28 おちょくるような喋り方ってだけで、実際おちょくってるかもしれないし、おちょくっていないかもしれない。
(4)
薄明りの中――
パク・ソユンとドン・ヨンファたちは、Ⅹ財団の二人と――、理事のユスリ・タカリと、その秘書と対峙していた。
「――何? やっぱ、アンタたちが、関係しているってこと? 今回のことは?」
と、パク・ソユンが皮切りに、そう聞いた。
「ええ……、そのとおりで、ございます」
秘書の女が、答える。
また、パク・ソユンは続けて、
「で? さっきから出てきた、“変なの”って、幻覚なの? それとも、本当に、人が、“あんな形”に、“変形”しちゃってるわけ?」
「さ、あ? “それ”を答えてしまっては、少し、興が冷めてしまうのでは、ないでしょうか? 貴女が興じてらっしゃるポーカーでも、それが、ブラフなのか? 本物なのか――? カードを表にして、明かさないのと、同様のこと――」
「いや、そもそも、興も何もないから、さ? 早く、言ってよ」
と、焦らすような返答をしてくる秘書の女に、「早く答えろ」と急かす。
「そう、ですか?」
秘書の女が、聞き返す。
その表情こそ変えてはいないものの、少し残念そうなトーンで。
そこへ、
「うん。いいから、早く、早くー」
「ちょッ!? そっ、ソユン……!」
と、どこか煽るように言うパク・ソユンに、ドン・ヨンファが少し慌てる。
そんなふたりの様子を気にすることなく、秘書の女が話す。
「まあ、そう、ですね……。確かに、答えないと、話が進みませんので……、結論から、申し上げましょう」
「うん。だから、早く、早くー」
「だ、からッ! やめなって! ソユン!」
急かすパク・ソユンを、ドン・ヨンファが制止する中、秘書の女は続けて、
「今回の件、出来事ですが……、“私共の力”でもって、招待いたしました皆様を“変形”――、つまり、その“形”を、“変えさせて”いただいたので、ございます」
「――!?」
ドン・ヨンファが、その答えに驚愕する。
「……」
と、いっぽうのパク・ソユンは、ジッ……と、無言であったが。
だが、次に、そのパク・ソユンが口を開いた。
「はぁ? それで? あんな風に、“裏返し”になったり……、何か、ムカデ人間列車みたいなのに、なったりしてたわけ?」
「はい。パク・ソユン様の、仰るとおりでございます」
秘書の女が、答える。
また、そこへ、
「し、しかしっ……! そ、そうすると……、ぼ、僕たちがっ、そう、なっていないのは……、何で、なんだい?」
と、ドン・ヨンファが緊張した様子で、恐る恐る聞いた。
たぶんに、このⅩ財団の二人が、“何をしてくるか分からないゆえ”の、恐怖と混乱というのが、その根底にあるのだろう。
そんなドン・ヨンファの問いに、秘書の女が答える。
「良い質問、ですね……、ドン・ヨンファ様。……そして、その質問こそ、私どもも、今回、特に関心を持たせていただいている事であります」
「へっ――?」
と、ドン・ヨンファが、ポカンとして、
「はぁ、」
と、パク・ソユンが相変わらずの、やる気無さそうな相槌をする中、秘書の女はさらに続けて、
「実は、他の方々と同じく、貴方がたの“形を変えること”も、試みたのですがね……、それが、貴方がただけは、どうも……、うまく“変形”させることが、できなかったんですよね」
「はぁ、たぶん、私たちが異能力者だからだと思うのー、それー。知らないけどー」
「(そッ!? ソユンッ!? そんな、おちょくるような喋り方、マズいって!)」
とここで、確かに、どこかおちょくるような調子で答えるパク・ソユンに、ドン・ヨンファが小声で注意するも、
「は? いいんじゃない? 別に?」
と、パク・ソユンが、不機嫌そうに答える。
すると、
「――何か? 仰い、ました?」
と、秘書の女が、こちらをジッ……と見て、聞いてきた。
「うん、言った言ったー。ちょっと、おちょくる感じの喋り方が、マズいかもー、って」
「(だッ、だからッ! やめなって、ソユン! 敢えて、そんな喧嘩売る言い方、)」
と、ますますドン・ヨンファが慌てていると、
「は、い……? 私どもを、おちょくる――、ですか?」
と、秘書の女が、聞いてきた。
その表情こそ、これといって変わってはないものの、声のトーンが少し、“不快な時のそれ”のように聞こえていたが。
さらに続けて、
「さあ? 分かんない分かんないー。おちょくるような喋り方ってだけで、実際おちょくってるかもしれないし、おちょくっていないかもしれない。ポーカーと同じで、ブラフかもしれないし、バリューかもしれない。そっちのほうが、興があるとか何とかじゃ、なかったけ――?」
と、パク・ソユンが、また少し煽るように答える。
その横では、
「……」
と、ドン・ヨンファが無言で、チーン……と、凍りついたようになっていたが。
そして
「……」
と、秘書の女のほうも、無言になっていた。
こちらのほうは恐らく、不快感に苛立つように、静かな感じで凍りつく様子で。
また、そこへ、
「――で、さ? こっちからも、質問したいんだけど、さ? その、うちら招待客たちを変形させるのって、さ? 何が、目的なわけ? 変形させること自体が目的とかいう、変態的な理由ならアレだけど」
と、こんどは、パク・ソユンのほうから質問をした。
秘書の女が、答える。
「そうです、ね……。お答え、いたしましょうか……。私どもの、財団はですね、パーティのご挨拶でお話しさせていただきましたとおり、来たるシンギュラリティーの時代へ向けて、生命工学を含めたあらゆる技術で以って、身体の制約を超えることを目的とした事業を――、つまり、トランスヒューマニズムに関しての、事業を行っております」
「何か、そんな変なこと喋ってたね。何そのトランスヒューマニズムって? 何か、美味しいのー?」
「何か、美味しいか――? です、か……? ちょっと、少し、ふざけていませんか? パク・ソユン、様?」
と、ついにここで、秘書の女が少し不快感をあらわにした。
「うん。だから、ふざけているかもしれないし、ふざけてないのかもしれないって。ポーカーと同じだって、言ってんじゃん」
「も、もうッ!! ほ、ほんとやめてって!! ソユン!! その、敢えて喧嘩売るの!!」
と、ドン・ヨンファも焦って、パク・ソユンを止めさせようとする。




