25 まるで、アメフトのボールのように――、いや、アメフトのボールはそんな持ち方をしないのだが
ただ、この、【自分たちは幻覚を見ているという可能性】については、
「しかし……、確かに、もしかすると……、【あのワイン】、単独のせいか――? それとも、建物全体に、【何らかの超常的な力】が働いているのか分からないけど……、それらによって、【幻覚を見せられているという可能性】も……、【無い】とは、言えないよな」
「そっ。だから、いま、この【変なの】も、幻覚で見えているだけで……、実際は、普通の人間っていう可能性も、無いとは言えないじゃん?」
と、パク・ソユンとドン・ヨンファの両者ともに、その可能性を否定できなかった。
ここは、意見の一致するところではある。
もし、本当に、これらクリーチャーたちが幻覚であるとする。
そうすると、仮に、チェーンソーを振って殺してしまった場合、【殺人】になってしまうだろう。
クリーチャーを殺したかと思いきや、“霧が晴れるかのように”幻覚が消え、惨たらしく切断された人間の姿が現れる――
そういった、【何かの映画でありそうなシーン】が、想像されてしまう。
「まあ、もし、この変なのが本当にクリーチャーだとしても、そもそも、攻撃が効くかって話なんだけど」
「そ、それは確かに、」
と、パク・ソユンの言葉に、ドン・ヨンファがうなづく。
見た感じは、軟体系で、身体を【変形】させることのできそうなクリーチャーである。
ゆえに、例えば、チェーンソーでぶった切ったかと思えば、簡単に再生されてしまったり……、あるいは、攻撃を回避されると同時に、変形したクリーチャーに“取り込まれてしまう”――、というリスクもあり得る。
そういうわけで、簡単に、攻撃に移らないほうがよいというのは、懸命な判断かもしれない
。
また、パク・ソユンが、
「てか? 逆に、アンタの能力を使ってよ」
「ぼ、僕のかい?」
と、ドン・ヨンファに、『お前の異能力を使え』と促す。
このドン・ヨンファも、パク・ソユンと同じく、いちおう、異能力を使うことはできる。
その異能力はというと、花をモチーフにしたスーツの【フラワーマン】とのコードネームのごとく、花や植物系の能力そのまんまである。
云うなれば、魔界植物といったものには及ばないにしろ、【それらに準ずる特殊な能力を持った植物】を召還することはできる。
「別に、何か、攻撃力や殺傷力なんかなくてもいいから、さ? 少しでも、【アイツら】の動きを遅らせそうなもの、召還してよ」
「そ、そうだな、」
パク・ソユンに言われ、そこはそのとおりだと、ドン・ヨンファはうなづく。
まあ、『少しでも遅らせる』とか言うくらいなら、そもそもカンチョーしたり、ふざけたことを話したりするなよ、という話だが。
それはさておき、
「しっ、仕方ないッ――!!」
と、ドン・ヨンファは言うなり、覚悟を決めて、
――シュ、ババッ……!!
と、【筒人間たち】の前に、【ナニカ】を撒いた。
そして、それらは続いて、
――ニョキッ、ニョキッ……!!
と、すぐに、異形だが植物らしき形を成していく!!
そこに現れたのは、まるで蔓バラで作られた、サメ避けネットを思わせるようなバリケード!!
なおかつ、それらは【三次元的にも複雑なネット】を構成しており、破壊して突破するのも容易ではなさそうである!!
「こっ、これで、いったん少しは防げそうかい?」
「まあ、大丈夫なんじゃない」
と、ドン・ヨンファはパク・ソユンに聞いて、安心しようとする。
そうして、【筒人間】の追撃を防げるかと思いきや、そうは問屋が卸さなかった。
異形のクリーチャーは、
――ドロ、リッ……、チ……
と、少し溶けるかのように、形を変えるなり、
――ヒョ、コッ……!! ヒョ、コッ……!!
と、まるで、自在に形を変えれる尺取虫とでもいうべきか――!?
あるいは、形を自在に変えることで、体内の異物除去などの医工学的な応用が期待される磁性体ロボットのごとく――!!
その【形】を【変形】させ、ゆっくりと……、だが確実に!! 蔓バラのバリケードをすり抜けてきたのだ!!
「ひッ!? ひぃぃッー!!!」
ドン・ヨンファが、その様子を見て叫ぶ!!
「や、やっぱダメだッ!! ソユンッ!!」
「ああ、もうッ!! なら、逃げるわよ!!」
と、パク・ソユンは後ずさりするドン・ヨンファを、
――グ、イッ――!!
と引っ張り、その場から走って逃げだした。
なお、その逃走劇の最中も、
――ボタボタ、ボタッ……!!
と、天井からも、異形のクリーチャーが垂れ落ちるかのように降ってきたり!! あるいは、
――シュ、シュ、シュ、シュ……!!
と、先ほどの【ムカデ人間列車】が現れ、ふたりを追いかけてくる!!
「びッ、びゃぁぁぁッー!!!!!」
絶叫するドン・ヨンファを、
「もう、うるさいわね!!」
「ふぐぅッ――!?」
と、パク・ソユンが苛立ちながらも、
――グワ、シッ――!!
と、抱きかかえる!!
まるで、アメフトのボールのように――、いや、アメフトのボールはそんな持ち方をしないのだが、まあそれっぽくドン・ヨンファを脇に抱えた状態で、パク・ソユンは走る!!
“それ”を、モデル体型のパク・ソユンがやってのけるという、何ともギャップのある絵面であるが……!!
「ひっ、ひぃぃぃッ!! や、ヤバい!! ソユン!!」
「いいからッ!! うるさいっての!!」
たまげてパニくるドン・ヨンファを、パク・ソユンは一喝しつつ、
「あっ、あと!! オシッコ出ちゃいそうなんだけど!!」
「は? いま、この状態で出したら絶対殺すから」




