せずに残っているはずである。

 しかし、ここまで来るに、自分たちや財団の者を除いて、恐らく全ての招待客たちが、あの“筒人間”などに姿を変えてしまっているわけである。

 そうすると、

「じゃあ? どんな力なわけ?」 

 と当然、パク・ソユンが、改めて聞く。


 ただ、この質問に対しては、

「さ、あ……? そちらに関しては、企業秘密――と、させていただきましょうか? そちらのほうが、面白いかもしれませんし、ね……?」

「はぁ、」

 と、秘書の女は答えてくれずに、モヤモヤさせるようなものだった。

 もしかすると、秘書の女はパク・ソユンに対して、やや挑発するような意図も込めているのかもしれない。

 そのパク・ソユンが、

「それで、さ? さっきから、アンタばっか、喋ってるけど? そっちの、ソフトなМ字ハゲっての――? そのМ字ハゲの男は、何か、喋んないわけ?」

 と、こんどは秘書の女のそばの、理事長のユスリ・タカリのほうを指して聞いた。


「ちょっ――!? そ、ソユンッ!?」

 ここで、ドン・ヨンファが、完全にたまげた声をあげた。

「いや、だって、そのまんま言っただけじゃん。……だし、このふたりに、別に、気遣うことなんかないじゃん」

「そ、そうだけどッ……、君は、わざわざ喧嘩を売るようなこと言いすぎだって!!」

「だから、さっきから言ってんじゃん? 喧嘩売るようなこと言ってるけど、喧嘩売ってないかもしれないし、売ってるかもしれないって。これは、一種の、ポラライズなのよ」

「もうそれはいいって!! 頼むからッ!! もう少し真面目にッ、緊張感持ってくれって!!」

 締まりなくふざけるパク・ソユンに、さすがのドン・ヨンファも、そろそろいい加減にしとけと叫ぶ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ