23 【便意を聞いてくる人間】
まず、女のほうが、
「そ、そ、ソユン、さん……」
と、声かけてきた。
ただ、その声はというと、少し震えているのだろうか――?
あるいは、どこか、“つまるような感じ”がした。
それに対して、
「……」
パク・ソユンは、ジッ……と、無言のまま佇み、
「へ――?」
と、反対に、ドン・ヨンファは間の抜けたような声を出していた。
また続いて、
「いま、から、下で……、パーティがあるんだけ、ど、」
と、男のほうが、微笑しながら言った。
こちらも、どこか震えるような、すこし不自然な感じが漂っていながら――
その言葉を聞いて、
「えっ? パー、ティ……?」
ドン・ヨンファが、キョトンとしながら反復する。
ただし、
「……」
と、パク・ソユンのほうは、相変わらずに無言のままである。
そのパク・ソユンに、
「やっぱり……? そうなの、かな? ソユン?」
ドン・ヨンファが、恐る恐る聞く。
「……」
と、パク・ソユンは、まだ反応しない。
何かを、
――ジッ……
と、見ているようにみえる。
ふたりが、そのようにしていると、
「え、え……、いっ、しょに……、いきま、せんか……?」
と、女のほうが、提案するように聞いてきた。
ただ、やはり、その様子は不自然さがある。
まるで、ヴヴ、ヴ……と、震えるているかのように。
それを見て、
「ん、ん……?」
と、ドン・ヨンファも、感じる違和感が強まってくる。
すこし、警戒をしながら、
「そ、そうです、ねぇ……」
と、ドン・ヨンファは、様子をうかがいながら答えようとした。
その時、
「――ちょっと、待って」
とここで、パク・ソユンがようやく口をひらいた。
また同時に、その手で、ドン・ヨンファを制止していた。
「ん――? そっ、ソユン?」
ドン・ヨンファが、ポカンとしながらも、そのワケを聞こうとした。
矢先のこと、虚ろな男女ふたり組だが、
「……」
「……」
と、無言で、ピタッ――と、静止した。
そう思いきや、次の瞬間には、
――ヴヴ、ヴ、ヴ……!!
と、あからさまにおかしい様子で、彼らの身体が振動し始める。
「――!?」
ドン・ヨンファが驚きに、身体をビクン――!! とさせながら身構える。
いっぽう、
「……」
と、パク・ソユンが動かないものの、ジッ……と、その様子を正視していた。
次の刹那、
――ボ、ゴォッ……!!
と、彼ら、虚ろな男女たちの口が大きく開き!! 【ナニカ】を、
――ゴバァッ――!!
と吐き出した!!
それは、一瞬――、まるで水圧から解放された魚が、その内臓が口から飛び出すのと同様――!!
彼らの、赤い、【身体の中身】が出ていたのだ!!
そして続けざま、大きく出てきた【彼らの内部】から、まるで柔らかい【ゴム手袋の内側と外側をひっくり返す】かのように、
――グリン……!!
と、彼らの身体の!! 【内と外側】が完全に【裏返り】――!! すなわち!! 入れ替わったのである!!
なお、その変化だが、彼らの口とは反対側の――、すなわち、尻の肛門のほうでも起きながら――
この、一連の、衝撃的な【変形】!!
そんなものを見たわけであるから、
「あ、あ”、あ”、あ”、あ”っ……!!」
ドン・ヨンファは、まるで壊れたかのように震えていた。
続けざま、
「うっ、うわぁぁ”ぁ”ーーん!!!!!」
と、錯乱気味に絶叫した。
あまりの衝撃と、目の前で起きたことの【グロさ】。
目・鼻・口といった穴や、尻の穴、はたまた毛穴などいった、ありとあらゆる穴という穴から、
――ドバーッ!!
と、【ナニカ】が噴き出てしまいそうになる。
その時、
――ぷっ、すん……!!
「あっ、うぅん――!?」
と、ドン・ヨンファは突然に!! 【尻に入ってきた感触】に――、【若干の痛気持ちいい感覚】に嬌声のような奇声をあげる!!
「うっ、うぅ~……、ん……?」
ドン・ヨンファが、ゆるり……と振り向き、見てみる。
あろうことか――?
そこには、ドン・ヨンファの短パン越しから、パク・ソユンが、指で【カンチョー】をしている姿があった。
「ちょっ、と……? 何で……? 【カンチョー】なんか、してるんだい? ソユン?」
あまりに唐突かつシュールな出来事に、ドン・ヨンファが固まりそうになりながら聞く。
「ああ……? 何か、アンタ、そのままだと、さ? また、何か、漏らしそうだと思って……。事前に、塞いであげたのよ。何? 意外と気持ち良かったの? 今度から、カンチョープレイしてあげよっか?」
「い、いや……、普通は、出すためにするもんじゃないのか、カンチョーって? て、てか、ちゃんと状況見なよ!! こんなことしてる場合じゃないでしょが!!――うぐッ!?」
と、ドン・ヨンファは声をあげながらも、言い終わりに、違和感に尻をおさえる。
「ん? 何? 【便意】、催してきたの?」
「いやいやいやッ!! 何こんな状況で【便意の確認】なんかしてんの!? 頼むから!! もうちょっと緊張感持ってくれって!!」
ドン・ヨンファは思わず叫ぶ。
頭をかち割って、中身を見てやろうか、と――?
こんな状況で【便意を聞いてくる人間】など、このパク・ソユン以外、この世にいないだろう。
某隕石のハリウッド映画で、超巨大津波から山岳へ逃げるような状況ですら、この人間は、便意を確認をしてくるにちがいない。




